学校帰り 圭太がゲン(柴犬)の散歩をしたいと言い出したので俺の家に寄っていった。
竜二も誘ったが犬の散歩とか面倒臭ぇってことで来なかった。
斗馬はまだ講義があったので終わってから合流して3人で行くことに。
斗馬がくるまで約2時間。
ゲンに会いたいと言っていたクセに圭太はずっとオカメ(オカメインコ)と話していた。
(パピコは俺が高1の時亡くなりました)
圭「オカメちゃんこーんにっちはー」
オ「スットコドッコーイ」
圭「ご飯は食べたかなー?」
オ「スットコドッコーイ」
圭「圭太君ですよー覚えてるかなー?」
オ「スットコドッコーイ」
圭「オカメちゃん、スットコドッコイ以外喋れなくなったの?」
俺「喋るよ。会話は成り立たないけど。」
圭「そうか…?」
スットコドッコイは覚えたばかりだからか、最近よく言っている。
俺「オカメー出るかー?」
オ「チリッメンッジャッコ」
言葉を覚えさせているのは主に母ちゃんだ。
どうせならもっと会話になるような言葉にしてほしい。
オカメをカゴから出してやった。
パピコがいたら追いかけ回されるがゲンはそんなことはしない。
オカメもゲンには自ら寄っていくこともある。
圭「飛べないオカメはただのオカメだっ」
オ「スットコドッコーイ」
圭「俺にはそれしか言ってくれないの?」
オ「スットコドッコーイ」
俺「ゲンもかまってやってよ」
圭「ゲンは散歩の時かまう!!今はオカメだ!!」
オ「スットコー」
圭「ドッコイはどうした!!!」
オ「……………」
俺「喋りたくないってさ」
圭「…そうか」
オカメと話してたら斗馬からメールが来た。終わったらしい。
斗馬は俺の家を知らないのでコンビニ(学校からも家からも割と近い)で待ち合わせした。
斗「あ、こんばんはー」
俺「ごめん遅かった?」
斗「大丈夫ですよ。俺の方が待たせてますから。」
俺「じゃ、行くか」
無事合流して散歩開始。
リードは圭太が持っている。立候補だ。
ゲンはリードなしでも離れずに隣を歩くから誰が持ってても大丈夫だろう。
時間は19時 なかなか暗かった。
川沿いの車通りの少ない道をただひたすら歩くコースだ。
街灯は川側にかなりの間隔をあけてポツポツとあるだけだった。
圭「暗い夜道にピカピカ光らないなんてお前の鼻は役に立たんな」
斗「トナカイじゃないんだから仕方ないですよ」
トナカイでも光らないだろう。
いつもキリッとして大人しいゲンが、散歩の時はしっぽをフリフリして可愛いので思わず抱き着きたくなる。
尻の方からそっと手を伸ばした。
サッと振り向かれた。
あぁ…凛々しいお顔だこと。
30分ほど歩いて、もう折り返そうということに。
ゲンはもうじいちゃんだから1時間も歩いたらその日は疲れて爆睡だ。
同じ道をてくてく歩いていた。
斗「街灯の下、人?ですかね?」
圭太と俺は街灯の下を見る。
…なんもいないと思うんだけども。
圭「ゴミ袋じゃね?大きさ的に」
…ゴミ袋も、無いと思うんだけども。
斗「しゃがんでるんじゃないですか?」
圭「変質者だったら怖ぇな」
…なんも、なくね?
疎外感たっぷりだったのでなんとなくゲンを見た。
ゲンもこっちを見てた。あぁ、可愛い。
真横を通るのはちょっと…ということで道路を渡って向こう側の道を歩くことにした。
距離はとったものの、街灯の横を通る事には変わりない。
街灯の少し前まで来た所でゲンがたたっと小走りで俺の横に来た。
あぁ…可愛い。でも珍しい。
圭「なんだよー飼い主がいいのかよー」
俺「世界で一番俺がいいよな?ゲンは」
俺は圭太からリードを渡してもらった。
前の方を歩いてた斗馬はかなりゆっくり歩いてた。
あまりにもゆっくり歩くもんだからすぐ追いついた。
俺「まだなんか見えんの?」
斗「桃さん…手、繋ぎません?」
俺「は?」
斗「今度学食奢ります」
俺「男と手なんか繋ぎたくないわ」
斗「じゃあゲンのリード、一緒に持っても良いですか?」
俺「それもキモいな。手繋ぐよりはマシだけど。」
OKという意味では無かったんだか斗馬はOKと解釈したらしく、男2人でリードを持つ事になった。
圭「お前らキモいぞ」
俺もそう思う。
街灯の真横まで来た。
俺には何も見えないが2人の会話と斗馬の様子からして何かあるんだろう。
俺「まだゴミ袋ある?」
圭「ん?あれ?」
俺「無くなった?」
圭「そんなバカな…あっ!あった!もう1個先の街灯じゃん」
俺「ここだろ?」
圭「直線だから見間違えたんだろ。ほら、あそこにあんじゃん。」
…ごめん。ない。
斗「違う道使って帰りません?」
急な申し出があった。
俺「別にどの道でもいいけど男2人でリード持ったまま人前には出たくないな」
斗「人通り増えたら放します」
よし。なら喜んで道を変えよう。
川から離れ、コンビニやスーパーがある通りへ向かった。
圭「あれ?やっぱさっきの所だ。ゴミ袋。」圭太が振り返った。
斗「見ない方が良いですよ」
圭「俺らが捨てたと思われたら困るもんな」
多分そういう意味じゃないだろう。
角を曲がって、川沿いの道は見えなくなった。
斗馬がやたらと圭太を見ている。
俺「何見てんの?」
斗「圭太君、見すぎなんですよ」
意味わからん。
ちなみに俺と竜二のことは「さん」付けで呼ぶが圭太は「君」だ。理由はわからん。
家まであと20分くらいだ。
道を変えたから少し遠くなった。
圭「なー、ゲン持たせてー」
寂しくなったのか、ゲンのリードを持ちたがりだした。
ゲンも圭太の方をじっと見ていたのでいいかなと思い、圭太にリードを渡すことにした。
バチッ
俺「うわっ」
圭「いでっ」
静電気だ。結構痛かった。
圭「びびったー感電死するかと思ったわ」
もう一度リードを渡す。
バチッ
また静電気だ。痛い。
斗「圭太君には持ってもらいたくないんじゃないですか?」
圭「なんでだよー」
斗「頼りないとか?」
圭「おまえ…」
結局そのまま俺がリードを持っていた。
圭太 ゲン
斗馬 俺
↑こんな感じで歩いていた。
リードは俺で、ゲンが俺の前を歩いている。
斗馬がちょこまか動いて
俺 圭太
ゲン 斗馬
↑この並び順に変わった。
ゲンが少し不満そうだ。
家まであと5分。
斗「桃さん、圭太君の背中思いっきり叩いてみて下さい」
俺「なんで?」
斗「このままなのもアレなんで」
よくわからんが圭太ならいつも叩いている。
お安いご用だった。
バンッ!!!
良い音がなった。
圭太は………転んでいた。
転ぶほど強くは叩いてないし!!
オーバーリアクションすぎだし!!
俺は慌てて圭太を起こした。
圭「いってー。なんなのおまえ。」
俺「いや、斗馬がやれと」
圭「人のせいにするんじゃありません!」
えー。
斗馬の方を見るとイマイチな表情。
叩き方、ダメでしたか?
俺はあなたのせいで怒られましたよ。
家に着くと母ちゃんが帰って来てた。
圭「あ!おばさん久しぶりでーす」
母「あら圭ちゃん 久しぶりー」
斗「お邪魔します」
母「いらっしゃい お母さんよ」
お母さんよってなんだ。
斗「××斗馬です。桃さんと…えっと、同学年になりました。」
その説明、必要だっただろうか。
今夜はシチューだから、とよく分からない理由で2人は足止めされた。
食べて行きなさいと言うわりに、準備は今からだ。
出来るまでオカメと遊ぶことになった。
圭「ただいまー寂しかったかなー?」
オ「ミノサン ミノサン」
圭「誰だよ」
俺「母ちゃん、ミノモ○タ好きなんだよ」
圭「そうかい」
シチューが出来たので皆で食べた。
母ちゃんも一緒。なんでだ。
母「今日は竜二君いないの?バイト?」
(母ちゃんは竜二大好き。主に見た目が。)
圭「あいつゲンの散歩なら行かないって言うんすよー」
母「あら~ご飯だけでも来ればいいのにねぇ」
圭「散歩しないやつは食っちゃダメっすよ」母「そう?」
竜二いなくて母ちゃん寂しそうだよ。
圭「あ」
俺「なした?」
圭「皿にヒビが…」
母「あらっゴメンねぇ大丈夫?」
圭「大丈夫ですよー俺がやったのかもしれないし」
皿には割と大きくヒビが入っていた。
最初からならもっと早く気付いただろう。
21時を過ぎた。
母ちゃんお得意の「泊まっていきなさい」が発動した。
圭太は遠慮せず「はい」
斗馬は遠慮したのか「帰ります」となった。
帰り際に斗馬が
「圭太君、お祓いしてもらった方が良いですよ」
と、イヤなアドバイスを残していった。
オカメを部屋に連れて行き、「ケイタクン」という言葉を覚えさせようとしていた。
ジュースとお菓子をつまみながら。
圭「あ―だめだっ!こいつスットコドッコイしか言わねぇ」
確かにスットコドッコイが多かったが一応他の言葉も喋っていた。
ミノサンとかアナタノハレビオサーとか。
母ちゃんがハリポタにハマってたんだ。
圭太がグラスを持った。
こぼれた。
圭「えっちょっゴメン!あれ?」
グラスの底の部分がきれいに割れていた。
元々上下別物でしたってくらいきれいに。
圭「今日食器運ねぇなー」
その後もちょいちょい家のものを破壊していった。
圭太が水をあげたチビサボテンは鉢ごと落下し真っ二つ。
硝子細工の金魚は胴体と尾ひれが真っ二つ。
ホチキスが針入れようと開いたら真っ二つ。
食べた梅干しの種も口の中で真っ二つ。
梅干しはどうでも良かったな。
これ以上壊されたくないので寝ることにした。
俺ベッド。圭太布団。
夢を見た。ゲンと散歩してる夢。
ゲンが俺の隣を歩いてる。目線が近い。
…ゲン、二足歩行しとる。
なんで夢ってありえない事にびっくりしないんだろう。
夢の中で夢だと気付ける人、凄いと思う。
んで、歩いてたらいきなり場面が変わって、昔住んでた婆ちゃん家の近くの桃の木の前にいた。
何をするでもなく、ただ通り過ぎた。
それだけの夢だった。
目覚まし時計に起こされ、昔貰ったお守りとかいう木の板を出した。
机の引き出しに入れてある。
板だ。何度見ても板だ。
どこら辺がお守りなのか分からない。
圭「んぁ?なにそれ。ピンクの板とかかっわいー」
寝起きの圭太に茶化された。
俺「ピンクじゃねーよ。寝ぼけすぎ。」
圭「は?ピンクじゃん。なにこれ?何に使うの?」
圭太が俺の手から板を取った。
圭「…………あれ?茶色い」
俺「木だからな」
圭「いや、さっきまでピンクだったじゃん」
俺「さっきから茶色だった」
圭「えー?」
納得いかない様子だったが時間がないのでシャワー浴びて飯食って学校に行った。
今日は何も割れなかった。良かった。
校門の前に斗馬がいた。
俺「おはよ。なした?」
斗「待ってました…もうお祓い行ったんですか?」
俺「お祓い?行ってないよ。うちにいたよ。」
斗「そうですか」
斗馬が不思議そうに圭太を見ていた。
斗「圭太君、やっぱお祓い行かなくて良いです」
だそうだ。
言われなくても圭太は行かなかったと思うけど。
斗馬が言うには散歩の時、圭太の左側に黒いモヤモヤがくっついたらしい。
んで今見たら無い、と。
色々割れたって話したら「泊まらなくて良かった」と言われた。
遠慮したわけじゃなかったのか。
作者退会会員
桃矢、竜二、圭太、斗馬、四人の物語。第六弾。