これは、私の友人から聞いた話です。
A子は、N県Y市に住む、ごく普通の女子高生だ。
A子の住むマンションは6階建てで、A子はその4階に住んでいた。
ある日、部活で帰りが遅くなったA子は、疲れていたこともあり、いつも通りエレベーターを使うことにした。
エレベーターの扉の前で待機していると、静かに扉が開いた。
乗り込もうとしたA子は、中を見てぎょっとした。
その狭い空間の中に、黒い喪服を着た、髪の長い女が立っていたからだ。
しかも……
女は後ろ向きで立っており、A子に背を向けていた。
A子は怖くなったが、そのまま乗らずに帰ってしまうと失礼なので、仕方なく乗り込むことにした。
エレベーターに乗り込んで4階のボタンを押す。
すると静かにエレベーターが上昇した。
女は奥にひっそりと立っている。
A子はとても不気味だったので、すぐ出られるように手前に立っていた。
やがてエレベーターは4階で止まり、A子はそれを合図に飛び下りた。
エレベーターの扉が閉まりかけている時、A子は恐る恐る振り返った。
が、女は尚も後ろ向きで立ち尽くしていた。
その日もA子は遅くなり、エレベーターを使用しようと試みたが………
あの日の記憶が走馬灯のように蘇った。
だがA子は、
「危害は加えられなかったし、エレベーター使おっかな」
と、自分で自分を安心させ、ボタンを押した。
音もなく開く扉。
「ヒッ」
呻き声を上げてしまったA子は、慌てて口をおさえた。
女の立つ位置はこの前と変わっていない―――
だが僅かに――
女の体の向きが変わっている―――
「イヤーーー!!!!」
A子は力の限り叫び、踵を返して走り去った。
その日からA子は一切エレベーターを使わなかった。
乗り込もうとして扉が開くと、女が少しずつこっちを向いてくる―――
その事実が怖く、A子は階段で4階まで駆け上がっていた。
2ヶ月後――
さすがにもう大丈夫だろうとA子はエレベーターのボタンを押した。
その先には――――
完全にこっちを向いた、俯いた女の姿があった。
そして女は顔を上げた――――
「やっと……来てくれたね………」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話