突然だが、読者であるあなた方に質問したい。
あなたたちはふと、後ろになにかいると感じたことはないだろうか。
例えば、怖い話を聞いたあとや、見たあとなんかに、風呂にはいって髪を洗ってるときに、後ろを振り返るとなにかいるんじゃないか、とか、顔を上げると鏡に何か映ってるんじゃないかとか。いつもは意識することはないが、一度意識し始めるとどうにも気になってビクビクしてしまう。
そんなものはいないとわかっていても、「いるんじゃないか」と思ってしまう。
そういう感覚に、あなた達は慣れることはないんじゃないだろうか?
そもそもあなた達の後ろにはなにかいるわけじゃない。勝手に恐ろしい幽霊だのを想像して怯えてるだけなんだからな。実在しないものに対して「慣れる」なんておかしな話だろう?
俺は慣れたけどな。
作者田中康夫
話つくんのって難しいなぁ。
意味がわかると怖い話みたいになってしまったので解説。わかりやすい方だとは思うけど。
実在しないものに慣れることはなれることはない。
なのに話し手はもう慣れたと言っている。
ということは、いつも彼の後ろに「実在」しているってことです。何かが。