今回は、麗子が初めて俺のマンションに遊びに来た時の話でもしようか。
「初めましてロビンさん、香織から色々噂は聞いてますw」
香織と麗子は保育園からの幼馴染みで、俺も香織から麗子(霊感 強)の噂は聞いていた。
「どんな噂だよw まあまあ、堅苦しい挨拶は抜きにして、狭いとこだけど入ってくれよ。」
初対面の割りには話も弾み、リビングでピザを食いながら龍を含む四人で暫く談笑していたのだが、途中から麗子の様子が段々とおかしくなって来た。
落ち着きがなく、明らかにソワソワしながらキョロキョロと部屋のあちこちを見回している。
異変に気付いた香織が麗子に訳を聞くと、「ねぇ隣りの部屋に女の子がいるでしょ?」と、変な事を言う。
当時、俺は一人暮らしだったので、勿論そんな女の子などがいる筈もない。麗子のいう隣りの部屋とは寝室の事だった。
寝室に入った麗子は、ベッドの横にあるテレビを一点に見つめている。
そして、ふう!と溜息をついた後、テレビの前で正座をし、改めてそちらをジッと見つめ直した。
時折、ふんふんと頷いたり、へぇそうなんだ…とか小声で話している。
目線を辿るとどうやら麗子はテレビの裏手を視て話している様だ。
そして、誰もいないその空間に向かって麗子はこう言った。
「もう大丈夫、泣かなくていいよ…お姉ちゃんがそこまで一緒に行ったげるから」
「 ……?!」
すると突然、寝室の四隅からペキペキ!と云う大きな異音がして、龍と香織がきゃあ!!と悲鳴を上げた。
「あ、香織ゴメン!私先に帰るね!ロビンさんも龍君もまた遊ぼうね、お邪魔しました…さようなら」
キィ…ガチャン!
「 ……?!」
今日麗子を部屋に呼んだ本当の理由は、引越して来てから頻繁に起こる金縛りや、テレビを見ている時にだけ感じる強烈な気配の正体を教えて貰いたかったのだが…
何かもう、あっさりと解決したっぽかった。
残された俺達三人は、無言でピザを完食した後に解散した。
その夜からは金縛りもあの視線も嘘の様に感じなくなり、平和な生活に戻る事が出来た。
さて、麗子があの時連れて帰ったのは一体何なのか?という事になるが、香織が言うには前の住人がこの部屋の何処かで死産させた赤子だと言っていた。
水子霊は場合によりある一定の年齢まで成長する事があり、麗子がテレビの裏で見つけた女の子は、見た目が4、5歳ぐらいにまで成長していたという。
前の住人にどういう経緯があってこの部屋で子供を生み落としたのかは謎だが、何も知らずにその子と生活を共にしていたのかと思うとゾッとしてしまった。
麗子がその後、然るべき処置をして女の子を供養してあげた事は言うまでも無いだろう。
【了】
作者ロビンⓂ︎
因みに麗子は深津絵里さんによく似ています…ひひ…