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中編3
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壊れた分身

現代人は、明かりから離れては生きていけない。

故に、どんな時間だろうが、どんなシチュエーションだろうが、常に影がついてまわる。比喩的な表現ではなく本当にその通りに。

子どもの頃の事だが、ふとした時に、「あれ?俺の影、薄くね?」と気づいた。存在感じゃないですよ。両親に相談しても、そんなわけあるか。とか、ご先祖の墓参りでも行くか?とか、求めてる回答は帰ってこなかった。

それもそのはず。そんなわけないのである。あってたまるか。

そのまま気にせず過ごそうとしていたが、ある日の夕方、影が増えた。本当に二つに増えた。

そんなわけあるか。後ろに街灯でも...ついてるわけない。薄かった方の影はそのまま薄く、新しい方の影が妙に濃い。

日中のみだったその現象、気がつけば、夜の街灯、コンビニの明かり、その他諸々、時間も関係なく起こるようになった。悩む事半年余り。

あー、自分死んじまうのかなぁ、とかボンヤリ考え始めて数日、私の元よりの影諸とも、影そのものが消え去ったのである。

恐怖よりも、とにかくわけのわからない影のお化け?に惑わされなくなった事に喜んだ。親に相談しても取り合ってもらえないし。影あるって言い張るし。ねえんだよ!別にいいけど!

諦めて、カレーをかきこむ私。カレーさえ食べてれば、どんな嫌なことも忘れられる。

次の日の登校中、妙なものを見た。私に背格好のよく似た、、、いや、そっくりな少年が、川の向こうで踊り狂っている。そっくりというより、数日前の私の格好そのものだ。なんかやたらに薄黒いけど。

ダッシュで登校し、流石に恐怖におののいていたが、給食のカレー(超ラッキー!!)を食べたら忘れた。そんな事微塵も思い出さぬまま、帰って風呂に入り、いつも通りベッドにダイブ。ゲームボーイ起動して親に怒られ、泣く泣く寝る。いつも通りだ。結局隠れて深夜までやるんだけど。

と、ベッドの横に誰かいるらしい事に気づいた。弟がよく寝ぼけて夜中に私のよこに立っていたので、いつも通り、ワンパン決めて布団に戻してやろうと身体を起こした時。

(あれ?これ俺じゃね?)

今朝の出来事を思い出し、全身に鳥肌。どうやって倒すかを必死に考えだした。

その瞬間、もう一人の私、真っ黒になった。

(影)

全てが繋がった。こいつのせいか!!

怒りで我を忘れて正拳突き一閃。感触はない。

その何か、顔らしき部分を私にぐっと近づけ、

「かわって やろうか」

何をだ。

「かわりに ころす か」

理解すると共に、揺らいだ。恐らくこいつは、私に成り代わる気だろう。しかし、成り代わったならば、日々殺したいと願っていたいじめっ子を殺してくれる。しかし

まだ ポケモンクリアしてない。

母のカレー(一晩寝かしたやつ)をまだ食べ終わってない。

「いい。自分で殺してやるから。」

そう言った瞬間、影はすごい勢いで私にぶつかってきた。かに見えたが、あるべき衝撃はなく、そのまま私は気を失った。

オチはまあ、ご想像の通り。朝には影は戻っていた。 私の抑え込んでいた願望が肥大化したのか、それとも、それにつけ込んで何かが憑いていたのかは知る由もない。宣言した通りにいじめっ子に報復する事も出来なかった。

ただ一つ。偶然だと信じたいが、彼は翌年、急病で帰らぬ人となった。

Concrete
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