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短編2
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背中

ホテルで働いていたときの話。

そこのホテルはずいぶん古くて、照明やエレベーターとか電気系統の故障が多かった。

設備の不具合やらもあって地元ではかなり格安で、だいたい来る客は不具合を承知した上で利用する人ばかりだった。

俺の仕事は夜間フロントで、もちろん夜になるとだいたい一人で過ごすことになっている。

とは言え、夜11時を過ぎるとだいたいの客がチェックインを済まし、12時くらいには館内の見回りに行くことになる。

そのホテルには二台のエレベーターが設置されていた。

そのうち一台は特に故障しやすいらしく、深夜12時以降は利用をなるべく、というよりほぼ利用しないようにと言われていた。

客も正面玄関から離れたそのエレベーターを利用することはそんなになく、特にそれについて伝えるようなこともなかった。

その日もいつものようにエレベーターで最上階に登り階段を降りながら各階の点検に回った。

6階に来た頃、朝から調子の悪かった腹痛の波が押し寄せてきた。

しかし、最上階から4階までは客室のみで一番近いトイレは3階にある。

堪えきれなくなった俺はエレベーターに向かったがそういう場面に限ってエレベーターは下へと向かう。

深夜に戻って来た客が一階で押したのだろう。

我慢しきれなかった俺はもう一台のエレベーターに向かった。稼働はしている。控えているだけだ。別に構わないだろうと思った。

慌ててもう一台のエレベーターに向かう。

エレベーターを呼ぶも限界は近い。

扉が開きすぐさまエレベーターに乗り、3階のボタンを押す。

5階…4階…

3階についた瞬間、エレベーターは停止した。

最悪だ。こんな時に限って。血の気が引いた。腹痛どころではない。

確かに腹は痛いが、出られなければどうにもならない。困った。腹痛に耐え、下を向きどうするか考えた。そうか、エレベーターなんだから非常用の連絡手段があって当然だ。深夜だが大丈夫だろうか?いや大丈夫じゃなきゃ困るだろう。

とっさにボタンの方を向く。

扉が半開きになっている。

なんで?扉が?これがなにか停止の理由なのか?

見つめていると、なにかが淡い色を見せてきた。

じーっと見つめる。

…背中

…前かがみに屈折した人間だ。

しかし、エレベーターの扉に挟まれた頭部は壁の中でそこには無い。

頭が真っ白になった。

恐怖から目を瞑り、深呼吸して目を開けると3階に着いていた。

死ぬかと思った

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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