昨年のお盆休みの話
貴重な休みを自分の趣味に使ってしまうことに嫁はあまり良い顔をしない。
多分どこの家庭も一緒だろう。
しかし、両家の墓参りを早々に終わらせ休み中の食材もビッグハウスとダイイチで済ませ特売の卵も2パック買えた。
これで私の役割は終わり嫁も快く送り出してくれることとなった。
釣り好きであることは以前にお話ししたが次の日の早朝より一泊二日の渓流釣りに出掛けるのだ。
夕方から慌ただしくもウキウキ気分で支度を始め午前0時位までタイニング。
ミッジもたくさん作った。
翌朝4時出発
大雪ダム上流のポイントまでは1時間半ほどで到着して魚肉ソーセージを齧りながら早速釣りの準備をする。
ん?
何か嫌な感じが・・・・
何かに見られている様な・・・・
こんな山の中に私以外、誰もいる筈はないし車も止まっていないので先行者が居る訳でもないだろう。
そんなことより早く竿を出したい気持ちが勝ち「多分エゾシカだな」と勝手に納得して500メートル程釣り上がる。
釣果は上々で20尾はリリース5尾だけは殺生させて貰うことにして8時には車まで戻ってきた。
渓流を歩くと異常に疲れる。
釣り上がっている時はさほど感じないのだが帰りはクタクタだ。
それでも、とりあえずテントを張りコットを広げる。
ディレクターチェアにドッカと座りクーラーボックスからキンキンに冷えたキリンラガーを取り出す。
渓流を眺めながら一息ついた。
やっぱり視線を感じる・・・・
しかし、3時間程しか寝てないのと渓流を歩いた程よい疲れから脱力感が半端なかった為、深く考えることもなく持ち帰ったオショロコマを処理してからコットに横になった。
渓流のせせらぎだけが聞こえてくる世界の中で、やはり視線だけは気になった。
「視線」と言うよりも「目」と言った方が正しい様な何とも言えない嫌な感じなのだが・・・・
もう限界・・・・
熊じゃありませんように・・・・
眠りに落ちた。
13時頃、暑くて目が覚めた。
日中のテント内は暑い。
真昼間からクーラーボックスに手が伸びる。
ビール最高!
遅めの昼食は「焼きそば弁当」
お湯を注ぎ待っている間も、やはり嫌な視線・・・・
寝起きだったこともあり若干イラッとしてきた。
「何なんだ?ムカつくな!」
低血圧の私は正直そう思った。
いずれにせよ、周りは獣たちの棲み処であり私がお邪魔している立場なので文句も言えない。
「夕まずめ」までにはまだ少し早い
私はまた横になった。
次に起きた時、陽はほぼ落ちていた。
ちょっと飲み過ぎたか寝過ごしてしまった。
夕まずめは諦め炭を熾し視線を感じつつも夕食の準備
スキレットにバターを落とし朝から干しているオショロコマをソテーした。
旨い!
またクーラーボックスに手が・・・・
ビールが無くなり芋焼酎の半分が消化された頃
「そうだった・・・・釣りに来たんだった・・・・」
明日、早朝からの釣りに備え寝ることした。
ところが・・・・
殆ど寝に来たと言っても過言では無いほど寝てしまったので中々寝付けない。
とりあえず「ぼーっ」としながらコットで横になっていた。
「ぎぃぃぃーぎぃぃぃぃぃー」
せせらぎに交じって何かが軋む様な音
「風が出てきたか?」
テントは全く揺れていない。
「ぐぅぅぅ うぐぅぅぅぅ」
獣かぁ?
聞いたこと無い鳴き声だなぁ
それらの音は結構近くから聞こえ音源は多分、数十メートルしか離れていない感じだった。
凄く嫌な感じがした。
「熊だと厄介だな・・・・」
「テントより安全だろう」
私は飲み過ぎてだるい体に鞭打ってコットを車に移動、車中泊することにした。
さすがに車の中だと渓流のせせらぎも少し和らいで聞こえるが時折聞こえてくる例の音は逆に大きく聞こえた。
気にはなったものの酔いの方が勝り何時しか眠りに就いていた。
翌朝5時、二日酔いも無くスッキリ目が覚めた。
釣りの前にどうしても昨晩の「音源」が気になり聞こえてきたであろう方向を探ってみた。
鬱蒼とした木々の中に目を凝らす。
「あぁ~」
「これか・・・・」
林の中の一本の木からオッサンが無言でぶら下がっていた。
「はぁ~ こっち見んなや・・・・」
私はオッサンに言ったが返事がある筈もない。
驚きはしなかった。
釣りやキャンプで自殺者を発見したのは、これで3回目だし・・・・
携帯を手にするが・・・・
最悪・・・・
圏外・・・・
朝まずめを楽しめる筈もなく・・・・
車に乗り込み最寄りの公衆電話まで走った。
警察に連絡後、嫁に電話・・・・
「玄関に塩頼む・・・・」
作者andy兄-2
人生で3度目の経験でした・・・・