【1章】ゲーム
旅を続ける勇者一行の元に大臣の使いが来た。
「ドラゴンがアリアハンで暴れている。至急街に戻ってくれないか!?」
故郷の緊急事態を聞いて、一行は色めき立ったが、すぐに全員が目を合わせてうなずく。
「もちろんだ、すぐに……
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「おい、その近く歩くなって言ったろ!バグりやすいんだから。」
「わりぃわりぃ!」
「あーーっ、データ飛んじゃったよ!!!」
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【2章】アリ
「ねぇ、お母さん、お腹空いたよ。」
「もう少ししたらお父さんたちがお砂糖を持ってきてくれるよ。でも、まずは女王様にお召し上がりになっていただかないとね。」
「…うん、分かった、僕我慢するよ!」
「お前は本当に偉い子だねぇ」母はにっこりと笑いかける。
とその時、ゴゴゴゴ…と地鳴りが起き、巣が崩れ出した。
「危ない!早くお逃げ!」
「お母さん!お母さん!」
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「ダメよ、そんなことしちゃ!」母が男の子を叱りつける。子どもは地面をスコップで掘り出している。
「でもママ、このアリ見てよ、面白いよ!」
大量のアリが巣から這い出して慌ただしく動き回る様子を見て子どもは笑う。ゲラゲラと笑う。
そして、子どもは足を振り上げる。
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アリたちは真っ暗な何かで覆われるのが分かった。しかし、何で覆われたのか、その後何が起こるのか、知らない。
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【3章】我々と何者か
「ダメよ、それで遊んじゃ!」
母に注意されるが、まだ幼い子どもは聞く耳を持たない。
子どもは笑いながら、黒く、しかしところどころ美しく輝く球体を投げ付けた。それは、たちまち妙な形にひしゃげたかと思うと溶けてなくなってしまった。
母は子どもを叱りつける。
「仕方ないよ、まだたくさんあるじゃないか。」
そう父が言い、子どもを見、そして妻を見て微笑む。
「でもあれは綺麗だったのにな。」
「じゃあ僕の持っているこの青いのをあげる。しかも、これはほとんど手入れしなくてもいいんだ。壊れてしまったのは、どんどん大きくなってしまう種類だったけど、これはほとんど大きくならないし、何より美しい。」
「綺麗ね。」母はうっとりと魅入っている。
「それにしても、まるで生きているみたい。」
「小さすぎて分からないけど、ここにある玉の中のどれかには、何か生物がいたりするのかもしれないね。玉を作る時、作家は最初に息を吹くだろう。その時の息の具合でこうやって美しい模様が出来るんだ。模様だけでなく、その時に何かの偶然で生物が生まれていたら…。」
「そう考えるとロマンティックね。」
そう言うと、妻はその玉を真っ白な部屋の空間に浮かべた。
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少し時は戻る。
子どもが黒い球体を投げ付けたその瞬間、地球の生物は、いや、宇宙と人類が名付けた空間全部が、訳も分からず消失した。
作者退会会員
初投稿です。
津波、交通事故、虐待などで、理不尽に人が死んでしまうこの世界について考えていた時に浮かんだ話です。
もちろん最後のようなことは絶対あって欲しくはありませんが、絶対無いという保証も無いですよね…