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「あなたは生きていますか?」5

中編3
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「あなたは生きていますか?」5

帰り道、泣きつかれたその子は眠っていた。

(幽霊も寝るって言ってたけど、ほんとなんだな。それにしても…寝顔、生きてる人間にはない雰囲気というか…綺麗だな)

結局何もわからず終いでこの子を傷つけただけだ。

この子を救うなんて思い上がりもいいとこだな。

今更来た拳の痛みと相まって私は自分にイライラしていた。

家に着く前にコンビニに寄り手や顔についた血を洗い流し

肌着とハンカチと炭酸水を買って車に戻った。

そして車の中で綺麗な肌着に着替えハンドルに付いた血を拭く。

いつの間にか目覚めていたその子はその様子をなんとも言えない表情で見つめていた。

「どうかした?」と聞くと

首を横に振りまた眠りにつこうとする。

「もう家着くよ」と言うと

首を縦に振った。

家につきリビングを確認する。

酒に酔った母がソファーでさっきの華奢と同じような体制で寝ていた。

「デジャヴかよ…」と呟くとどこからかクスクスとかすかに笑い声が聞こえた。

あぁ、もう大丈夫なんだな、と安心した。

母に毛布をかけ(親不孝ですいません)と心で謝り

その日はお風呂にも入らず拳の痛みを我慢して眠りについた。

隣でもぞもぞして夜中に目が覚めたのはきっと夢だろう。

朝起きるとその子がテレビを見ていた。

映像ではなくテレビそのものを見ていた。

何してんの?と聞こうとした瞬間右手に激痛が走った。

あぁ、そういえば…と右手を見ると3倍くらいに腫れ上がっていた。

(なんだこれ…クリームパンナちゃんかよ…)と

心でツッコミを入れ近くの病院に電話する。

緊急外来で診察してもらうと粉砕骨折のようだ。

「隕石でも落ちてきたのかい?」と顔馴染みの医者が言った。

笑い声は聞こえてこなかった。

緊急手術をし入院にまでなった。大袈裟だとは思ったが…

一応医者にはどこにも電話しないで下さいと言い

安静にするというのを条件に飲み込んでもらった。

こうなると警察が不安なのだが

一刻も早く私は調べ物をしたかった。

あの家畜小屋、トンネル、事件、若い女性の死…

(関係なければいいが…)

心配してくれてるのか、そんな事を考えてる間にもこの子は私の隣にいて窓の外を見ている。

「早く帰りてーなー」

と呟くとその子はニコリと微笑んで姿を消した。

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骨の再生は意外と早く1週間もすればギプスつきとはいえ退院できた。

「絶対安静だからね」と医者に釘をさされ

急いで家に帰る。フリをして地元の図書館に行った。

目的は一つ。あの場所での事件についてだ。

うちにはパソコンが無く、図書館なら新聞やらパソコンやらがやりほうだい。

もちろんあの子も一緒だが。

予め「喋りかけられても返事できないからね」

と言っておいた。その子は頷いた。

そして調べ始めるのだが初めての事なので何から手を付けたらいいかわからない。

パソコンで地名と事件名ぽいワードを入れれば出てくるかな?と思い調べてみた。

あっけなく記事は見つかった。

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何月何日未明、Y県某所、某トンネル付近で10代女性の遺体が見付かる。

簡単にまとめると長距離トラックの運転手が

居眠り運転で事故を起こす。跳ねられた女性はTシャツ1枚で体中傷だらけ

跳ねられたもの以外にもナイフのようなもので切りつけた傷や火傷、青あざ数百箇所、近くの廃屋で被害者女性のものと思われる衣類と私物が見つかったそうだ。

なぜバットや手錠が回収されていないのか。

簡単な話、まだ犯人は捕まっておらず被害者が増えていることを安易に予想させている。

途中まで読んで

私は静かにパソコンの電源を切った。

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続く

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