バイトが終わって、帰り道での出来事。
駅を出て大通り沿いの交差点を渡ると、家までは細い路地の一本道。
時間は深夜1時。
人なんて全然いなくて、ちょっと怖いなーと思いながら歩いていた。
後ろからタクシーが来る。
車一台通るのがやっとの道幅だったので、車が通りやすいように端に寄った。
追い抜く時に運転手が片手を上げながらこちらに軽く会釈する。
こっちも軽く頭を下げた。
助手席には、グレーのスーツを着た40代前半の男性が乗っていた。
タクシーで帰宅なんて羨ましいな。
こっちは終電ギリギリでバイト終わって家まで歩いて帰るんだよ、ちくしょー。
そう思いながらふと、タクシーのフロントに光る赤い表示に目がいった。
「空車」
タクシーは私を追い抜くと、客を乗せていたら出さないであろう猛スピードで狭い裏路地を走っていった。
怖い話投稿:ホラーテラー きちさん
作者怖話