ある日、街を歩いてたら急に腹具合がおかしくなって、急いで近くにあった公園のトイレに駆け込んだんです。
そうしたら悪臭は酷いわ、大便器では水が流されてないわで酷かったんですが、背に腹は変えられず取り敢えずそこでしちゃったんですよ。
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さあ、尻を拭くかな、って見ると何と紙がないんです。トイレットペーパーが全くない。
畜生、って思って取り敢えず水栓レバーを押したんです。・・・・あれ、水が流れない。
焦りましたよ。元々トイレが凄い状況だったわけですからね。
その時、急に個室の外に人の気配がしたんです。
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あれ、隣にも個室があるのに、って思ったんですが、小便器の方向に行くわけでもなく、確実に個室の外に「何か」が立ってる。わたしのケツは丸出しにされてそっちを向いてたんですが。
シーン、としてて緊張が私の中で高まりました。と突然。ドアが軽くノックされました。
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コンコンコン・・・・・・。
そしてこう問いかけてくるんです。
「出ましたか?」
ギクッとしました。そして何て答えて良いのか頭のなかは真っ白です。
しばらくしてまたコンコンコン・・・・。
「出ましたか?」
妙に嬉しそうな声でそいつは訊いてくるんです。
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もう何て答えていいか分からなかったんですが、
「出たよ、出ましたよ、一体何なんだあんたは。隣にも便器はあるだろ!」
と悪臭のせいで涙目になって大声で答えてました。
そうすると外でカチャカチャ、と金属の音がするんです。私は思わずヒッと息を呑みました。
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そしてまたコンコンコン・・・・とノックされるんです。
「拭きましたか?」
え?っと耳を疑いました。これも何て答えて良いのか分からない。悪臭の中で黙っていると、またコンコンコン・・・・・・。
「拭きましたか?」
妙に嬉しそうな声色でそいつは尋ねてくるんです。
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ちょっと逆ギレ気味になって、
「まだ拭いてないよッ!・・・ねえあんた、悪いんだけど、ここトイレットペーパーが切れてたんだ。その辺に掃除用具入れがあるだろ。頼むからトイレットペーパーを持ってきてくれないかな?」
と「そいつ」に話しかけてみたんです。
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そうすると私の背後、個室のドアの外で何か布ズレの音がするんですよ。あれ、何かな、と思った途端に、突然、
ドンドンドン!
って強烈なノックをされたんです。飛び上がりそうになるくらいビックリしました。
そしてノブがメチャクチャ、ガチャガチャ、って回されるんです。
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ドンドンドン!ガチャガチャガチャ・・・ドンドン!ガチャガチャ・・・・元々古い公園のトイレですから、いつ戸が壊れてもおかしくない、そう言う勢いだったんです。
「うわあぁぁ」
びっくりして私は大声で叫んでました。
ふいにノックもノブの音も止み、急に静寂になりました。
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あれ、「そいつ」はいなくなったかな?私は動悸を抑えながら耳を澄ませました。・・・・・静かにはなったけど、確かに「何か」が個室の外にいる!
「そいつ」の気配がする!
そしたら「そいつ」はドアの外からこう訊いてきたんです。
「楽しみませんか?」
作者cametan