総務をしていた時
色々な会社に行き、名刺を貰い
コレクションのように溜っていった。
新しい会社に入り、古い名刺を見直す機会があった。
名刺は気がつかない内に、600枚を超えていた。
私はその名刺をトランプのように、切って扇のように広げ
ふざけて同僚に見せた。
ユーモアのわかるやつで、「ばば抜きか」と言うと
中の一枚を引いた。
その一枚を読み上げた。「マルマル会社の部長あたり」と言うと
名刺を帰した。
残業になり、私と同僚の2名が残った。
私の右斜め3mほどに、同僚の席があり、席をはさんで低めの棚がある。
その間から、時々同僚の机に向かう頭が見えた。
夜9時になり、私は抱えていた仕事が終わり同僚に声をかけた。
「おい、お前帰れるか?俺は仕事が終わった」と言うか言わないうちに
同僚が「もう少し付き合え、後10分」という返答があった。
私は、机の上の書類を片付けている時、ふと同僚のすぐわきに
誰かの頭がチラチラと同僚の頭と重なって離れた。
私は、目が疲れていると思い、机の中の目薬を取り出し差した。
そしてもう一度,同僚を見た。
今度は同僚の後ろに頭ではなく、大きな影が同僚の後ろで
仕事を見ているかのように、覗き込んでいる。
私は慌てて「おい、お前の後ろに誰かいる。」と大きな声を上げた。
その声に反応するように同僚が振り返ると、同僚の顔と真正面に今度は
どこかで見たような顔が鉢合わせをした。
しかし、同僚は「誰も居ないじゃないか」というと、
「お前疲れてるな。早く帰ろう」と言うと仕事を辞めた。
私は、幻覚が起こるほど疲れていると思い会社を後にした。
翌朝。
机に向い座ろうとしたとき、昨日同僚とふざけて落としたであろう
名刺が机の下に一枚落ちていた。
私が拾い名刺入れにしまおうとしたとき、部長が来て
「お得意様のマルマル会社の部長が自殺した。君急いで葬式に出てほしい」と言われ、
机の上の名刺を何気なく見て、ふるえあがった。
マルマル会社の部長の名刺が置かれていた。
そうすると、昨日同僚を眺めていた、影もこの部長か?
私は恐怖に怯えた。
名刺はいたずらするものじゃない。
作者退会会員