あの時の嫌な予感は的中していた。
しかしこれからどうしたらいいのだろうか。
この子の年齢も名前も知れた。
(ここでは仮に絵里と呼んでおく)
遺族の方に会いにいくべきか?
いや、こんな若くて尖ったやつが行っても門前払いだろうか…
何をすれば絵里を救えるのか
そもそも救うってなんだろうか。
成仏させるのが救うってことか…いや、それは自称霊媒師のやつらが仕事に託けて行ってる遊戯だろう…
絵里にとっての幸せとは…
そうこう考えてる間に家についた。絵里の姿は見えないが隣に居るだろう。
とにかく部屋に着いたら軽く自身のことを教えてやらなきゃな。
家に入り部屋に向かうと誰か来てるみたいだった。(客人?俺の部屋で何してんだよ…)
確認すると悪友がいた。
「おつかれ!駅で偶然お前の姉ちゃんに会って上がらせてもらったわ!」
「はぁ?姉貴?」
姉貴が実家に帰ってきていた。
「ただいま優。お母さんはまだ仕事だよね、ってその手どうしたの?」
「おかえり。そうだろ、夕方に帰ってくると思う。なんでもないから気にしないで。」
玄関をみると絵里が固まっていた。
こうゆう人間らしい部分を見るとつい笑ってしまう。
「まあいいや、何しにきたんだよ」
「優、お前さ、浮気してんの?」
「はあ?何言ってんだよ」
「最近全然連絡くれないって嘆いてたぞ」
あぁ、そういえば俺彼女いたな、メール電話めっちゃ来てたなぁ…
「してないよ、ただ色々忙しくて」
「喧嘩で忙しいのか〜反省しろ!」
と、私の右手をはたく。
残念ながら痛みはほとんどない。
「もういいから、とにかく今日も忙しいから悪いな」
と言い悪友を強引に帰す。
「あんたひどいね」
と笑っている姉貴をよそに部屋に入る。
「あ、私これから出かけるけど今夜彼が来るからよろしくね」
と言い残し出ていった。
都合よくみんないなくなったな。よし。
冷蔵庫から炭酸水とコップを出し
部屋に入る。
「いる?」と聞くと「うん」と言って
瞬きした瞬間姿を見せた。
「ほんとに自分の意思で消えてるわけじゃないの?」
「わからないよ」
「そっか。はい。飲むでしょ?」
「うん」
2人で炭酸水を飲む。
今誰か見ていたらどう映るのだろうか。
コップが宙に浮いてるのか?それとも絵里が触れてるものも消えるのか?
そもそもそのTシャツはどういう物質なんだろう…
幽霊は考えても答えが見つからないから
みんな恐怖するんだろうな。
絵里を布団に座らせ本題に入る。絵里の年齢、名前、トラックの事故、、、
家畜小屋での事は今は伏せておこう。
絵里は黙って聞いていた。私の目を見つめて。
一通り聞いた絵里は腑に落ちない顔をしていた。
「その日わたしは何でそこに居たの?」
盲点だった。確かにそうだ。気付けば不審な点がいっぱいある。ここは隠さず言うべきなのか…。
私が言葉を詰まらせていると
「やっぱりなんでもない。聞いたらいけない気がする。ありがとう。優」
そう言って絵里は姿を消した。
初めて名前を呼んでもらえた。
でもなんだろう。いつもと違う感覚。空気が澄んで音もいつもより綺麗に聞こえる。
気付かなかったけど絵里が傍にいる時は少しフィルターにかかったような感じだった。
それがないってことは…
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「絵里!」
叫んでも反響するだけで絵里が姿を現すことはなかった。
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続く
作者amane