ある日、
里帰りに田舎へ行くバスに乗り、
席の一番後ろに乗って居ると、
幼い少女と母親の二人連れが隣りに座る。
「こんにちわ!お姉ちゃん!」
小さい子供は屈託のない笑顔で挨拶をし、
私もお辞儀で返した。
母親は苦笑いを浮かべ私の手を引いて居た。
少女はどうやら私に色々と話したい事があるらしく、
沢山話しかけて来る
「明日ね、パパの所に行くんだ!」
「パパのこと最近見てなかったから楽しみなの!」
そっか、と
相槌をうって居ると母親も
「この子が小さい内に離れてしまって…
悩んだんですが会いに行く事にしました」
そう言い、
そのまま降りる駅に着いたらしく
娘の手を引きバスを降りてしまった。
去り際に少女は何か言って居たが、
うまく聞き取れなかった。
数日後、実家のテレビにあるニュースが流れた、
『四十歳男性が〇〇湖で水死体となり発見されました、
なおこの男性は…』
そのニュースを見て私の母親が思い出したように呟く、
「そう言えばこの湖、
何年か前に一家心中あったの覚えてる?」
「え?」
「こっちの方じゃ騒がれたのよ?
奥さんと娘さんが死んで旦那さんだけ生き残ったみたいで…」
物騒ねぇ、
と呟く母を余所に私の頭の中に数日前のやり取りが甦る。
あぁ、そう言えばあの子は
こう呟いて居たんじゃないか…
『パパを連れて行くの』
怖い話投稿:ホラーテラー とちおとめさん
作者怖話