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短編2
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浴槽

蛇口から流れた水は、底へ流れていかず浴槽に貯まっていく。

新しく越してきたアパートは、風呂の排水溝が流れにくかった。

「何か詰まってるのかな」

私のような金のない学生が借りれるアパートだ。多少の不便は仕方がないので、自分で直すしかないだろう。

捨てようと思っていたかぎ針があったのでそれを使うことにした。かぎ針を排水溝の中へと入れてみると、やはり奥の方に引っ掛かるものがあった。

かぎ針越しに伝わるのは、固さはあるが、所々柔らかい感触だった。

「...気持ち悪い」

早くとってしまおうと思い、かぎ針の曲がった部分を引っ掻けるように動かした。そのおかげで徐々に奥から上がってくる。

数分かけてそれは排水溝から顔を現した。

「...え」

それは、人間の指だった。爪には所々剥げている赤いネイルが塗られているから女性のものだろうか。腐りかけている断面からは、血は出てこなかった。

「え、やだ、なにこれ」

そういったきり私は言葉を失った。なんで人の指が出てくるのか。それにこの指の持ち主は、一体どうなってしまったのか。

ピンポーン

私が呆然としていると、突然ドアのベルが鳴った。

ピンポーンピンポーンピンポーン

何かの勧誘だろうか、何度もベルは鳴ったが私は反応できなかった。

そうしてしばらくすると、ベルが鳴りやんだ。居ないと思われたのだろうか。しかし、

ガチャガチャ

次に聞こえたのは、鍵が開けられる音だった。ギィ、とドアが開いていく。

「合鍵は作っとくものだな」

知らない男の声は段々と、近づいてきていた。

Concrete
コメント怖い
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