最近、ネットでフリーダウンロードのホラーゲームばかりをやっている。
もうかれこれ20~30本はやってるかもしれない。
『ホラーゲーム フリー おすすめ』なんて検索をかけたら山ほど引っかかるから、ネタにも困らない。
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正直、フリーゲームながら非常に精度の高い出来にプレイしながら戦々恐々とし、
プレイが終わってからも寝る時に内容を思い出し、寝付けぬ夜を過ごした事も何度かあった。
しかしそれも最初だけ。
プレイ本数が10を超えるか越えないかになる頃には、
ホラーゲームのそういう雰囲気に慣れてしまい、
「怖い」と思う事はなくなり、ただそういうゲームの空気を楽しむようになった。
そんな中で遭遇したゲームの話。
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どういうルートでそこに行き着いたかは覚えていない。
ただ、シンプルなサイトにゲームのダウンロードリンクと、ただ一言。
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「 どうか貴方の後ろに
奴が立ちませんように 」
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その一文にどことなく惹かれて、ゲームをダウンロードした。
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いつもの流れでゲームをプレイし始める。
『アナタノヘヤ』
タイトルが出て、Play Gemeのボタンをクリックする。
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昨今のフリーホラーゲームは、
いわゆるRPGツクールのモジュールを応用したものになっている。
知らない人にわかりやすく言うと、
昔のスーファミ等のRPGのように、
キャラクターを動かしてフィールドを歩きまわり、
必要アイテムを揃えてクリアをするという流れだ。
その間に戦闘等は一切なく、
ただイベントで選択肢を間違えたり、
本来とあるアイテムを使うべきところで間違ったアイテムを使ったり、
またはフィールドを同じく歩きまわったり追いかけたりしてくるお化けキャラに当たったりすると即死でゲームオーバーになる。
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Play Gameボタンを押した後に出てきた画面もそのような感じ。
どこかの一室のようなところからゲームがスタートするようだ。
主人公かと思われるキャラのドット絵が机の前に座っている。
特に説明みたいなものもなく、開始された画面から動きがない。
最初から自分が動かせるのかと思いキーボードの十字キーを押すが動かない。
もう1~2分ほど経つが何も出来ない。
ゲームがバグってるのか?
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ゲーム画面を閉じようと×ボタンにカーソルを重ねたその時。
キャラの後ろにあるドアが開き、その向こうから赤い服を来たキャラクターが姿を現す。
ゆっくりとした動きで机の前にいるキャラの後ろに近づいていく。
あぁ、まだオープニングイベント中だったのか。
オーソドックスなホラー映画のように、オープニングで1人ないしは2人が襲われるとか殺されるとかした後に始まるパターンもある。
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赤い服を着たキャラがゆっくり近付く。
ゆっくり。
ゆっくりと。
その光景をぼーっと眺めている自分。
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その時、ふと気付いた。
ゲーム画面の部屋。
どこかで見覚えがある。
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オーソドックスなフローリングの6畳間。
壁際にあるPC机。
その横にある本棚。
反対側にベッドがある。
部屋の真ん中には特徴的な柄の楕円形のカーペット。
ベッドの横にある窓の左右に貼られたキャラ物のポスター。
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・・・・・・・・あれ、これって。
俺の部屋なんじゃね?
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その時、窓の向こうで電車が通過した。
そしてゲーム画面の部屋の窓の向こうでも全く同じタイミングで電車が通り過ぎる。
間違いない、この部屋は自分の部屋だ。
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そして今、自分の後ろに何かが近付いてきている。
ゆっくり。
ゆっくりと。
赤い服を着た何かが。
ゲーム画面で1マス先に。
もうあと1歩のところまで。
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振り向けない。
動けない。
マウスの上に乗っている手の指先ひとつも動かせない。
冷や汗が背中を伝う。
ヘッドホン越しにフローリングの軋むような音が聞こえる。
心臓が高鳴りをずっと続けている。
息苦しい。
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赤い服のキャラが真後ろに来て立ち止まった。
そしてまたゆっくりと、ゆっくりと、机の前に居るキャラ、つまり自分に覆いかぶさるような動きをしている。
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視界の端に垂れ下がる長い髪が見え始めた。
そして赤いワンピースのような布が見えてきた。
やがて、ゆっくりと、青白い肌の色と共に、真っ赤に血走った目が見えて、
shake
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・・・・・。
『ニュースをお伝えします。』
『◯月×日未明、都内のアパートの一室で男性が死亡しているのが発見されました。』
『警察の調べによると、男性は頸動脈破裂による出血死で、椅子に座った状態で亡くなっていたとの事です。』
『部屋が荒らされた形跡も無いことから、警察では突然死として当時の状況を調べております。』
『第一発見者のアパートの管理者によると「首から流れた血が服を真っ赤に染めて、まるで赤い服を来て座っているように見えた」との事です。』
作者水龍神 -月-