私は中学生時代、オカルト大好き少女でした。
幽霊も信じていましたが、自分自身では何も見たことがないので、
「見える」と主張する人の話を聞いたりするのが大好きでした。
こんな痛いやつでしたが、周りに恵まれていたのか、
「オカルト好きのサナちゃん」という扱いは受けましたが、
いじめられることもなく、普通に楽しい学生生活を送っていました。
あるとき、その「私がオカルト好きである」というところから、
友達経由で一人の男の子を紹介されました。
その子はちょっと不思議な雰囲気の子でした。
男の子の友達いわく、
「小さい頃から変な力を持っていた。でも今は無くなっちゃったみたいだ」
男の子は「変な力」自体を否定していましたが、
私は興味をもって彼に近づき、そして好意を持ちました。
色々あって、私たちは付き合うことになりました。
付き合いはじめ、彼の生活を知るようなって、
彼が本当に不思議な力を持っていることがわかりました。
彼の周りに起こっていること、私が実際見聞きしたこと、
実家の状況、小さい頃から彼を知っている人の態度、
いろんな情報が全部「彼に不思議な力がある」ことを指していました。
でも彼は全否定していましたし、私もしつこく聞いたりはしませんでした。
前述のとおりオカルト好きでもあったので、本当は色々詳しく聞きたかったのですが、
そういう力のあるなし関係なく、彼が本当に大好きで、
あんまり聞くとふられてしまいそうだったので、聞けませんでした。
ずっとそうするつもりでした。
そう、あの事件が起きるまでは・・・
nextpage
ある日、私の姉妹同然に仲良くしている従姉妹が行方不明になりました。
バイト帰りでのことでした。状況から見て、事件に巻き込まれた可能性が大でした。
警察、従姉妹の両親である叔父叔母はもちろん、私たち家族も必死で探しました。
ビラも配りました。でもまったく手がかりもつかめませんでした。
面識のあった(私が紹介した)彼氏も心配してくれて、
当てのない捜索に協力してくれました。
婚約者でも配偶者でもない、ただの彼氏なのに、とても頑張ってくれました。
今なら、彼氏がどれほど尽力してくれたか、どれほど感謝するべきかわかるのですが、
当時の私はわかりませんでした。
むしろ、責め立てていました。
「あなたなら、力を使ってわかるのに、なんで探してくれないの?!」と。
彼は真っ青な顔をして帰っていきました。
ふられるかもしれない、と思いましたが、
当時の私は従姉妹が心配すぎて、彼のことはどうでもよくなってしまっており、
それから数週間連絡をとりませんでした。
nextpage
そんなある日、彼から会いたいと連絡がきました。
地元から、少し離れたカラオケボックスで会いました。
彼は会ってもしばらく黙っていましたが、ようやく口を開くと、
separator
「従姉妹さんはもう死んでる」
と言いました。
私の体全体からヘナヘナと力が抜けました。
彼の言葉は、客観的に見てなんの根拠もない言葉です。
でも、私は無条件で信じました。
号泣する私に、彼は、「これ以上できることはない」と言いました。
でも私は、食い下がりました。鼻水と涙を垂れ流しながら彼にすがりつきました。
「従姉妹ちゃんがどこにいるのか教えて」
彼は教えられない、と言いました。「知らない」じゃなく「教えられない」と。
私は懇願しました。土下座もしました。帰ろうとする彼の足にしがみつきました。
店員さんが見に来るくらい騒ぎまくりました。
彼は、根負けし、以下の条件で教えてくれることになりました。
nextpage
・警察には言わない
・誰かが見つけるまでは従姉妹さんをそのままにしておく
・誰にも絶対に自分(彼)から聞いたといわない
・自分たちが会うのはこれきりにする
nextpage
私は全部条件を飲みました。
彼は場所を教えてくれ、私たちは別れました。
その後、警察には言うな、といわれていたのに、私は約束を破りました。
従姉妹をそのままにはしておけず、
でも自分で掘り出すこともできず、
親にもどういって言いかわからず。
そこで、公衆電話で匿名で警察に場所を言い、
見つけてもらえばいいんじゃないか。
と思いました。
本当にアホですよね。
あっさりと、かけたのは私だとばれました。
結果的に従姉妹は見つかりましたが、となると次は犯人です。
もちろん、埋めた場所を知っている人が、犯人です。
警察は、私を猛烈に取り調べました。
ただ、警察も私が犯人だと思っているわけではなさそうでした。
でも、犯人を知っているはずだと考えました。
私は彼の名前を話してしまいました。
nextpage
彼はほぼ犯人扱いでした。未成年者だったので、
テレビなどには名前が出なかったのが唯一の救いですが、
地元ではもちろん知れ渡っていました。
彼にはアリバイがありましたが、弱いアリバイで、ほぼないも同然だったようです。
が、同時に証拠もなく、警察は私から証言を引き出そうと必死でした。
この取調べは、今でも夢に見るくらい、強烈でした。
警察の人には、
「彼に不思議な力で見つけてもらうように頼んだ」
と本当のことを話したのですが、信じてもらえるはずもなく、
「君はだまされているんだよ、彼氏が犯人だから場所を知っていたんだよ」
とくりかえしくりかえし言われ、ぼーっとした頭で、
そうかもしれない、と思ってしまいました。
私がどのように証言したかはご想像のとおりです。
本当に最悪です。
nextpage
しばらくして、
彼氏は、証拠不十分で釈放され、すぐに地元から引っ越しました。
私たち家族も引っ越しました。
一部の人からは、私は共犯者扱いを受けていたからです。
そして、叔父叔母も、彼氏を憎むと同様に、私のことも憎みました。
両親と私との関係も上手くいかなくなりました。
私は名前を変えて、進学もせずにフリーターとして一人暮らしをはじめました。
さらに数年のときが経ち。
真犯人が見つかりました。
別の事件で、逮捕された男が、この事件のことも自首したのです。
その男が、なんで場所がわかったのかわからないといっているらしいです。
なぜ知っているのかというと、
ルポライターと名乗る人が取材にたずねて来て、
それで色々教えてくれました。
(関係ないですが、親にも住所教えてなかったのに、記者ってすごいですね)
ルポライターの人は彼を探していて、
でも見つからなかったので結局記事にはならなかったようです。
nextpage
なにが最悪って、
ルポライターがくるまで、私が彼を疑っていたこと。
彼の力を信じていたはずなのに、
いざ本当に見つかると怖くて発狂しそうになったこと。
そして彼に心から申し訳ないと思うと同時に、
今、さらに彼が怖くてどうしようもないこと。
彼が私の前に現れることは、ないでしょうけど…
作者すけちゃん
http://toro.open2ch.net/test/read.cgi/occult/1438857300/
悲しいお話です。