短編2
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とんでもない女

私が遭遇した中で一番怖い体験でも話そうか

当時有名だったその女の名前は誰も知らない

ただ「あの女」とかみんな好きなように呼んでいた

そいつは決まった場所に現れるとかそういうことはなくて、まさに神出鬼没。ふらりと現れては奇行を見せ付けていつの間にか消えてる。

まぁ気味が悪いだけで実害はなかったからみんなそれほど気にしてなくて、見慣れた光景だったんだ。

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でも怖がりな子供、特に私の弟なんかはすっかりびびってしまって、それでもちゃんと学校にはひとりで行くしひとりで帰ってくるし、学校さえ終わればほとんど家族と一緒だったから危ないことなんてなかったのね。

でも私が遭遇したあの女の事件で、あの女は精神病院に入れられたって聞いた。

あれは、何年前だったか…真夏のことだった。

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私と弟は2人でスーパーにアイス買いに行って、その帰り道を汗だくになって歩いてた。

そうしたら突然弟が私の腕に抱きついてきて、何かと思ったら前を指さすのね。

まぁもう想像はつくと思うけど、いたのよ。あの女が。

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ガチガチ歯を鳴らしながらうずくまって首をひん曲げてこっちを見てる。

汗一つかいてないところが流石に不気味だった。

けど今まであいつに関して何かあったわけでもないし、特に警戒もせずに前を通りすぎたんだ。

案の定何もなくってほっとした。

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「おら、あんたがビビりすぎなんだよ、ったく…」

弟の頭を小突いてやろうと思ったが、その瞬間顔面蒼白。

視界の端に見えたんだ。腕をぶんぶん振り乱して頭まで振りながらこっちに走ってくるあの女の姿が。その手に握られたナイフの刃先が。

耳のそばで聞こえたんだ。あいつの言葉にならない奇声が。雄叫びにも近い叫び声が。

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「ううおえかめえとょけとーきとけのんせあぁああがぁぁぁあか」

みたいに叫びながら、もともとそんなにない距離を縮めてくる。

絶叫しながら逃げた。弟担いで、とにかく走ったね。

家に着いた頃にはもういなかったけど、遠くでまだ聞こえてたよ。めちゃくちゃに叫ぶ声が。

ぞっとしてとにかく家に入って鍵締めてチェーンもかけて、警察に通報した。

そうしたら流石に動いてくれて、その日からあいつを見かけることも話を聞くこともなくなったよ。

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あんたらも気を付けな。

害がないと思ってても、見知らぬキチガイには近付くな。

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レイ様
この度は私の拙い作品にコメントと怖いをいただきましてありがとうございます
正気ではない女が出てくるこのお話にぴったりだと思い、使わせていただきました

ときに人間は幽霊なんかよりもずっと怖い…人間は誰にでも見えるものですし、それが刃物なんて持たれた日にはトラウマになりそうです…

まだまだ未熟な怖話初心者ですが、最高のストーリーをお届けできるよう精進いたしますので、よろしくお願い致しますm(*_ _)m

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もずく様、夜分遅くに失礼します、レイと申します。

この度は私の描いた絵をお話のトップに使っていただきありがとうございます。
自分の絵を使っていただいている話を見つけ、嬉しい気持ちで読ませていただきましたが...場面を想像してゾワッとしました。
常軌を逸した人間の方が恐ろしい時ってありますよね...

これからも怖いお話の更新楽しみにしています(^^)

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