悪魔は気まぐれに、四人の人間の願いを叶えた。
四人には共通点があった。殺したいぼどに憎んでいる人間がいることだ。
一人目は毒を願った。一口で死んでしまい、体に残らない毒を与えられた。
二人目は銃を願った。音の聞こえない、対象を外さない銃が与えられた。
三人目は対象に近づける立場を願った。明日にでも殺しに行けるような、近い地位を与えられた。
そして四人目。
四人目は少し考えるようにしてから、憎しみの対象があるものを見えなくしてほしいと願った。
悪魔は首をかしげたあと、少し置いてから面白そうに口角を吊り上げた。
そして、四人目の願いも叶えられた。
願いを叶えられた四人は、それぞれ殺人を成し遂げた。四人目以外の三人は自分で殺人を行ったが、四人目はなにもしなかった。
だが、四人目の殺したい人間はトラックに牽かれて死んだ。車が通っているというのに、赤信号を渡って。
四人目が悪魔に見えなくなるように願ったのは、車だったのだ。
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「これでおしまい」
「ええー、続きは?悪魔は出ないの?」
「さあなあ。怖い話をしてくれっていうからしたけど、知り合いに聞いた話じゃあ、これで終わりだ」
「つまんなーい。ていうか絶対ホントの話じゃないよね?おじいちゃん」
「さあなあ」
「もう。じゃあいいや、怖い話やめてゲームしよう。僕とってくる」
そういって孫は私から離れた。
「...さすがに信じないか」
数十年前にあの男が死んだときは、叫びたいほどに嬉しかった。妻を牽き殺してのうのうと生きていた男は、どうしても同じ方法で殺したかったのだ。
きまぐれな悪魔にはあれ以来会っていない。私が死んだら魂を取りに来るのだろうか、あるいは。
作者はーこ
一人目から三人目はほぼ前振りでもうしわけないです。
よろしくお願いします。