「よう喜一、でっかくなりやがって」
店にデカイおじさんがいた。外知朗おじさんだ。おじさんは、おやじの悪趣味な友人の1人だ。
「俺の名前はトチロウ、外を歩き沢山の事を知りそして教える者、外知朗だ!」
おじさんの口癖でこじつけだ。
(昔は牛年の次男に、『外』という字をつける風習があった。
理由は、牛はどっしりして中々小屋から出ようとしない様子から、早く養子に行けと言う意味らしい)
おじさんはたくさんの学校を行ったり来たりしている学者?らしい。
行った先で変わった物を見つけたり、変な宗教に首を突っ込んだりする変人だったが、
田舎育ちの喜一には、この人の話は夢の様な外の世界だった。
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その日、『見せ物小屋』の話をしてくれた。
喜一の町にも縁日になればよくやって来た、小さなサーカス&マジックだ。
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たまたま行った村がちょうど縁日だった。
懐かしく思ったトチロウは神社に入り、人ゴミの中マジックショーを見ていた。
ところが、そのマジックショーにはタネが無かった。
どう考えても、物理的にあり得ない事が目の前で起っていたのだ。
空は飛ぶは、小さな箱から5人6人と現れたり。
「周りの田舎者ならとにかく、俺の目は誤魔化せねぇぜ!」と粋がったトチロウは、
自分のスケジュールをずらしてまで、そこの団員達を見張ったそうだ。
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15人程の団員達は、縁日が終わると小さな小屋へと入って行った。
周りにはもう人は居なくなっていた。
着替えでもしているのか?と思い待っていると、出て来たのは団長らしき男1人だった。
??不思議に思い小屋を覗くが誰もいない…その間に団長を見失ってしまった。
「くそぅ。たしか次の公演は、となりの県と言っていたな!!」
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トチロウは汽車の時間を調べ、次の日汽車の中で男を見つける事に成功した。
男の向かいの席に座り眠ったふりをすると、暫くして男も眠りだした…。
しめた!と思い、男の小さな荷物を調べた。
中から小箱が出て来て中を開けると、葉巻きのような筒が何本も入っていた。
一本抜き取ろうかと思った時に、駅に止まる合図の汽笛が鳴った。
まずい!!
男が起きると思い慌てて荷物を戻し、また寝たふりをした。
男が起きると同時に、トチロウも今起きたかの様な芝居をした。
男が立ち、汽車を降りようとする。
トチロウも立とうとしたが、何故か腰が上がらない!声も出なかった。
俗に言う、金縛りにあった。
男は立ち去る瞬間、「次、後を追えば殺すぞ」と言い去った。
トチロウの金縛りは次の駅まで続き、結局何も解らなかったそうだ。
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横で話を聞いていたおやじが、ぽつりと「きつねだなぁ」と言った。
「一本盗ってくりゃ、その管狐、高く買ってやったのによぅ」と笑ったが、
「おりゃぁ金が欲しいんじゃねーんだよ!真実が知りてぇんだ!!」と怒るおじさんに、
おやじは「だから狐だって」と、ラチの開かない会話が続いた。
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どうもです。
トチロウおじさんは、じいちゃんの少年時代の話に良く出て来る人なんです。
すごく面白い話がたくさんあるんですが、スレ違いになるので止めておきます。
宗教壊滅とか…なぞな人で、職業も良く分りません^^;
学者、教授、政治家、旅人、紙芝居屋、何でもやっていたそうです。
作者EXMXZ