神様のバチは本当にある…。
それを身をもって体験したお話。
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高校1年の初夏、課外授業でとある湖畔のキャンプ場へ行きました。
飯盒炊爨をして、私の班はカレーを作ります。
みんなでレンガを組んでカマドを作り、原始的な火起こしでカマドへ火をくべました。
「シティーボーイにサバイバルスキルなんか必要か?」
男子はそう愚痴っていましが、楽しそうでした。
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男子が火を起こしている間に、女子はカレー作りをしていました。
男子のリクエストで、具は乱切りの野菜ゴロゴロカレーになりました。
食事を終えると、自由時間になります。
私の班は、森の探索にいきました。
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男子2人がドラクエのBGMを口ずさみながら森の中を進み、女子がそのあとをついて行きます。
空気が美味しくて、森の中のせいか初夏なのに少し肌寒く感じました。
30分ほど歩き回った後でしょうか。
先頭を行く男子が立ち止まりました。
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「どうしたの?」
と、班員のカオちゃんが問いかけます。
男子の1人、ヒデ君が振り返って、
「…迷った」
と告げました。
『えぇぇぇぇぇっ!?』
私を含め女子3人が、声を合わせて叫んでしまいました。
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私達は小石で木に、ひっ掻くように矢印を書いて進みました。
これなら迷うまい!ということでしたが、なぜか同じところをグルグル歩かされました。
「…迷ったんじゃなくて、迷わされてるんだわ」
私が言うと、みんな青ざめました。
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「何とかならんの?」
と、もう1人の男子のリョウ君が尋ねてきました。
「いやーぁ、原因が分からんし」
私が答えると、すぐ隣にいたナルちゃんが、
「えー!霊的なものにかけてはスーパーサイヤ人の君がダメなら、うちら全滅じゃん…」
そう言って座り込みました。
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「なんとかしてみるよ」
みんなにそう言って、私は手近にあった木に左手を当てて目を閉じ、
<森の神様、地の神様、私達を迷わせる理由を御示しください。私達に出来ることはありますか?教えてください>
そう念じた後、みんなを振り返って、
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「…よし、もう1回進んでみよ」
そう言って私を先頭に歩き出しました。
しばらく進むと、なぜか少し開けたところに出ました。
そこには小さなお社があり、そのお社を他の班の男子2人が木の枝で突いたり叩いたりしていました。
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「…迷った原因、アレだね」
私が言うと、「あー…、ナルホド」とみんな。
それからすぐに、ヒデ君とリョウ君がその男子2人に「何しとんねーん!」と蹴りをかまし、お社への悪戯を止めました。
「でも、悪いのはあの2人なのに、なんでうちらが迷わされたの?」
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素朴な疑問をナルちゃんが言いました。
「人間の問題だから、同じ人間が何とかしろってことだよ」
私の言葉に「ふぅん…」と、イマイチよく分からなそうにナルちゃん。
お社の方では「お前らのせいで森から出られないかもしれないんだぞ!」と男子が怒っていました。
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そのあと、みんなでお社に手を合わせました。
「…これで帰れるはず」
私が立ち上がると、みんなも立ち上がって歩き出しました。
例の男子2人も歩き出しましたが、2人仲良く躓いて転んで手首を捻挫。
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「あーぁ、ほら、バチが当たった」
カオちゃんが言いました。
「…っ、なんで謝ったのに…っ!?」
男子の1人が苛立ったように言ったので、
「もう悪いことするなよ、っていう神様からの警告だよ。いいじゃん、手首の捻挫だけで済んで。下手したら命落としてるよ」
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私がそう答えると、男子2人は肩を落として押し黙りました。
やがて森を抜け、私達は無事にキャンプ場へと戻ることができました。
あのまま何もしなかったら、きっと戻れなかったことでしょう。
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山には山の、森には森の、海には海の神様がいて、その地を護ってくれています。
私達人間が、興味本位や、ましてや悪戯心で神様のテリトリーを侵したり神様を貶めたりすれはバチが当たるのも当然。
今の人間達には、もっと感謝の気持ちが必要なのかもしれません…。
[おわり]
作者ゼロ
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
初めて森で迷子になり、内心すごく焦った事件でした!
無事にキャンプ場へ戻れた時は、みんな気が抜けたらしく座り込んでしまったのを覚えています。
たぶん、みんなの良い教訓になったんじゃないでしょうかね。