これは、僕がまだ小さい頃の話です。
子供の頃というのは感受性が強いのか、霊的なものを見たりするのが多いようで、そういう話をよく聞きます。
実際、僕も頻繁に見ていたそうです。
しかしこれから話すのは幽霊を見たわけではなく
僕が連れていかれそうになった、そんな話です。
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小学校から帰ったその日は
母と年の離れた兄が本気で怒鳴りあっていました。
いつも通り些細なきっかけながら、今日は何故か
どちらも譲らない。
まだ小さい僕にはその2人を止める術は思い付きません。
そのうち兄がカッとなって母をぶちました。
驚いて僕が制止しようとすると怒りが頂点にきた母は
「こんな家、出ていきます」
そう言って玄関へ向かいました。
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小さいながらに母が離れて言ってしまうとわかった僕は
「やめて!出ていかないでおかあさん!」
そう言って必死に引き留めていました。
しかしやがて母は僕を引き離し
「もうお母さんじゃない」
その一言を残して出ていってしまいました。
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その後、兄もどこか外へと出てしまい、家には
僕一人きりとなってしまいました。
しばらく泣いた後、僕の記憶はとんでいますが
気づいた時には母が「ごめんね」と言いながら
僕を抱いていました。
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ここからは両親と兄が話してくれたものです。
何も知らない父が、家に帰ってくると全ての電気が消えており
不思議に思いつつも
「ただいまー。◯◯(僕)ー?」
そう言って居間へ行き、電気をつけたそうです。
するとそこには、窓側を見つめたままニコニコ笑っている僕が
立っていたそうです。
声をかけると、いたって元気に
「あ!おとうさんお帰り!」
と言って駆け寄ってきました。
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父は元気な僕の姿を見て安心しながら
「あれ?お母さんとお兄ちゃんは?」
と一言聞きました。
すると僕は
「お兄ちゃんはわかんない・・・でもおかあさんはそこにいるよ!」
そう言って先程まで見つめていた窓側を指さしました。
父が困惑しながらどこにもいないことを告げると
僕はちょっと怒りながら窓側に駆け寄っていったそうです。
「おかあさん!おとうさんがおかあさん見えないって言ってる!」
おかしいよね、と笑いながら何も無い空間に話しかける僕を見て
「おかしい・・・」そう感じたそうです。
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そんな時兄が帰ってきました。
帰ってきた兄に父が話を聞くと
兄は喧嘩した頭を冷やしに外へ出ていたそうです。
しかし相変わらず何も無い空間に話しかける僕を見て
兄もただ事ではないと感じたのか
母を探しにもう1度外へと出ていきました。
それから1時間ほどして兄が母を連れて帰ってきました。
母は、父に説教をされ、僕の元に近寄りました。
その瞬間僕は
「おかあさん!知らない女の人が来た」
と、明確に怯えた表情で窓際に逃げたそうです。
母は戸惑いながら僕の名前を呼びつつ抱き上げようとしました。
しかし僕は暴れて必死に逃げようとしたそうです。
「◯◯!私は貴方のお母さんよ?どうしたの?」
そう言って再び近寄る母は、ひっ!と悲鳴をあげました。
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僕の真後ろにある窓ガラスには僕を抱きかかえるように
髪の長い女の人が映っていたそうです。
その時母は
「◯◯は私の子よ!!アンタのじゃない!!」
と言いながら僕を無理矢理かかえたそうです。
すると耳元に静かに
「お母さんじゃないって言ったのに」
そう囁く声が聞こえた瞬間、僕が静かに眠り始めたそうです。
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それから2時間ほど経ち、目を覚ました僕が見た光景が
「ごめんね、ごめんね」
と言いながら僕を抱きしめる母の姿でした。
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母はその時を思い出しながら
「あの時◯◯の親じゃないって言っちゃったから
私(母)が親じゃなくなるなら、可愛いアンタを自分の子供にしようとしたんだろうね」
と言っていました。
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そんな話を改めて聞かされたつい最近。
僕は夜中、頻繁に金縛りにあうようになりました。
それも、夢を見ながら。
暗い部屋の中で、母の膝に寝転がる僕。
しかしその母は向こうが見えるくらい薄くなっており
今にも消えそうな状態です。
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その対面には、白いワンピースを着た女性が座っています。
まるで、なにかを待つように。
嬉しそうに、手招きをしながら・・・・・・。
作者黒人形
最近お祓いに行きました。