真っ赤な四輪駆動車

中編4分

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使い方

真っ赤な四輪駆動車

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怖くもあり、微笑ましくもあるお話です。

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四駆乗りでソコソコ名の知れた男性Mが、末期のガンで49歳の若さで亡くなった。

Mは日本国内に家を持ち、内縁の妻と暮らしていて、大切にしていた真っ赤な四駆だけが、主を亡くし自宅ガレージに停まっていた。

盛大な葬式はせず、故人のMが大好きだった山の建屋を借りての式だった。

式に参列した人達は、Mの事を慕う四駆乗りの仲間達数十名。

皆、Mの死を傷み、厳かに式は開催されて終了した。

式に参列した一人の男性Oが、Mの妻Tにこう話した。

「Tさん。Mさんの車、どうするんすか？」と…。

Tは「私は乗らないし、廃車もしたくないのよね…。」とOに話した。

Oを含む他の仲間も、Mの愛車の行く末が気になるのか、Mの言葉に耳を傾けた。

するとMの近くに住んでいるWという男が「Mさんが一番可愛がって奴に継がせたらどうですか？」とTに話す。

すると、仲間が一斉にOを見詰めた。

そうなのだ。

Mが一番可愛がってた者とは、他県で自動車整備工場を営んでいるOだった。

Oは、Mがガンに侵された事を知り、生前愛車の調子が悪いだの、車内にロールバーを付けたいだのと、Mは闘病日記に書き込んでいた。

それを読んだOは、Mに頼まれてもいないのに片道で高速4時間もかかるMの自宅まで出向き、車を整備したり、ロールバーを自分の工場で作成して、現地でセットしたりと、Mに尽くしまくっていた。

別にOは、Mに気に入ってもらえるように行動したのではなく、身体が勝手に動いたという感じだった。

その前に、若い頃から車の事で世話になっていた。という事もあるが…。

「そうね。O君が乗ってくれた方が、あの人も喜ぶと思うし成仏してくれるかもね…。」

Tは、Mが好きだったら山を見上げながら呟いた。

「俺なんかでいいんすか？」

Mは戸惑いながら、Tや他の仲間達に尋ねる。

「遺言はないわよね？あの人が可愛がってたのは事実だし…。」

Tは、他の仲間達に向かって話した。

数名は納得していたが、Oと仲が良くなかった者は黙っていた。

「じゃあこうしましょう。あの人の愛車、O君が引き継いでもいいと思う人は手を上げて？多数決で決めるわ」

Tは、皆に意見を求め、手を上げた者が過半数を割った為、Mの愛車はOの愛車となった。

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数ヶ月後、Oは列車を乗り継ぎMの自宅に来ていた。

Mの愛車､真っ赤な四駆を受け取るために来たのだ。

他の仲間にも連絡を入れて､W､S､Cの三人の仲間が集まった。

Oと他の仲間は､Mの仏壇で手を合わせ､愛車を引き取る事を知らせた。

そして仏壇に、愛車の引き取り賃「30万円」入りの封筒を供えた｡

Tは現金の受け取りの拒否をしたが、Oは香典代として受け取るように頼み込んだ｡

そうでもしないと、タダで譲り受けるには、Oの事を良く思っていない奴等に示しがつかない。という事もTに話し納得してもらった｡

真っ赤な四駆でMの自宅周辺の山々を軽く走り、Oは高速に乗り自宅へと帰って行った。

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そうして、Mの愛車の真っ赤な四駆は、Oの愛車となった…。

山で遠出する時や、雨でぬかるんだ道など、遊びに遊びまくった。

乗っている時に､不思議な体験をする事となる。

仕事で行き詰り、誰にも相談出来ない時、愛車の「神金号」でドライブしていた時…。

ー無理せず休め。それがお前の為だー

こんな言葉が、Mの頭の中に響いてきた。

声の主はMだった。

不思議な体験だったが、このような事が神金号を手放す日まで続いた。

物事に行き詰ったり、悩んでいたりする時に神金号に乗ると、軽快なMの言葉が頭の中に響いて心が休まる。

しかし、大切にしていた神金号を手放す日がついに来てしまった。

手放すと言うより、整備工場増築をした事によって、神金号を停めるガレージが無い。というのが正しい。

売ったり廃車には出来ない為、仕事で繋がりのある、なおかつ信頼が出来るディーラーの代車として使われる事になったのだ。

勿論名義はOのまま。

そうして神金号は、ディーラーの代車に生まれ変わった。

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ディーラーで修理をする客の代車として使われている神金号。

修理する車は、勿論四輪駆動限定。

客もこの神金号の存在を知っている者も多く、神金号は大活躍した。

しかし、ディーラー泣かせの面も見えてくる。

それは、女性客だった場合、女性客の車の修理にかなりの時間がかかっているのだ。

ヒーター系の修理だとした場合、通常は一週間もあれば修理も完了しお客様に手渡しできる｡

しかし、女性客の場合、ヒーター系を修理している時に､別の箇所が故障するのだ。

必ずと言っていいほど、修理箇所とは別の箇所が故障する。

ディーラーの主任は不思議に思い、Oの元を訪ね

真相を話すとOは笑いながら答えた｡

「がはっは！Mさんらしい！前の持ち主のMって人は､無類の女好きだったんだ！Mさんの魂が宿ってっからその女性客と長く一緒にいたかったんじゃねぇーの？」

ディーラーからしたら、笑い事では済まされない。

しかし、現実に起こっている事は事実なわけで…。

新たに故障した箇所は、修理した整備士の責任となり、整備士の負担となった｡

それ以降、神金号は女性客の代車として使われる事はなくなった。

その真っ赤な四輪駆動は、今でもディーラーで代車として使われている。

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作者真砂鈴(まさりん)15/09/04

初めて書かせて頂きました。

このお話は、半分ノンフィクションで半分フィクションです。

地名等は、実際に関わっている人の為に伏せております。

感想など頂けたら嬉しいです。

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