私は、これまでに何回も人魂を見ている。
それが海であったり山であったり普通の道であったりして,
近くにはお寺もないのに遭遇している。
この中でも一番怖かったのは
お寺の道を挟み脇が病院と言う配置のところを通りかかった時に
あの大きな尾の長い人魂に出くわした。
通常は病院からお寺に向かうはずの人魂が
逆にお寺から病院に向かって入っていった。
病院側には道に沿い2mほどの塀が張り巡らされていて
その塀を乗り越えるのは用意ではない。
しかし、その人魂は、道をスレスレに横切り、
塀を伝わるように病院の中に入って入った。
人魂の尾は1mほどはあったかもしれない。
それを見た私はその異常さにいやな胸騒ぎを感じた。
私がこの場所に来たのは,
おじが入院しておりそのおじに差し入れを持ってきた
途中だった。
おじは肺がんと診察されて、もう後2ヶ月と余命を宣告されていた。
しかし親戚や姉妹は最後までがんばって病気を克服できることを祈っていた。
私もうすうす感じてはいたが、おじの前に行くと「いつ退院できる」と
聞いていた。
私の母が作る料理をおいしそうに食べ、私と学校のことなど話して、
私は帰宅するのが日常になっていた。
その日も話した後、今日の人魂の話をした。
おじはその話を聴くと、曇った顔になり床に伏せてしまった。
心当たりがあるせいか私が帰りかけると、引き止めて
人魂の話をもう少し詳しく聞きたいと言い出した。
私は見た時のままをおじに伝えた。
おじは「私を迎えに来た使いだ」と言って「もう長くない」とつぶやいた。
私は反論が出来ず、その場でうなだれていた。
私が帰宅についたのは夜の9時を回っていた。
病院のエレベーターに乗り下の玄関に向かう途中エレベーターは、
3階と4階の間で止まり動かなくなった。
しばらくして、動き出したが3階で、
白い布を掛けられた遺体を運ぶ看護士と中で一緒になった。
1階まで落ちる時間がとてつもなく長く感じられた。
2階の病棟に来たとき遺体の布が、
エレベーターのエアコンの風にあおられて少しめくれて見えた。
年は80歳ぐらいの老人の遺体であった。
私は自然と手を合わせて遺体に向かい拝んでいた。
私は付き添っている看護士に何気なく聴いた。
「何時お亡くなりになったのですか?」
看護士は、「ちょうど3時間前です。」と答えてくれた。
私はあの人魂を見た時間帯だと心の中でつぶやいた。
人魂が迎えに来たのだと私は思った。
そして、あの恐ろしい光景が訪れた。
1ヶ月が過ぎ、おじはもう虫の息の状態で
家族や親戚がベットの周りで見守っていた。
私もおじの部屋の片隅で死なないでと祈っていた。
しかしその時が来た。みんなには見えないが
私にはおじのベットの回りに
薄っすらともやのようなものが立ち込めてきた。
すると、薄明かりほどの丸いものがおじの上に降りてきた。
みんなはおじの顔を見ているので気が付かない。
わたしは、あの人魂が迎えに来たと思った。
そして丸いものは、薄い光を出し
おじの頭の真上ではじけて消えた。
まるでシャボン玉のように。
すると、心電図がピーと音を上げて棒状に走った。
みんなは、泣くもの手を握るもの
周りでは私も上を向き涙を浮かべた。
しかし私にとっても、生まれてはじめてみる光景に唖然としていた。
それから救急車に運び込むためにベットを移動し始めた。
白い布を掛けられて
以前見た老人のようにエレベーターに運び込まれた。
私は同行してエレベーターに一緒に乗ったとき、
看護士とおじの死体
私が乗り込むと他の人を寄せ付けないように
エレベーターの重量制限のブザーが鳴った。
重量は900kgまで良いはずなのに
どう考えても私と死んだおじ、看護士、ベット含めても
300kgも行かない??
家族や親戚は後で行くことになり
私と看護士おじの死体を乗せたエレベーターは降り始めた。
そして4階と3階の間に来たときでした。
エレベーターは緊急停止をしました。
看護士は色々ボタンや緊急用マイクを使い
止まったエレベーターを回復させようとしましたが動かない。
完全に3階と4階の間で閉じ込められてしまいました。
私は以前あの老人の死体の時と同じ状態だと思い
次に起こることを考えていた。
次におきること「風が起きて、おじの死体の布をはがす。」
そう思っていると現実に起きました。
エアコンの風が一時的に強くなりおじに掛けてある布に吹きつけました。
おじに掛けてある布がはがれ、おじの顔が見えました。
おじは寝ているかのようです。
看護士が布を掛けなおすと
エレベーターは何もなかったように動き出しました。
私は「この前と同じだ」と思い少しおびえた。
次に起きたのはおじの手がひとりでに
ブラーとベット越しに落ちた時でした。
おじの手から何かが転げ落ちました。
それはゆっくりとスローモーションいや
浮いてるように思えるほどゆっくりと
丸い塊が下に落ちました。
私は何だろうと思い拾おうとしたとたん
その玉のようなものは、
エレベーターの床に吸い込まれるように消えてゆきました。
私はもしかするとおじの魂が抜けて落ちたのだと思いました。
床には何の痕跡も残ってなかった。
あれはもしかして、私だけしか見えなかったのか?
看護士は平然とおじのたれた腕をベットに起こし入れた。
おじの手を入れるとまもなく、エレベーターは何もなかったかのように
下におり始めた。おじの遺体と私はまもなく1階に着いた。
親戚の一部は、もう階段を使い降りている人も居た。
私はおじと一緒に救急車に乗り帰宅した。
もう抜け殻のおじを見る私は、涙も出なかった。
あの尾の長い人魂が、きっとおじを迎えに来たのだと私は思った
そして通夜は滞りなく終わり次の日。
火葬場に向かい煙になり、空に消えてゆくおじの魂に回向した。
あの尾の長い人魂を見るのはあれが最後でした。
尾の長い人魂。
死者を迎えに来る使いなのかもしれません。
作者退会会員