俺は一時期、近所の酒屋でアルバイトをしていた。これはその時の身の毛もよだつ恐怖体験だ。
みんなは徒党を組み、不気味に黒光りしていて頭のキレる生物をご存知だろうか?
そう、カラスだよな。
奴らの学習能力を絶対に甘く見てはいけない。俺はあのカラスという魔物に人間の尊厳を奪われそうになった事案がある。
思い出しても身の毛もよだつ恐ろしい体験なので、心して聞いてほしい…
それは酒屋のバイトを始めて半年が過ぎた秋口の事だったように思う。
その日、仕事場の裏手の空き地で、数十羽のカラス共が一ヶ所に集まり何やらガーガーと騒いでいた。
糞ウルサいのでゴキジェットと蠅叩きを持って追い払っていた刹那、俺は何かに躓いて転んでしまった。
見ると、カラス達が飛び立った場所に人間の下半身がニョキリと生えていた。丁度腰から上が土に埋まった状態を想像して頂きたい。
なんかムカついたんで、その下半身をボコボコにしていたら、冷たいものが空から降って来た。
「雨かな?」
空を見上げて戦慄した。
先ほど追い払ったカラスどもが仲間を呼び、俺の頭上で渦をかきながらグルグルと旋回しているではないか。
つまり先ほどから降り続いている物体は、大量のカラスの糞だったという事になる。
だが俺はひるまず、この悪魔たちに身体中を糞まみれにされながらも、果敢に石を投げて挑み続けた。
人間がカラスごときに負ける訳にはいかない。
そう。許されないのだ!
刹那!
あろう事か、その白い物体は俺の口の中に飛び込んできた!
ふん
フン
糞 、 糞 、糞
…ぐぼほうう!!!
俺は一瞬で心がバキバキに折れてしまいその場から駆け出した!
「おええええ!!!」
胃の中のモノを吐き出しながら必死で逃げた。
逃げた。
逃げた。
これが俺が生まれて初めて味わう「敗北」だった。
ガーーー♪♪
ガーーー♪♪
ガーーー♪♪
「あ、あいつら笑ってやがる…」
俺は奴等の笑い声を背に受けながら、近くの栗◯温泉へと飛び込んだ。以来、俺はカラスとラモスが生理的に無理になってしまった。
因みに、冒頭に出てきた土に埋まった下半身だけの人間の情報はない。何故かというと、俺はその日で酒屋を辞めて、一年間引き篭もりになってしまったからだ。
話は以上だ!
ふぅ、驚かせてすまなかった。
【了】
作者ロビンⓂ︎
ノーコメントです…ひひ…