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トイレの悪魔様から一人の命を救う

短編2
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トイレの悪魔様から一人の命を救う

これは現実か、仕組まれた罠か。

一体どちらなんだろう。

悩むこと五分。

あらんばかりの知力、気力、体力を駆使し、

解決するにはしたが、

2度とこのような事があってはならないと強く思う。

 

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遡ること、15分前。

とにかく僕は急いでいた。

 

♪ 

光る汗、Yシャツ、出会った腹痛。

誰よりも焦る僕を見て。

久しぶりのピンチを迎えたよ。

あらたな、旅が始まる。

 

 

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乗り換えのホームを走る。

厳密に再現すると走ってはいない。

内股小走りだ。

でかい図体をした男が内股小走りだ。

 

 

いけない、目が霞みはじめた。

今日は晴天だというのに、

お腹では雷様が「だめだこりゃ」と言って、

雲から落ちそうになる。

 

 

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走った。焦った。

すでに限界間近だ。

立ち上げる間もなく襲い来る腹痛と便意。

負けるか俺はホーリーナイト。

もれそうなおけつを、

おさえてなお走った

見つけた! このトイレだ!

♪ 

 

やっと。

やっと僕は、僕を取り返す事ができた。

あの苦痛の時を経て、

歌に助けられながら、

僕は、僕は…

 

 

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カラカラ…

カラカラカラカラ…カラ

 

 

え?

 

 

え?

 

 

ここ、東京すよ?

え?

 

 

カラカラ…

 

 

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紙がない。

そこには紙がない。

床にはかつて、

トイレットペーパーと輝かしく呼ばれていたものの残骸が複数転がっている。

 

 

兵どもがゆめのあと

 

 

五分。

僕は五分なやんで、ウオッシュレットを止め、

乾燥に入った。

しかし、これは違う、こんなんじゃないと、

かぶりを降り地獄の釜の底を歩いた。

 

 

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いつだったか、少し前の記憶が思い出される。

 

 

あれもたしか、乗り換えのホームだった。

ベンチに座った女の子が、

オロロロロロロロロォォォ

とリバースしたことがあった。

 

 

みな、見て見ぬふり。

たまたま風邪をひいて大量のポケットティッシュを持っていた僕は、

「お使いください」

と、ヒューグランド並みにかっこよく渡した経緯がある。

 

 

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その時の残りはないだろうか!?

思い立ち、

バッグを漁る。

 

 

指先に触れる柔らかな紙。

スコッティ…

 

 

涙と安堵のため息が漏れた。

周りからはどう思われたかは想像したくないが、

はぁぁあぁん

と言っていた。

 

 

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問題は、

次にこのトイレの悪魔様に取りつかれてしまう犠牲者をださないこと。

 

 

僕はそっと残りのスコッティを置いた。

うまくいけば、二人は助けられる。

 

 

あとはトイレの神様がくるまで、

犠牲者が出ないことを祈る。

 

 

扉をあけ勢いよく出て行く僕と、

すれ違う影。

 

 

僕は、

いままさに一人の命を救った。

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