続きです…
すると太股の辺りで何かが蠢いています。見ると先程踏み潰した筈の虫です。何度踏みつけても火で焼いても気がつくと李進の腹や胸の辺りにその虫が居るのです。
殺す度に次第に虫は李進の顔へと近づいて行き、今ではもう口の横まで来ています。たまらず悲鳴をあげてしまいました。
すると不思議な事に虫の姿が見えなくなりました。
夫の悲鳴に驚き駆けつけた妻をなだめ、李進は明日目が覚めたら陳翁を探すと言い眠りについたのでした。
次の日の朝、妻が見たのは無惨に腹を喰い破られた李進の遺体でした。
驚き悲しみ妻は助けを求めて外へ出ると、そこには陳翁の姿が…。悲しい目をした陳翁は『まず役人を呼んで遺体を片付けなさい。その時、役人が部屋にある金品を盗んでも見て見ぬ振りをするのです。貴女も何も触らぬ事。一通り事が済んだらワシの所へ来なさい。』とある場所を書いた紙片を渡しました。
妻は言われた通り事を進め終わると陳翁のもとへ向かいました。
陳翁は妻が部屋で何も触らなかった事、役人が何も盗まなかった事を確かめると妻に言いました。
『李進は、金蚕に遭ったのだ。金蚕とは小さなコガネムシの幼虫の様な姿をしていて、これによく仕えれば希望通り他人の財を盗んで報いてくれるが、捨てようとしたり殺そうとするとその主の腹中に入って喰い殺す。甚だ恐ろしいモノだ。
今、金蚕はまだ李進の家に居る。
汚れた器に絹の袋を用意し中に有るだけの金品を入れなさい。
そして「嫁入りですよ」と言い蓋を閉め、どこぞの道に捨てて来なされ。これを嫁金蚕と言いこれしか貴女を助ける道はない。』と告げました。
そして『ワシは応天で道士をしていたが、金蚕の禍を払う事が出来ず開封に流れて来た。しかし此処でも払えなんだ…』と呟いたのでした。
李進の妻は陳翁の言った通りにし、貧しくも天寿を全うしたとの事です。
さて金蚕はその後どこへ行ってしまったのか…
道端の落とし物には御注意あれ…
怖い話投稿:ホラーテラー マァくんさん
作者怖話