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娘よ、…俺、幽霊信じるわ…

中編3
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娘よ、…俺、幽霊信じるわ…

私の父はヘビースモーカー&酒豪。

今でこそ糖尿病で煙草はスッパリやめましたが、かつては1日2箱〜3箱は当たり前。

母の買い物へお手伝いで付いて行くたび、毎月の煙草代が馬鹿にならないと嘆いていたのを覚えています。

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おまけにお酒も、仕事が休みとなれば朝から飲みっぱなし。

お茶の代わりに酒、コーヒーの代わりに酒、正月休みや大型連休となれば1日で2リットル入った紙パックの日本酒を下手すりゃ1本半〜2本は飲み干してしまいます。

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そんな父は幽霊に関しては零感で、まったく信じないタイプでした。

そんな父が、いきなり幽霊話をしだしたのは私が二十代後半くらいになった頃だったと思います。

酒好きの父は定年退職後もOB会の集まりがあれば、必ず参加していました。

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たまたま、その時のOB会は自宅の最寄り駅近くにある飲み屋になったため、自転車で出かけて行きました。

酔っ払っても自転車で帰ってこれるくらい酒豪だと、自信があったからかもしれません。

OB会自体は夜の11時過ぎにはお開きになったそうです。

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その後、二次会に少し顔を出して帰る頃には夜中の1時近く。

初夏だったこともあり、お酒で火照った顔には夜風が気持ちよかったそうで。

自転車をキコキコ漕ぎながら、自宅を目指していました。

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自宅まであと半分、という距離まで来た時、自転車で信号待ちをして青に変わったからと自転車を漕ぎ出したとたんに、遅い時間だというのに若い娘さんが父の前へ飛び出して来たので、父は慌ててハンドルを切って、その場に派手にコケたそうです。

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思いきり尻餅をついたせいで痛むお尻と腰を摩りながら、娘さんは大丈夫だったかと確認するついでに謝ろうと「どうも、すみません」と言いながら顔を上げたら、そこには誰もいなかったんだとか。

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「おっかしいなぁ?」と思いながら、ふと、すぐそばの電柱を見ると花束があり、「ここで◯月◯日に轢き逃げ事故がありました。目撃された方がいましたら、◯◯警察署まで」という立て看板。

「…まさか、な」と思いながら、父は帰宅しました。

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それから何週間か後、父は魘されるようになったそうです。

起きると夢は覚えてない。

でも、誰かが肩を揺すったり引っ張ったりする感覚だけは残っている。

気味が悪いと思いつつ、疲れてるんだろうと放置。

…まぁ、この辺は父らしいです。

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ある時、魘されて目が覚めると背中越しに気配を感じたそうです。

気配自体は子供のもののようで、少し苦しそうな息遣いが。

「なんだ?」と思った時には金縛。

いきなり身体が動かなくなったので、焦ってもがいたそうです。

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身体を捻ろうと悪戦苦闘しているうちに、金縛が解けて寝返りをうった瞬間、半透明の6歳か7歳くらいの男の子が目に入り、その子はすぐに消えたそうです。

それからすぐに、私や母に「…お父さん、幽霊見たわ…」と、ゲッソリしながらカミングアウト。

OB会の帰りの出来事も話してくれました。

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「金縛なんか脳が起きてるだけの現象」と豪語していた父が、「いや、脳が起きてて身体が寝てるとかじゃない。身体にはハッキリ何かの力で押さえつけられる感覚が残ってる」とゲンナリした様子で言うのです。

「あー、こりゃ本当に体験しちゃったんだな」と、私は母と顔を見合わせました。

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あれだけ幽霊否定派だった父が、窶れて幽霊の話をするのは尋常じゃ考えられませんでした。

父はすぐ、お祓いに出かけて行き、スッキリした顔で帰って来ました。

幽霊否定派だった父は心霊番組を「胡散臭い」と見ていませんでしたが、この事件があってからは自分からチャンネルを合わせて見ています。

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…人間、実体験してしまうと変わるものですね。

そんな父は、煙草よりも好きなお酒だけは糖尿病で治療中の今もやめられず、ウイスキーを1日3杯までと決めて飲んでいます。

今度はお爺ちゃんかお婆ちゃんに、「酒やめろー」って枕元に立ってもらおうかしら?

[おわり]

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