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中編3
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枯れづの井戸

温泉街に面したこの土地は、昔から井戸水が豊富で

50mも掘るとわき出してきた。

私の家も例外ではなく、井戸水を利用していて、

くみ出すポンプの音だけが響いていた。

しかし、庭の一角には古い井戸が有り、

私が生まれると井戸に落ちる恐れがあると

父母は井戸の上に金網を張り井戸を使えなくしてしまった。

月日は流れ井戸の事は忘れられて行った。

庭の木や雑草が多く生い茂り、井戸がどこにあるかも

わからない状態になっていった。

10年が過ぎたある日。

1973年「昭和48年」に山形地方が大干ばつになり

私の家も井戸水が枯れ水道に切り替えたが水道も節水状態だった。

水を求めて、農家は次々と井戸を掘った。

当時14才だった私は学校に行くのにも水筒をぶら下げて行った。

農家は水争いが起き、警察が監視を強めていた。

私の家にも、水を求めて近所から人が訪れ、

井戸の水を分けて与えていた。

その井戸も時期に枯れて、水は一滴もくめなくなった。

そんなある日。

私の家に、昔のおじいさんの兄弟と名乗る人が訪れた。

お婆さんは、その人を覚えておらずはじめての事で

戸惑っていた。

お婆さんは、「こんな干ばつの時に来るなんて常識外れだ」と影で怒っていた。

私はおじいさんも好きだったのですぐ慣れて、色々昔の話を

聞いた。

その時に枯れずの井戸の話が出て、家の庭にもその井戸があると

言いだした。

おじいさんの弟は、昔のおじいさんの話を良く話してくれて

この家の事も良く知っていた。

お婆さんが嫁いでくる前に、家の井戸を掘るために

おじいさんと弟が、二人で掘った事を話し始めた。

1年がかりで井戸を掘り、水がわき出した時には、お祭りのような

騒ぎだったことも話した。

しかし、おかしなことにお婆さんにはこの人の記憶が一切無かった。

というか、知らなかった。

おじいさんの弟は、井戸のことをしきりに

持ち出して、あそこをもう一度使えば干ばつなど怖くないと

まで言っていた。

それを聞いていた、父や母は昔の井戸を思い出し

もし水があるのなら助かる。次の日に庭の木や雑草を切り

井戸を見ることにした。

井戸は、石垣が崩れて網が破れもうボロボロの状態だった。

しかし、周りをかたずけ中を覗くと、はるか奥に水の気配がした。

父は石を放り込み確かめた。

5秒ほどして、「ドボン」と言う音がした。「水がある。」そう叫ぶと

どのくらいか分からない真っ暗な井戸に、パイプをたらし

水をくみ上げることにした。

パイプは25m買ってきて次々とつなぎ合わせて、井戸に垂らしたが

一向に、ポンプを回すたびに水は上がってこない状態だった。

とうとう50mに達した。

すると、ポンプから活きよいよく水がくみ上がってきた。

おばあさんや父母それに私は抱き合って喜んだ。

そして、おじいさんの弟の事を忘れていた。

水は、冷たく飲めるほどだった。

そして、私たちはこの井戸の事を教えてくれた

おじいさんの弟を思い出し周りを探した。

しかし家の中や庭その周辺にも、おじいさんの弟が

居なかった。

お婆さんは、昨日までの愚痴を恥じて、謝ろうとしていた。

しかし、どこにもいない。

あのひとは、だれだったのか?

水は近所にも、配られた。井戸は枯れることがなく、こんこんと

水を出してくれた。

家の周りの人たちもこの井戸のおかげで、誰一人水に困る事が無かった。

しかし、あの井戸を教えてくれた、おじいさんの弟は本当にどこに行ってしまったのか?

あれから10年お婆さんも亡くなり、誰もあのおじいさんの弟を探す手がかり

もないまま、時の彼方に忘れ去られて行った。

15年がたち母の戸籍を見る機会ができた。

そこには、おじいさんの弟でなく、母の本当の親が存在していた。

その親がおじいさんの弟だったのだ。

しかし、その弟も母が生まれるとすぐ死んでいた。

それでは、あのおじいさんの弟は幽霊だったのか?

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怖いを付けて下さった皆さん
本当にありがとうごさいます。
余り怖く無いですが、これからも載せます
ので、暇な時読んで下さい。

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