「本当、君たちって雰囲気似てるよねぇ」
「そうそう、髪型とか服装とか、何か姉妹みたいでいいね。仲良いのが伝わってくるよ」
ジョーダンじゃないわよ。
何が姉妹みたい、だ。吐き気がする。
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「ありがとうございます。アリスとは大学の入学式で隣の席になって。私ちょっと人見知りなところがあるから、アリスから友達になろうって言われて、嬉しくて」
「そうなんですよぉ、美麗って美人で頭も良いから、人を寄せ付けない雰囲気があるって言うかぁ」
「あぁ、わかるー!すげぇ美人な子がいるって、今日もテンション上がったもん!」
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毎週金曜日に開かれる飲み会、通称合同コンパ。私と美麗、あと引き立て役の由香を入れて3人。
初めはだいたいいつも、こんな感じの会話から始まる、おきまりのパターン。
「そんな事ないですよ、私なんて全然です」
私は美人な事をひけらかさない女なのよ、とでも言いたいのか。にこっと微笑むこの女は、その場の男たちの視線を一挙に集め、良い気になりやがって。
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「でっ、でもアリスちゃんってクォーターなんだよね??スタイル良いし、目も大きくて羨ましい」
助け舟のつもりだろうか、引き立て役のあんた(由香)に言われたって1ミクロンも嬉しくないのよ。
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「アリスちゃん、クォーターなの?どうりで肌が白いし、日本人離れしたスタイルだよね」
「ええ〜、それ言わないでって言ったじゃぁん。アリス英語とか全然喋れないし、おまけにお酒も弱いし」
「って...大丈夫??可愛いし、お酒も弱いとかこっちにしてみればおいしーけど、ね?」
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何が姉妹みたい、だ。
私は切り札の使い方を知っている。
いくら強いカードを持っていたって、使い所を見誤ったら意味がないのよ。
私はカードを切るタイミングを間違えたりしない。
例え女友達に何を言われようと、1番モテて、ちやほやされてなきゃ意味がないのよ。
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「またアリスちゃんに持ってかれちゃったね」
てへへ、と聞こえてきそうなほどしおらしく首をかしげて笑うこの子の事、私は案外嫌いじゃない。
自分で開いたコンパの男性陣を、一挙に引き連れ二次会という名の乱○パーティーに出掛ける阿婆擦れアリスちゃんに比べたら、だけどね。
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「でも、美麗ちゃんには彼氏がいるもんね。素敵だよね、イケメンで優しそうだし広告代理店に勤めてるんだっけ?」
「えっ?うん...、でも忙しくて中々会えないし、そう良い所ばかりでもないよ」
「いいな、私も2人みたいに可愛ければなぁ」
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「昨日はごめんねぇ!!美麗は彼氏がいる中無理してきてもらったのに、由香もバイトとか調整してくれてたでしょ?」
紅葉の季節も過ぎ、ひらひらと舞い散る落ち葉をすり抜けるようにしてアリスが駆け寄ってきた。
もうお昼だっていうのに、午前の授業を放棄してまで、どこで何をしていたのか。気合いの入った、昨日のままのワンピースを見れば一目瞭然だ。
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「私はあの後彼が迎えに来たし。別に何て事なかったよ?」
本当は面白くないはずなのに。
強がってこちらを見ない美麗。気分がいいわ。
ただ一つだけ気にくわないのは、彼氏は私にぞっこんなのに、私はべつにーみたいなその台詞。
......
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ゼッタイブッコワシテヤル。
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私はいつものように、金曜日の合コンに2人を誘った。ただいつもと違うのは、今日だけは美麗に勝ちを譲ってあげるという事。
何も知らないお二人さんと、私は新宿駅の東口で待ち合わせた。行き交う男たちの視線を交わしながら、さも急いで来たかのように息を弾ませて近寄る。
「...っはぁ、遅刻しちゃったぁ!お詫びの印にコレ、酔ったら大変だからウコンの力ね♪」
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「美麗ちゃん大丈夫?俺がタクシーで送ってあげるよ」
「いえ...大丈夫です。ちょっと頭がクラクラするだけで...」
今にも折れそうな細いウエストをいやらしく抱えながら、2人はタクシーに乗り込んだ。
私は、後ろからバレないようにタクシーで跡をつける。ウコンの力に仕込んだ睡眠薬、よーく効いてくれたのね。
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男は、泥酔した美麗をアパートに連れ込んだ。
と言っても、心配を装って美麗のアパートを教えたのは他でもない私。
ガチャン...
ドアが閉まった途端に、切なげな吐息が漏れ聞こえてくる。鍵もかけずに、お盛んです事。
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私は、iPhoneに打っておいた番号に電話をかける...
「もしもし?美麗の彼氏さんですかっ?実は今...」
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美麗が、酔って男を自宅に連れ込んだ、そう言ったらあいつ血相変えてアパートまでやって来たわ。
蹴破るように扉を開ける背中を目にした数秒後、男の言い争う声と何かを叩きつけるような音。
それから、誰のものともわからない悲鳴が聞こえた気がしたけど...
眠いから早く家に帰ろう。
作者美麗
こんな女性が、昔友人にいたような...
自分よりもてる女、幸せな女が許せない女の話。