夕方…辺りはまだ明るく、営業から直帰だった俺は帰路をトボトボ歩いていた
何時もなら最寄りのコンビニを通り最短ルートで家に帰るところだ
しかし何故か遠回りをして帰ってみる
(時間もあるし散歩気分だ)
いつもと違った景色はやはり新鮮で遠回りも悪くない気がした
信号で立ち止まる
フッと右手側にあるガードレールを見ると枯れた花と古びた人形が寂しく置いてあった…
(子供でも亡くなったのかな…可哀想に…)
と思っていると左手の裾を掴まれた…気がした…
(気のせい気のせい、勘違い勘違い)
自分に強く言い聞かせた
家に着く
リビングに行きネクタイを緩めながらテレビをつける…ニュースがやっている
台所に行き冷蔵庫から腹の足しになる物を物色していると直ぐ横を
ヒタヒタ…
誰かが裸足で歩く音がした…
(ってか、足がチラッと見えた気が…)
冷蔵庫を閉めて何気なく玄関を見ると俺の靴の横に何か置いてある事に気付く
人形だ…
信号の所にあった
俺「オイオイ…待ってくれよ…」
独り言を言ってるとリビングのテレビのチャンネルが勝手に変わった…
恐る恐る見ると教育テレビに変わっていた
ジ-っと、見ているといきなりテレビが消えた
暗くなったテレビの画面を見て一言…
俺「また…やっちまった…」
反射した画面には頭を抱えた俺…
とその横には白のシャツに赤いスカートをはいた5~6歳位の女の子…
こっちを向いて手を振って笑っている
画面越し、その娘に両手の平を見せて
「ちょっと待ってね」
とジェスチャーを送る…
女の子はコクンと頷きソファーに座る
(いい子ではある)
女の子を部屋へ残してひとまず外へ出る
大声で叫ぶ
俺「何でー!?俺何か悪いことしたー?何でー?」
一通り叫ぶと幾分心は落ち着いたので再び部屋へ戻る
女の子はソファーに座り人形を持ちながらテレビを見てる
(落ち着きすぎである、ってかまたテレビ付けたのね…)
ツッコミつつ携帯を手に取りいつもの奴に電話する
プルルル…プルルル…
「はい、もしもしKさん?どーしまし…」
Tが言い終わる前に俺は叫ぶ…
俺「何でー!?何でいっつも俺が?何でー!?」
T「いや、訳が分からないですって…」
携帯越しに半泣き状態でTに事の起こりを話す
女の子はこっちを見ながら無邪気に笑っていた…
俺は出来る限りの笑顔でそれに答えた…
事の真相を話すとTは直ぐに来てくれるとの事
(頼りになる後輩だ…)
感心していると女の子が話し出した
「私ね…お母さんを探してるの…ねぇ…おじさん…お母さんどこ?」(おじさん?気になったが無視した)
俺「お母さんは何処にいるかは知らないなぁ…」
しかし不思議な感じだ、この娘にはさほど怖さを感じない…
(ホテルの一件で俺もちょっとは強くなったかな)
と思っていると女の子が続ける
「おじさん…早く…早く…行かないと…お母さんが怒っちゃう…」
母親が怖いのか女の子は今にも泣き出しそうだ
どうにも出来ずにいると携帯が鳴る
画面には『非通知』の文字
嫌な予感MAXだったがTからかもと思い電話を取る…すると…
「…ザー…ザッザ…」
ノイズが酷い、耳を凝らす…
「…ザー…今…イ…ク…」
電話が切れた…
今…行く…?
女の子を見ると泣きながら…
「…お母さんが…来ちゃう…お母さんが来ちゃう…うぅ…」
と、泣きじゃくる
(泣きたいのは俺の方だけど…)
しかしながら親が迎えに来るなら話は早い、直ぐに連れて帰ってもらえばいい
そう思ったが…
(あれ?親って?やっぱお母さんも…)
女の子…ニヤリ
(ニヤリ…じゃねーよ!まぁ、非通知の電話にアレは普通じゃねーよな?)
アレコレ考えているとまた携帯が鳴る
案の定、非通知…
(出ないでおこう…また怖い事言われるし…)
そう思っていると…
女の子「はい、もしもし…」
(いや、出んなよ)
「うん、うん、はい、ごめんなさい。」
携帯を切った
「お母さん許してくれたぁ!」
嬉しそうである
俺「そっか、なら早く帰ってやんな…」
帰宅を促すと女の子は首を横に振り
「迎えに行くからそこで待ってなさいって!」
(誰を…?)
焦る俺に女の子が続ける…
「お母さんあと10分で着くって!」
(オイオイ…何かの怪談の話みてーじゃねーか…電話のヤツ…まさか…)
女の子に聞く
俺「お、お母さんの名前って?」
(頼みますからあの有名な名前じゃありませんように…)
「ん?メアリーだよ?」
(セーフ…)一安心(?)
俺「良かったぁ…あ!そういえば君の名前聞いてなかったね」
聞かなきゃよかった…
「わたし?わたしはメリー…メリーって言うの」
俺「あぁ…そぅ…」
拝啓T君…メリーさんは今、僕の後ろに居ます…
お願いだから早く来て…
メリーは楽しそうに母親が来るのを待っている…
(メリーの母親メアリーって、無理あるだろ…)
しかし悲しいかな、あと10分足らずで彼女は来てしまう
(来たらやっぱり最後は「あなたの後ろにいるわ」的な事は言うのだろか?その後の俺はどうなってしまうのだろうか?)
対策を立てた
①携帯を壊す…メアリーの現在地を知らなければココには来れないであろう、記憶を辿ってやって来ると聞いた事がある!(Tとの通信手段だが仕方ない)
携帯を思いっきり床に叩き付けた…
(これでよし)
するとメリーが…
「…お母さんは今、近くのコンビニにいるよぉ…」
対策①×…メリーが随時俺に報告をするので失敗
対策②部屋を出る…(Tと行き違いになるかもしれんが仕方ない、それにアイツなら何とかするだろう)
早速、部屋を出ようとドアに手をやる…
耳元でメリーの声がする…「…行かないで…」
気付くとメリーは背中にしがみついていた
(行かないと…逝っちゃうんですけど…)
対策②×…メリーが俺を離さない
対策③…家に入れない様に盛り塩を玄関前に(入れないなら何も出来ないだろう)
台所から塩を取る
盛る…
メリーがダダをこねて塩を蹴散らす…
塩がなくなった…
対策③×…メリーダダっ子の為、失敗
万策尽きた頃、呼び鈴が鳴る…
メリーを見る…
「…お母さんは今、近くの公園から走って来てる…」(怖っ、走ってんのかい!じゃあ、この呼び鈴の正体は…)
覗き穴から見るとそこには息を切らせたTがいた…
ドアを開ける
するとすかさずTが俺の背中めがけて口から何かを吐き出す
(これは…酒?)
すると、背中にいたメリーが目を押さえて苦しみ出した…
「…ぅお゛ぉぉおー!!」
少女の形をしていたメリーはみるみる内に醜い老婆になり悶絶していた…
呆気にとられている俺の髪をTが「…失礼」と言って数本抜き
それを人の型をした紙の上に…
そしてその上からロウを一垂らし
紙をベットに置いた
そしてすぐに押し入れに二人で入って呟いた
T「息…止めてて下さい…良いと言うまで絶対に呼吸しちゃダメです」
Tの迫力に負け何も聞かずに息を止めた
と同時に玄関から全身真っ黒な格好
背が馬鹿デカイ女が入ってきた…
さっきの老婆メリーも起きてきて
何やらベットでモゾモゾしている…
それを見ようとしたトコで意識が飛んだ…
気付くとベットで寝ていた…
Tがビールを飲みながら「ども…」
俺「な、何がどうなかったんだ?」
半分混乱している俺にTがビールを差し出す
一口…ゴクリ…
(…っか~うまい!)
T「落ち着きました?」
俺「お、おぅ」
するとTは静かに話始めた…
T「あれは、メリーを語った低俗な霊のですね。老婆のメリーは弱い霊であの黒いのに使われてたみたいです。先輩、事故現場とかそこら行きませんでした?」
俺「…行った…たまたま行ったな…」
T「で、何があったのかも分からないのに変に同情か情け掛けたでしょ?」
頷く俺…
T「やっぱり…ま、先輩らしいけど…」
Tの話によるとあれは詐欺みたいなもので同情を引いた者を次々に取り込んで行く恐ろしいものだったそうだ
老婆を使っていた黒いヤツは事故現場を転々としている内にデカくなった浮遊霊と呼ばれるものらしい…
あのままTに連絡してなかったらどうなってた?
とTに聞くと徐にあの時出した人型の紙を出した…
その紙は左側の肩が千切られ、足がグシャグシャになっていた…
それを目の前にだしニヤリと笑ってそれ以上何も言わなかった
その後、家で飲みながらTに本物のメリーについて聞いてみた…
T「都市伝説があり過ぎて由来は分からないけど一つだけ言える事があります。茶化したり、馬鹿にしたりそういうのって生きてる人間でも良い気はしませんよね?そうしたものに彼女は敏感ですからね…噂話をしてて電話が掛って来たら…諦めるしかないですね…。」
Tは静かにそう話てくれた
怪談話を面白半分にするのは辞めようと思った…
帰り際にTが
T「そう言えばKさん、その人形は?」
ソファーの上にあの老婆が持っていた道路脇に置いてあった人形を指差した
俺「あれは、嘘っぱちのメリーのだろ?もう問題ないんじゃねーの?」
T「…そっか、ならいいや!」
その言い方に気付くべきだった
その夜…人生2回目の金縛りにあった…
人形が血を吹きながら近付いて来たのだ…
(…もう…嫌…)
どうやらまたTを呼ばなければいけない様だ…
(ぁ!そういえば携帯壊したまま…だ…っ…た…)
迷子の【怪】完
怖い話投稿:ホラーテラー 独りさん
作者怖話