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中編4
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中村クン

「中村クンは家が無いんだよ…公園で暮らしてるみたい…」

「中村は靴を履いていないんだ…だから足はいつも真っ黒で凄く臭い」

「中村クンは…」

その頃、僕らの中で流行っていた遊びだったんだ…

【中村】…僕らは彼の噂話に夢中になっていた

【中村】は架空の人物

実際にはいない…

誰がいつから言い始めたかは定かではない

彼の特徴、生い立ち、好きな食べ物…etc

その全てを僕達が造り上げ、そして噂していた

【中村】はいつも汚れた黒いTシャツを着ている、靴は履かない、足が臭い、公園に住んでる、お菓子しか食べない、盗みをする、遊びに来る…

最後の噂…遊びに来るを言ってしまったのは僕だった…

公園で中村にお菓子を一つ持って行って、水場に置く

公園の出口付近まで走り振り返る

そして…

「中村ク~ン、あ~そ~ぼ!!」と大きな声で公園に向かい叫ぶ

「これで【中村】と遊べるんだ!」と鼻高々に僕は言ってみせた

仲間の好奇の眼差しがたまらなかった

一人が呟く

「ねぇ…やってみてよ?」

「え!?」

ギクリとした

まさか自分がやるなんて思ってもみなかった

そして、心の何処かでやってはいけない…と感じつつ僕は仲間の手前やらない分けにはいかないと思い【中村】を呼んだ

来なかった…当たり前の話だこれは作り話だし、【中村】なんていない…と思いつつホッとしていた

その夜…夢を見た…

公園が見える…これは…水場?お菓子が置いてある

ん?誰か来た…

黒いTシャツ…素足……公園…お菓子…あ…

【中村】だ…

小麦色の肌、ボサボサ頭、擦りきれたジーンズ…僕の想像の中の彼そのものだった…

後ろ姿のアングルからゆっくりと振り返る【中村】

夢はそこで終わった

何かが始まった気がした…

次の日の夜、また夢を見た…昨日の続きだ

【中村】の顔が見えた…ニィ…と大きく開いた口から黄色い歯が見え、眉は薄く、鼻は平たく、目は酷く濁っていた

そこで夢は終わった

もうこの夢は見ちゃいけない気がした…

眠るのが怖くなった

寝たら…ヤツが来る…遊びに来る

友達に相談した…しかし冗談で受け流されてしまう…

母さんに話した…夕飯の支度に夢中だ…

一人だと感じた…

そして…また…夜が来る………

深夜…暗い部屋の中で布団をかぶりガクガクと震えていた

噂から全ては始まった…僕は噂の中で彼をイジメ過ぎた…

後悔の念に刈られながらその夜を何とか眠らずに過ごす

次の日…

学校で授業を受ける

大勢の人、教室、昼間、安心感からついウトウトとして眠りに着いてしまった…

夢を…見た…

公園の水場で【中村】が笑いながら何か喋っている……

「今…夜…おま…と……わ……って………る」

…目が覚めた…昼間の教室…大勢人はいるが、恐怖感と妙な孤独感が胸を締め付ける…

今夜…来る…そう思った

部屋でずっと考えていた…どうしたら助かるかを…

一つ妙案が浮かんだ

公園に行って遊ぶのをやめにすれば来ないんじゃないか?

安易な考えだったがすがらずにはいられなかった…

僕は矢の如く家を出て走り出していた

靴を履くのも忘れて…

5分程で公園に着き

僕はなりふり構わず叫び散らした…

「中村ク~ン、ごめんなさい、ごめんなさい、もう二度と噂話なんかしないから…遊びに来ない…で…」

「もう二度と中村クンの事は話さないから…ごめんなさい、ごめんなさい…」

何時間叫び続けただろうか…僕は公園の真ん中で気を失っていた

夢は…

見なかった

目が覚めると太陽の日が眩しく、僕は顔をしかめる…

起き上がり深呼吸…助かった…全てが終わった…そう思った

一晩中叫んでいたせいで喉がカラカラ、土の上で眠っていたから黒のTシャツはドロドロ、靴も履かずに家を出たから足は真っ黒

オマケにジーンズの裾は擦りきれていた…

「…ぷっ」と笑い声を上げつつ水場へ向かう

お菓子が置いてある…あまりの空腹感からそれを手に取る…

後ろで声が聞こえた

「どうだい?」

振り返るとそこに【僕】がいた…

「え!?」

【僕】が続ける「昨日…言った通りにしたから…またな…」そう言い残し【僕】は去っていった…

訳がわからず昨日の事を思い返す…

【中村】が言った事…

「今…夜…おま…と……わ……って………る」

「今夜?…お前…とかわ…って…る」

!!

「今夜お前とかわってやる…」

呆然として…自分の姿をもう一度見る…

薄汚れた黒いTシャツ…擦りきれたジーンズ…ボサボサの頭…真っ黒な素足…

水場の水溜まりに顔をやる…黄色い歯に…濁った瞳……

………

……………あっ

………【中村】だ……

怖い話投稿:ホラーテラー 独りさん  

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