新居に越してきたばかりの頃
家賃の安さにひかれ入居を決めたその物件は
都心からは少しはなれていた。
上京してからは都内の何処に行くにも便利な場所に住み
通勤地獄とは無縁だった私は
馴れない長距離移動にストレスを感じはじめていた。
今日も終電かぁ…明日って早出だっけ?
吊革にぶら下がり振り子運動する酔っぱらいをかわしつつ
ケータイのスケジュールを開く
キキキッー!!
ブレーキ音が響き車体が大きく傾く
突然のゆれで勢い良く手から放たれたケータイは
見事に酔っぱらいの顔面に直撃していた
マジか…
人身事故のアナウンスを遠くに聞きながら
にこやかに青筋をたてる酔っぱらいの顔と
その手の中にあるケータイ画面の『〇月〇日am6:00出社』の文字に
諦めを感じずにはいられなかった…
「だぁ~疲れたぁ~↓↓↓」
何とか家にたどり着き、そのままベッドへ倒れこんだ
枕元の時計は2時を過ぎている
風呂は朝でイイや…
少しでも睡眠時間を確保するため、そのまま寝る事にした。
どのくらい寝ていたのだろう…目が覚めてしまった
枕元の時計を確認…体が動かない。
これが金縛りというやつか…最近、疲れたまってるしなぁ
ぼんやりする頭に思考だけが次々浮かんでくる
とにかく寝なきゃ、明日が辛い…
つか、手取り15万で労働時間15時間とかウチの会社ブラック過ぎだろ
いやいや…余計なこと考えずに寝よう
…あの酔っぱらいウザかったわぁ~
つか、よりによって人身事故って…
マジ迷惑
首筋がゾクリとした。
体はまだ動かない。
そういえば、金縛りって幽霊が居る時になるんだっけ…?
いやいや、無いっしょ疲れてるだけだって…
目覚めた時より意識ははっきりしていた。
それでも、いくら動こうとしても体は言うことを聞かない。
何なんだよ…
毎日朝から晩まで肉体労働やってんだよ…
しかも13連勤で今月休みまだとってねーし
寝かせてくれよ~
溜まりにたまったストレスでイライラが頂点に達した。
つか、幽霊だっつーんなら
こそこそ隠れてねーで面みせろや!
礼儀がなってねーんだよ!!
そう思った瞬間
ガシッガシガシガシッ!!!
足元から幾つもの腕が延び
私の体を順に掴んでいく
あ、死んだ
何本目かの手が私の首を掴むと同時に
誰かが囁く
『コレデラクニナレルヨ』
そして私は深い眠りに落ちた
何処までも深く
深く…
作者時計屋
今日は、時計屋と申します。
今回も私の夢のお話です。
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