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中編4
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夢現【ゆめうつつ】

こんにちは、すっかり涼しくなってしまいましたね。

こんな時に怖い話を読むと変に冷えてお腹を壊しますよ。

これは、私が大学の後輩Sの家へ遊びに行き、酒を飲みながら夜を更かしているときに聞いた話です。

本人の許可はとってあります。

Sは私と同じように大学に通っていたのですが、ひょんなことから休学し、今は地方で一人暮らしをしています。

どうしてそんな流れになったのかはよくわかりません。

割と奔放な女性なので、恋の話や今の生活の話などを飽くことなくいろいろ聞かせてもらったのですが、最近怖い体験をした、という話がありました。

それを今日はお話しようと思います。

文章がめんどくさくなるので、ここからはS主観の文章で話を書かせていただきます。

―――

その日は朝から薄暗く曇っていました。

特に何も予定がなかったので、昼頃に車で買い物に行こうと思ったんです。

で、いい時間になって家を出ようとしたら、いつもは玄関の靴箱の上に置いてある車のキーが床に落ちていたんです。

一瞬ポルターガイスト的なものを想像してヒヤッとしたんですけど

(どうせ昨日帰ってきたときに置き損ねたんだ)と思うことにして拾って家を出ました。

運転している途中でメイクし忘れたことに気付いて、コンビニの化粧室に入ったんです。

手短にするため薄化粧で済ませたので、そんなに時間は経っていなかったはずなんですが、化粧室から出ると店の外まで人が並んでいたので「えっ」と思わず声が漏れました。

「ごめんなさい、すみません」と謝りながらコンビニを出て駐車場に戻ると、隣の車に高校で同級生だった男の子が乗っているのを見つけたので、窓叩いて声かけたんです「Tじゃん、久しぶり!」って。

Tとは高校卒業以来だから3年間会ってなかったんですけど、まさかこんなところで会うとは思ってなかったので話が結構盛り上がってしばらく話し込んでしまいました。

久しぶりだし飲みながらゆっくり話したいねーなんて言ってたらふと視線を感じ、顔を上げると、道路の向かい側の歩道からおかっぱ頭の女の子がじっとこっちを見ていたんです。

コンビニを出る時一瞬視界に入ったのを覚えていたので、話している30分くらいの間ずっとこっちを見ていたのかと思うと少し怖くなりました。

「ねぇ、あの子さっきからずっとこっち見てるよ、なんか怖くない?」とTに言うと

「そうだね、長くいすぎたし場所変えようか」

お互いの車に乗り込んで、キーを回しました。

ガガガガガガ

ガガガガガガガガ

かからないんです、エンジンが。

「調子悪くてエンジンがかからないみたい」

窓を開けて隣の車に乗っているTに言いました。

「それじゃこっちの車に乗りなよ」と彼が答えたので、少しの間車を置きっぱなしにさせてもらえないかとコンビニの人に言うことにしました。

コンビニから戻っててふと道路の方を見ると

おかっぱ頭の子が道のこっち側にいました。

あ、目が合った。

皮膚が粟立ったのを感じます。

「何かやばいから早く行こう」直感が告げるままに彼に伝え、コンビニを後にしました。

さっきまでのワクワクした空気と打って変わり、二人ともしばらく何も話さずに車を走らせていました。

「なぁ」

Tが口を開きました。

「何か勝手に動くんだけど」

何を言っているかわからず彼の方を見ると、ハンドルから手を放していました。

「アクセルも踏んでないんだけど…」

誰にも触れられていないハンドルは勝手に回り車線変更をし右に曲がり…

どうすることもできない私たちを乗せた車はゆっくりと、元のコンビニに戻ってきました。

二人で車を飛び出して私の車に乗り込み、ダメだろうと半ば思いながらキーを回しました。

ブルルルと車体が振動し、エンジンがかかりました。

Tも乗り込み、急いで駐車場を後にしようとしたら、手の甲に何かが当たりました。

キーについているマスコットが見えない何かに引っ張られているかのように、窓ガラスに向かって斜め上にピンと伸びていました。

「やめて!!!」

キーを抜かれると思ってマスコットを掴みました。

小さなぬいぐるみが手の中で動いていました。

するとエンジンが勝手に止まってしまったんです。

車はまだ駐車場の中です。

「いやだいやだいやだ!!」

そう叫びながら頭を抱えていると誰かに呼ばれました。

呼ばれた気がしただけかもしれません。

ハッと反射的に顔を上げると

目の前におかっぱの女の子がいたんです。

―――

「で、ここで目が覚めたんです!!」

「え?は?」

まさかの夢オチだったようです。

「なんだぁ~、ホントにそんなの起きたのかと思ってびっくりしたよぉ~」

なんて心底ホッとしました。

「でもなんか憑りつかれてないか心配だよね」

なんて話が持ち上がり二人で震え上がったところで、その日は寝ることにしました。

で、翌日目を覚まして、彼女はちょっと買い物があるということで私に留守番を頼んで部屋を出て行きました。

床に落ちていたキーを拾って。

数時間経ち今も待っているのですが、彼女はまだ帰ってきません。

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