中編3
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夏の日の事

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これは、私の母校の中学校の話です。

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その日は学期末の大掃除の日で、

私と友人Aは、同じ掃除場所なのをいい事に

先生に隠れて、ずっとお喋りをしていました。

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丁度、一学期の終わりだったので

話題は夏休みへの予定へと移り、

いつの間にか怪談話に変わっていました。

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窓から差し込む日差しが、嫌に強い日でした。

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A「ねえ、この学校の怪談ってあれだよね」

私「あー、あれ?3階のトイレの話」

そう。この学校唯一の怪談の話です。

『特別棟の3階には幽霊が出る』

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吹奏楽部の先輩が、特別棟の3階のトイレの前に佇んでいる白い服の女の子を見た。

どう見ても中学校の人では無かったので

どうしたのかと思い話しかけようとしたら、

忽然と消えてしまった。

確かにそんな話だったとおもいます。

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かなり眉唾な話でしたが、

その女の子を見た先輩がまだ在学中だった事と、

他にこれと言った怪談が学校に無かったので、

それは私達の間でおおいに話題にされました。

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A「そこさ、今から言ってみよーよ!

ほんとに出たらなんか凄いじゃん!?」

私「んー、いいよ!」

ちょっとした、肝試しのつもりでした。

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もう掃除時間も終わりごろのせいか、

そのトイレには、誰もいませんでした。

設計上、

日光がほとんど入り込まないようになっているので

真昼間だというのに

薄暗くて、

どこか肌寒ささえ感じました。

夏の暑い日差しが照りつける中に

一つだけ黒ぐろとしたそれは

近くにいるだけで、なんだか嫌な感じがしました。

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かなり怖かったですが

ここまで来たら行ってやろうと決意しました。

灯りが無い方がそれっぽいだろうと

私とAは電気を付けずに、恐る恐る

トイレの奥の方を覗いてみました。

暫く暗闇に目がなれるのに、時間がかかりました。

丁度、その暗闇になれてきた頃でしょうか。

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shake

『アハハハハハハハハハ』

『アハハハハハハハハハ』

『アハハハハハハハハハ』

幾重にも響く笑い声が聴こえたのです。

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余りの恐怖に

一旦放心状態になった私たちは

暫く動けませんでした。

次の瞬間、

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コツ

コツ

コツ

トイレの奥の方から

まるで革靴で歩く様な音が。

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逃げなければ。

本能的にそう感じた私とAは

まだ固まっている体を無理やり動かし

一目散にその場から離れました。

走って走って、やっと人のいる、明るい場所に出た時の

心から安堵できた気持ちは、今でも忘れる事ができません。

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あの後、何度もAと話し合いました。

あの笑い声は、近くにあった階段を誰かが通った時に発したものではないのか。

あの靴音は、私達の側を誰かが通った足音ではないのか。

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しかし、どう考えてもそれは有り得ないのです。

私達が一目散に逃げている時、

その階段を使いましたが、誰もいる様子がなく

近くと言っても、間に廊下を1本挟んでいるので

声が聴こえるには難しく

誰かが通ったのなら気配や、それに準ずるものの感じがするはずなのです。

けれども、その様なものは、一切ありませんでした。

第一、生徒は普通の上靴で、

先生方は、革靴のようなものは室内で履きません。

それに、これは確かに言えるのですが、

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その笑い声も靴音も

ハッキリと、トイレの中から聴こえたのです。

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卒業してから

元々、中学校のあった場所には、お墓や

病院があった、などと話を聞きましたが

実際の所、どうだったのかは今となっては

分かりません。

そして何故、笑い声や靴音が聴こえたのかも

謎のままです。

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只、今でも

そのトイレには、

不可思議な事が起こるという噂が

後を絶たないそうです。

Concrete
コメント怖い
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ろっこめ様

コメントありがとうございます
もともと隠れ作家希望の者です。
拙い文章で、なかなか読んでみても怖くなく
自作を書ける時間もなかったので
少し自信喪失ぎみだったので
批評をしていただけて凄く助かりました。
ご指導戴いた内容を踏まえて
自作を作れるよう頑張ってみます。

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