中編7
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T家訪問

大学2年生になった。

この知らせを聞いて友は笑い、母は泣いた。

大学に入ってからは圭太・竜二・斗馬・俺の4人で肝試しに行く事が多かった。

従兄弟の家が寺で、少しだけ霊感のある竜二と

オカルト(霊というより呪い系)が好きな見える人、斗馬がいるんだから

そりゃ行かないバカはいないだろう。

圭太と俺はビビり係だ。大事なポジションだ。

4人共、月曜日を全休にした。

土日はバイトで遊べないかもしれないからわざわざ平日に休みを合わせて作った。

まるでカップルのようだ。

そんな俺達のある日曜から月曜にかけての話。

その日俺達4人は竜二の運転でA市に来ていた。

助手席に圭太、後部座席は俺と斗馬。

斗馬だけ1つ年下なので同学年の俺が隣に座って居心地を良くしてあげようという優しさからこの席順になった。

2度目の2年生も悪くない。

ちなみに母が泣いた理由はコレだ。

車内は和気藹々としていて非常に和やかだった。

3時間ほどして数年前に一家心中があったらしい結構有名なスポットに着いた。

数年しか経っていない割にはボロボロで雰囲気はバッチリだ。

誰が外したのか玄関の扉は既に無く、入るのは簡単だった。

竜二が先に入り、圭太、俺、斗馬と続く。

ビビり2人は真ん中が安心するんだ。

家の中は服や食器、文房具に家具などいろんな物が散乱していて

斗馬「きったないですね~」

そう、汚かった。小さな虫もいらっしゃった。

俺「ここ何かいそう?何か見える?」

斗「1階は大丈夫ですよ」

圭「2階は?」

斗「どうですかね」

…絶対2階なんかある。あるの知っててこういう事言っちゃう。この子は。

圭太と俺がビビりながら探索していると

「いいもん見っけた!!!!」と

いつの間にか奥まで進んでいた竜二が叫んだ。

俺達3人は足元のガラスの破片や木の切れ端に気をつけながら竜二のいる洗面所に向かった。

そこで俺達が見たのは、満面の笑みでここの一家の母の物と思われる古いブラジャーを頭にのせた竜二の姿だった。

竜「Dカップだって!!」

彼には緊張感が不足している。

風呂場や居間、キッチンなど1階を一通り見終えた。

ラップ音もないし誰かが具合悪くなるという事もなかった。

少し残念だと思いながらも安心していた。

竜「2階行くか~」

圭「おー。何か大丈夫そうだな。」

2人はスタスタと2階へ上がって行く。

俺も続こうと階段に足をかけ、なんとなく後ろを振り返った。

斗馬があんな所にいる。

こっちに手振ってる。

斗「俺、車で待ってますね」

そう言ってニコニコ可愛く笑いながら1人で車に戻って行った。

なんて奴だ。最低だ。ガキのくせに。

1階に1人でいるのが怖かった俺は、かなり迷ったが後から笑われたくないので2階へ上がる事にした。

階段、急じゃね?怖ぇんだけど。

2階に着いた。臭い。カビ臭い。

2人がいない。多分部屋の中だろう。

2階に部屋は4つ。どこにいるかは分からない。

相変わらず静かで2人の声も聞こえない。

………?無言なのかな。いや、んなわけない。あの2人なら必ず何か喋るだろ。

こんな一般家庭で防音材なんか使うわけないし。

不安になってどこのドアも開けないまま携帯を取り出し、竜二に電話をかけた。繋がらない。

圭太に電話をかけた。こっちも繋がらない。

怖くなってきたがとりあえず1部屋ずつ中を確認して行こうと思った。

思ったんだ。思ったんだよ?でもね、怖いんだよ。

やっぱり異常に静かでカビ臭くて汚くて一人ぼっちでどうすりゃいいのかわかんなくて固まってた。

ドアを開ける勇気も無けりゃ1人で階段下りて1階通って戻る勇気もない。

自分に彼女出来ない理由がなんとなくわかったね。

どうすりゃいいのかわかんない俺は斗馬に電話した。繋がった。

斗「はい?」

俺「迎えに…来て下さい」

斗「嫌ですよー。俺2階行きたくないです。」

なんちゅーこと言うんだこいつは。

俺「竜二と圭太、どっか行っちゃったんだよね。俺今一人なんだよね。」

斗「どっかの部屋にいないですか?」

俺「一人で開けんの怖いから電話したんだけども」

斗「俺2階にはいけないんでムリですよ。桃さんなら多分大丈夫なんで探してきてください。」

俺なら何が大丈夫なのかさっぱりわからない。

ここで電話を切られた。なんなのこの子は。

深呼吸して、むせた。カビの存在を忘れていた。

とりあえず出来る限り落ち着いて、1つずつドアを開けて中を確認していく事にした。

何かあったらすぐ逃げられるように階段の近くから。

この場合はビビりではなく、慎重だと言って頂きたい。

手汗でぬめりながら 1部屋目のドアを開ける。

中は夫婦の寝室らしく、大きめのベッドが真ん中に1つ。横には鏡台。

クローゼットの中からは雪崩のようにスーツなど衣料がぐちゃぐちゃに落ちていた。

この部屋には誰もいないみたいだ。

部屋を出ようとした時カーテンが揺れて驚いたが、窓という窓は全て割れた家なので風のせいだろう。近くまで行って確認する気にはなれなかった。

次は隣の部屋だ。

カーテンの揺れにビビっていた俺には中々開ける勇気が出なかった。

何かあっても怖いし何もなくても怖い。

俺は再び斗馬に電話した。

斗「見つかりました?」

俺「いや、あと3部屋」

斗「そーですか」

俺「お前冷たいな。少しは手伝えよ。」

斗「じゃあドアノブ触ってこう…ビビッ!!ときた部屋開けてみて下さい。多分そこなんで。」

俺「ビビッ!!て何。俺そういうのわかんないんだけど…」

斗「大丈夫ですよ。桃さん嫌われてますから。」

俺「えっ誰n

………切れた。俺は誰かに嫌われてるらしい。

言われた通りドアノブを触ってみた。

開けるのは怖いが触るだけなら怖くない。

順番に触っていき、一番奥のドアノブを触った時バチッ!!となった。

静電気だ。ビビッ!!ではないがこのことだろうか。

他の2部屋は何も無かったんだから多分このことだろう。

俺はもう一度ドアノブを握った。なんだか手の平がピリピリする。

そしてゆっくりドアノブをひねった。

『あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙―――――っ!!!!!!』

もの凄い勢いでドアが開き、中から圭太と竜二が飛び出してきた。

見つけた!やっと会えた!

でもあまりの迫力と勢いに完全にビビり、俺は猛ダッシュで階段を下り、ぐちゃぐちゃな1階を転ばないように走り抜け、車を目指した。

すぐ後ろを圭太と竜二が必死に追いかけてくる。

前には斗馬が嫌な顔をしながらこっちを見ている。

4人揃った!!よかった!!けど怖い!!

竜「くるま!!くるま!!早く!!!」

圭太の背中を押しながら竜二が叫んでる。

早く車に乗れって事だろうが鍵は竜二がもっている。

パニックになって気付いてない竜二に斗馬が近づき、ポケットから鍵を取り出した。

すぐに鍵を開け、そのまま斗馬が運転席へ。

竜二が後部座席に圭太を押し込みながら俺に叫ぶ。

竜「お前も早く乗れバカ!!」

はい。乗ります。俺は助手席に乗った。

ドアを閉めると車は急発進した。

斗馬の運転は荒く、お世辞にもお上手とは言えない運転だった。

このまま事故って死ぬんじゃなかろうか。

後部座席では圭太が耳を抑えて下を見ている。下を見てるってより外を見ないようにしてる感じだ。

竜二は逆に後ろをガン見。外を気にしていた。

斗「竜さん、もう来てないですよ。スピード落としますね。」

竜「おぉ…いや…ビビったわ。なんだアレ。」

斗「子供でしたね。男の子。」

竜「そこまでは分からんけど声やべぇ。耳に残るわアレ。やべぇ。」

斗「ついて来たそうでしたけどやっぱり桃さんの事嫌いなんですね」

俺「え?」

斗「なんでもないです」

15分くらい立つと圭太も落ち着いたみたいでこのままファミレスに行く事になった。

別にお腹が空いたわけではない。

山盛りポテトをつまみながら2人に部屋の中で何があったのか聞いてみた。

ざっくりまとめるとこうだ。

2階に上がった2人は一番奥の部屋から見ようとドアを開けた。

中に入ると子供部屋のようで、勉強机やプラモデル、漫画などがあった。

2人がプラモデルについてあーでもないこーでもないと話していると急にドアが閉まった。

びっくりして圭太がドアを開けようとしても開かない。ドアノブが動かない。

圭太と竜二が無理矢理開けようとしていると部屋中に『○×△※!!(聞き取れなかったらしい)』と同じ言葉を叫ぶ声が聞こえた。

パニックになりながらもドアをガチャガチャやってるとその声がピタッとやみ、低い声で『ヤメロ』と聞こえた。

その瞬間ドアが開いて目の前に俺がいたらしい。

俺「何それ怖ぇんだけど」

圭「窓から飛び降りるか悩んだわ」

竜「あの低音ボイスちょーこえぇー」

俺「俺は逆になんも聞こえなすぎて怖かったわ」

圭「うらやましい」

ポテトを食べ終え、帰りは竜二の運転で帰った。

安全運転だ。素晴らしい。

連れてきちゃってたらどうしよう?と心配したがその後4人共特に異常はなかったので多分大丈夫。

噂では「たすけて」と聞こえるスポットらしいが

俺達には「たすけて」は聞こえなかった。

竜二達が聞いた聞き取れなかったやつがそうかもしれないけど分からない。

Concrete
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やはり面白い♪

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