私の霊感が覚醒したきっかけは、ズバリ父方の『祖父の死』でした。
私がまだ、小学校1年生から2年生へ上がるか上がらないかくらいの時です。
私は、おじいちゃん子でした。
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母が言うには、私が言葉を話すようになった頃、まだ舌が上手く回らず祖父を「おじいちゃん」と呼べずに「じった!」と呼んでいたそうです。
雨が降ろうと風が吹こうと、とにかくおじいちゃんに乳母車に乗せてもらって外に出たがる私を、祖父は自分の身体の具合が悪い時でも、乳母車に私を乗せて近所へ出かけたとか…。
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そんな祖父は胃を悪くしていて、私が幼稚園生になる頃には胃癌を患い病院に入院していました。
何度か手術をしましたが、転移を繰り返し、私が小学生になる頃には余命宣告されていたそうです。
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病院には時々、父に連れられて弟達と一緒にお見舞いに行ってましたが、癌のせいで日に日に痩せ衰えていく祖父の姿が、子供心に怖くて、悲しくて、骨皮だけの祖父の手に自分の手を握られると、いたたまれなくなって病室を飛び出して外で泣いたこともありました。
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そんなある日の夜、病院に泊まりで祖父の看護をしていた父から母に連絡が入り、祖父が亡くなったことを知りました。
その日の昼に祖父の見舞いに行ったばかりだったので、まさかすぐに亡くなってしまうとは思っていませんでした。
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すぐに祖父の部屋の中央に祖父が使っていた布団が敷かれ、ほどなく父は葬儀屋の車で亡くなった祖父と家に帰宅しました。
翌日には通夜だということで、父と母は親族への連絡や葬式の準備に追われ、家の中はバタバタしていて私や弟達は学校へ行くどころではなく、母は私達に学校を休ませました。
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私達家族は、父が日本◯管(現:JF◯スチール)に勤めていたこともあり、社宅に住んでいたので、祖父の遺体は通夜の日の朝には棺桶へ入れられ、社宅の敷地内にある集会所へと移されました。
そして通夜が行われた夜、父と叔父達は集会所で寝ずの番があるので、自宅には母と叔母達、従兄弟姉妹達、私と2人の弟がいました。
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母や叔母達はリビングで仮眠をとり、従兄弟姉妹達は私の両親の部屋で私の一番下の弟と寝て、私はすぐ下の年子の弟と自室の二段ベッドで眠りにつきました。
その夜中に、私はふと何かの気配で目が覚めたんです。
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ベッドから起き上がると、部屋の窓をノックする音が聞こえました。
私の家は社宅の2階です。
普通に考えたら、夜中に2階の窓を叩くなんてあり得ません。
しかし寝惚けてたこともあり、私はベッドを降りると窓のカーテンをススーッと開けました。
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…窓の外には、真夜中の暗闇に半透明で浮かび上がる祖父の姿がありました。
驚くよりも、つい、いつもの調子で「おじいちゃん!?」と言いそうになって、二段ベッドの上で寝ている弟のことを思い出して手で自分の口を塞ぎました。
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窓の外の祖父が「しー…っ」と口に人差し指を当てるのを見て、私もそれを真似しました。
祖父は何やら言ってるようでしたが私には聞こえず、首を傾げる私を見て、弟の寝ているベッドを指差してからゆっくりした口の動きで『弟の面倒をよく見るように』と私に語りかけたようでした。
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私がコクコクと頷くと、祖父の姿はフッと消えてしまいました。
私は夢でも見ていたかのような気持ちになり、フラフラとベッドに入るとまた眠りにつきました。
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翌日は告別式で両親は朝から忙しく、私は従兄弟姉妹達と告別式が始まる時間まで外で鬼ごっこをしたりしながら過ごし、告別式が始まると、お坊さんの眠くなるような読経と木魚の軽快なリズムに欠伸をして、祖父に最後の別れをしました。
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両親や親戚達が棺に釘を打ち付けていき、その様子を見てたらもう二度と祖父は戻って来ることはないんだと、急に寂しくなったのを今でも覚えています。
祖父を火葬して帰ってくると、ようやくひと段落したので、私は母に昨夜亡くなった祖父が来たことを打ち明けました。
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「もしかしたら寝惚けてただけかもしれないけど、確かにおじいちゃんだった」と。
母は視える人でしたが、まさか娘が幽霊の類を視るようになるとは思っていなかったようで驚いていました。
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『16歳になる前に幽霊や物の怪の類を視てしまうと、その人は一生、そういったものが視えるようになる』と言われているそうで、母は私を気の毒に思ったのかもしれません。
「外では視えるって言っちゃダメよ」と、私に含んで聞かせました。
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一方、父は母とは真逆で霊感0の上に「幽霊や妖怪なんかいるわけない」と豪語する人間なので、母が「あの子、死んだおじいちゃんを視たそうよ」と父に話したところ、「寝惚けてたか、どうせ子供特有の嘘だろう」と答えたそうです。
…まぁ、その後、父は幽霊から痛い目に遭わされるのですが、それはまた別の機会に。
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ともあれ、祖父の霊を見たのを皮切りに、日常生活で霊を見てしまうのが私にとっての普通となりました。
それでも最初は、生きてる人なのか死んでる人なのか区別できず、私に視えてて一緒にいる友達には視えてない、と分かった時に初めて「あぁ、あの人は幽霊なんだ」と理解する程度の力しかありませんでした。
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誰かの【死】をきっかけに、霊感が覚醒してしまうことは珍しくないんだそうです。
…とはいえ、第六感のようなものが他人よりよほど鋭敏だったりしない限りは簡単に覚醒したりはしないようなのでご安心を。
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私はこの後、自分の霊力を高めてしまう事件を起こしてしまうのですが、それもまた別の機会に書かせていただきたいと思います。
[おわり]
作者ゼロ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
私の霊感覚醒きっかけ話です。
おじいちゃんの霊を視てなかったら、今は平和に霊感0人間してたと思います。
人生、どこにターニングポイントがあるか分かりませんね。
次回に書くときは、霊力増強事件を…と考えています。