それは3年前の11月1日だったと、はっきり覚えている。
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あの日、私は懐かしい人の夢を見た。小学校から中学校まで同じで、よくその男の子の家に友達と遊びに行ってた仲の良い男友達。そして、高校生の時に小学校から優しい彼が好きだった私から告白して、部活で忙しくて会えないよと断る彼を押しきり、3ヶ月だけ付き合った彼だった。
別れた理由は、結局お互いに忙しく、会ったのはたったの1度だけ。コンビニで待ち合わせをして、Mは自転車を押しながら色々話をして、少しだけ手を繋いで歩いた1度のデートだけだった。その後、お互いに連絡が減っていき、自然消滅した。
仮に名前をMとしておく。
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3年前の11月1日、私は夢を見た。
高校生の姿のMが夢の中で、少し寂しげに…そして、私の知っている優しい笑顔で私の前に立っていた。背を向けて歩きだしながら、こちらに振り向きつつ、手を振っていた。
M?どうしたの?何かあったの?と聞くと、Mは立ち止まって、少し考えた後にお母さんによろしく伝えて。とだけ残して、光のなかに消えていった。
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目を覚ますと朝だった。何か…とっても意味深な夢だったなーと考えていた。その日の昼だった。Mの妹さんから、某SNSを通して連絡が来た。
内容は…今も思い出すと虚無感に苛まれるのだが、「兄が亡くなりました。昨日の朝方~(ここは省略させていただきます)即死でした。これを同級生の方に伝えて頂けませんか?お葬式は10日になります。よろしくお願いします。」
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私はえ?え?えなんでMが?え?なんで?急いで小学校からの親友で、高校が変わっても、大学生になっても連絡を取り合っている、Mとも非常に仲が良かったYに電話を掛けた。
幾度かのコール音の後に、もしもし~?どうした~?とYがでた。
今、Mの妹さんから連絡が来て、Mが亡くなったって聞いたんだけど、Y聞いてる!?と勢いあまって早口で告げた。Yも、え?え?きてないけど…それマジ?え?Mが??ええ!?ちょっと確認してみる…とYは1度電話を切った。
それから一時間しないくらいで、Yからの電話がかかってきた。
「本当だった…M…死んじゃったんだ…プリンは葬式どうするん?」
「正直、悩む。…絶対辛いだろうし…でも、行かなきゃいけないとも思ってる。Y、一緒に行ってくれない?」こうしてYと待ち合わせをして、Mのお葬式に行くこととなった。
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想像以上に同級生が来ていた。
そのうちMのお母さんが出てきて、「最後のお別れをお願いします。」
皆列になり、一人ずつMが眠る棺に挨拶をしていく。私の前にYがいて、YがMの前から離れ、私の番になった。私の記憶の中のMよりも当たり前なのだが、大人になっていた。
懐かしいって気持ちと、まるで寝ているかのようなのに、もうあの頃は~なんて思い出話もできないんだという実感が襲ってきた。
そして、YとMのお母さんの前に行くと、目を真っ赤に腫らし、気力だけで立ってるような様子だった。遊びに幾度に、嫌な顔をせずに、たくさん遊んでって快く迎えてくれてたMのお母さんを思うと、なんて声をかけたら良いのか全くわからなかった。
「あらー!Yとプリンも来てくれたのね!ありがとう!!本当に…ありがとう…」って最初の無理な笑顔のあとに、涙ぐみながらありがとうと言われたことに、私も泣いてしまった。
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その後、滞りなく読経が終わり、Mのご家族と話をできる環境になった。Mのお母さんと妹さんは、一人一人別の部屋に移動してくるお客様の相手をしていた。
私とYがそこに行くと、Mのお母さんが抱き締めながら、
「本当に今日は来てくれてありがとう…Mも絶対喜んでる!小学校の時、いつも遊びに来てくれていた二人が来てくれて本当に嬉しい…」
私とYは、涙を流しながら、Mのお母さんの腕を掴むことしか出来なかった。
そこから少し昔の話をして、Yが他の友達の所に行ったときに、夢の話をした。
「実は…妹さんから連絡を頂く前の晩に、夢の中にMが出てきました。それまで1度もなかったのに…その夢の中で、Mは高校生の姿のままで、いつもの笑顔で手を振ってくれました。私が、どうしたの?何かあったの?と聞くと、少し考えた後に、お母さんによろしく伝えてってお願いされました。そしてMは光の中に消えてく夢を視ました。」
Mのお母さんは、
「そんな時まで人のことばっかり気にして…もう…本当に…プリンのところに行ったのね…実は、夢で見たのはプリンだけじゃなくて、おばさんのとこにも来たらしいの…母をよろしくお願いしますって頭を下げてお願いしに来たって。Mに何かあったのかと朝一番で連絡が来たのよ…」
かける言葉も見つからず、こんなときまで人の心配をするMを想って、Mのお母さんと静かに泣いていた。
妹さんが、大丈夫?とこっちに来た。そして、M のお母さんが、私の話を妹さんにも話した。
「もう…本当に…お兄ったら…」と泣き笑いしながら、私と付き合っていた時の、私が知らないMの話を聞かせてくれました。
「お兄は…プリンちゃんと付き合いだした頃、少し様子が変わって、私とお母さんはピンと来た!彼女でもできたの~?って聞くと、実は、プリンに告白されて悩んでるって教えてくれた。付き合ってみたら良いじゃん!!って、プリンちゃんのことはよく知ってるし、良いじゃない!って。それから3ヶ月経ったくらいに、連絡が来なくなっちゃったってお兄凹んでたよ~お兄から連絡してみたら?って言ったんだ。結局お兄は連絡出来なかったみたいだったけど、その後もプリンちゃんのこと気になってみたいで…他に彼女作らないまま…いっちゃった…」
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私は泣くことしか出来なかった。ごめん、M!ごめんなさい!!っいつのまにか声に出して泣いていた。
Mのお母さんと妹さんが、「短い間でも、Mは嬉しかったんだと思う!だからMは、プリンちゃんが心配で夢で会いに行ったんだよ…でも、光の中に行ったなら、お兄は思い残すことなくいけたってことだから…」と気を使わせてしまった…
いまだにMのことは忘れられないし、忘れたくないと思う。私とMのたった1度きりのデートは、いまだに脳裏に焼き付いている。
若くして亡くなったMが、静かに眠れることを心より願いながら…
終わり
作者プリン
怖い話ではなくて大変申し訳ありませんm(_ _)m
読んでくださった方ありがとうございましたm(_ _)m
若くしてよく知る人が亡くなるというのは、本当に辛いものですね…3年たった今でも悲しくなります。
生きている人間ができることは、故人を想い、忘れないことだけ。
幽霊でもまた会えるなんて、夢のまた夢の話なのかもしれませんね…
こんな個人的な思い出話を最後まで読んでくださった方に最大の感謝を。ありがとうございましたm(_ _)m