「そっか。」
なんとも言えない無言が続いた。
とゆうよりこれからどうすればいいのか、
別に居て迷惑になるとかはないけど…
一つだけ問題があった。
当時付き合っていた彼女の存在。
普通の彼女なら問題ないがいわゆる「見える」人らしい。そして重度の束縛癖。
いままで信じたことなかったが仮に彼女と部屋にいる時にこの子が現れたら…
やつは霊にも嫉妬するだろう。
「君は昨日消えたけど自由にできることなの?」
「昨日からずっといるよ」
「そうじゃなくて…姿を消すことはできる?」
「わからない」
だよな。認識してれば見えるってことなのか?
まあとにかくしばらく彼女は家に呼ばないでおこう。
「ここに居てもいいよ。多分君は幽霊なんだと思うから。」
「…」
なんかお礼を言われたような気もするけど
多分気のせいだろう。
「炭酸水飲む?」
「うん」
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それから霊との共同生活が始まったのだが
特に変わったところはない。
ただ日常の中に霊であるこの子が視界に入ってくるだけ。ご飯も食べないみたい
1度母の目を盗んでハンバーグを一つ持って行ったが
しばらく見つめて消えてしまった。
まあ食費かからなくていいんだけど。
唯一困るのはどこにでも付いてくる(憑いてくる)ってことだけ。
お風呂だろうとトイレだろうと悪友といる時だろうと。
決まってなんとも言えない表情をされるので気まずい雰囲気になる。
「どうしたの?」と聞いても
「わからない」と言うだけ。
あっという間に1ヶ月が経ちそこそこ会話ができるようにまでなった。だいたいは「わからない」と言われるが。
よく考えなくても異常な事だとは自覚している。
少なくともこの子は誰もがイメージしてる「怖い幽霊」ではなく
ただそこに「いる」ってだけで
テレビを勝手に付けたり変な声を出したりすることはない
なんとなく、居心地がよかった。
そんなある日
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「ねぇ」
驚いた。この子からコンタクトをとるなんて木彫り以来なかったから。
「どうしたの?」
「わたし何もわからない」
「生きてた時のこと?」
直感でそう思った。
「うん」
「自分の名前もわからないしどこに住んでたのかもわからない。」
死ぬってそーゆーものなのか。
「名前は…俺にもどうしたらいいのかわからない。けど」
「?」
「行ってみる?俺と君が初めて会った場所(俺には見えてなかったけど)何か思い出せるかもよ?」
その子は少し俯き考えて
「うん」
と言った。
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日曜日、母が買い物から帰ってくるまで待ち車を借りた。
「行くよ」
と、誰も居ない空間に小さく声を掛ける。
返事はないが聞いているだろう。
車に乗り込みエンジンをかけ助手席を見ると
こちらをみて微笑んでるその子。
「何?」
「何でもない」
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最近こっちを見て微笑んでるのよく見るが…
正直照れるのでやめて欲しい。
「行くよ」
と言うと
「うん」
と返事があった。誰かがいる時は気を使ってるのかもな。
家からその淵までははっきり言って結構な距離。
片道2時間半はかかるだろう。
着く頃には暗くなっている。
ナビを頼りに車を走らせていると
「ねぇ」
「どうしたの?」
「風、消せる?」
「かぜけせる?呪文か?」
「この風、消せる?」
と指をさしたのは車のエアコン。
「あぁ、これね、ごめんごめん。」
と言いエアコンを切る。
ここで疑問をぶつけてみた。
長旅だし、何か喋ってないと眠くなるな…
「幽霊って暑かったり寒かったりあるの?」
「あるよ」
「へぇ〜…じゃあその格好寒くないの?ずっとTシャツ1枚だけど」
「寒い」
「じゃあこれ付けといたほうがいいんじゃない?エアコン」
「今はあつい」
確かに俺は寒がりだが…
というか、こうしてると普通の人だよなー。別に透けてるわけじゃないし。
周りから見たら独り言なんだろうけど。
道中気になっていたことは全て聞きしばらく無言が続いた。
そして目的地はもうすぐってところで
「ねぇ」
「どうしたの?」
「ここ、来たことある。」
それは山沿いの古い民家が並ぶ
お世辞にも綺麗とは言えないようなところだった。
「よくあるようなところだよ」
「違う。あの小屋」
その子が指指した場所は
民家が並んでるところから少し外れた場所にある
家畜小屋だった。
「家畜の小屋?鶏とか牛とか豚がいる場所だよ?」
「行ってみたい」
広くない道路の脇にハザードをたいて止まり
車に常備している懐中電灯を持ち家畜小屋に向かう。
予想はしていたがそこには生物はいなく
あるのは鉄製の柵、まだだいぶ残ってるエサ箱、木製のバット、手錠、黒ずんだ血痕………?
「何だこれ…」
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何かとても嫌なイメージが湧く私をよそに
その子は
「…何もわからない」
と言い車に戻っていった。
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続く
作者amane