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短編2
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金縛り

新居に越してきたばかりの頃

家賃の安さにひかれ入居を決めたその物件は

都心からは少しはなれていた。

上京してからは都内の何処に行くにも便利な場所に住み

通勤地獄とは無縁だった私は

馴れない長距離移動にストレスを感じはじめていた。

今日も終電かぁ…明日って早出だっけ?

吊革にぶら下がり振り子運動する酔っぱらいをかわしつつ

ケータイのスケジュールを開く

キキキッー!!

ブレーキ音が響き車体が大きく傾く

突然のゆれで勢い良く手から放たれたケータイは

見事に酔っぱらいの顔面に直撃していた

マジか…

人身事故のアナウンスを遠くに聞きながら

にこやかに青筋をたてる酔っぱらいの顔と

その手の中にあるケータイ画面の『〇月〇日am6:00出社』の文字に

諦めを感じずにはいられなかった…

「だぁ~疲れたぁ~↓↓↓」

何とか家にたどり着き、そのままベッドへ倒れこんだ

枕元の時計は2時を過ぎている

風呂は朝でイイや…

少しでも睡眠時間を確保するため、そのまま寝る事にした。

どのくらい寝ていたのだろう…目が覚めてしまった

枕元の時計を確認…体が動かない。

これが金縛りというやつか…最近、疲れたまってるしなぁ

ぼんやりする頭に思考だけが次々浮かんでくる

とにかく寝なきゃ、明日が辛い…

つか、手取り15万で労働時間15時間とかウチの会社ブラック過ぎだろ

いやいや…余計なこと考えずに寝よう

…あの酔っぱらいウザかったわぁ~

つか、よりによって人身事故って…

マジ迷惑

首筋がゾクリとした。

体はまだ動かない。

そういえば、金縛りって幽霊が居る時になるんだっけ…?

いやいや、無いっしょ疲れてるだけだって…

目覚めた時より意識ははっきりしていた。

それでも、いくら動こうとしても体は言うことを聞かない。

何なんだよ…

毎日朝から晩まで肉体労働やってんだよ…

しかも13連勤で今月休みまだとってねーし

寝かせてくれよ~

溜まりにたまったストレスでイライラが頂点に達した。

つか、幽霊だっつーんなら

こそこそ隠れてねーで面みせろや!

礼儀がなってねーんだよ!!

そう思った瞬間

ガシッガシガシガシッ!!!

足元から幾つもの腕が延び

私の体を順に掴んでいく

あ、死んだ

何本目かの手が私の首を掴むと同時に

誰かが囁く

『コレデラクニナレルヨ』

そして私は深い眠りに落ちた

何処までも深く

深く…

Concrete
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