私は人が嫌いです。
人は自分達と違う者を…異物を嫌うから…
受け入れてくれないから…
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これは、私の昔の想い出…
人を嫌い憎いとさえ思っていた私を…
人の世で生きていこうと決意した親友との別れ話です…
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カ~カ~
カラスの声が響く夕暮れの図書室…
女子高生だった私の居場所…唯一の居場所だった…
私の存在はクラスではタブー…
虐めがあるわけでは無い…無視されるわけでは無い…腫れ物を扱うように…いてもいなくても関係無い存在…それが私…
神谷 棗という生徒の学校での扱い方だった。
今にして思えば、それは当然だと思う。
何も無い虚空に向かってブツブツと話かけたり…
突然、私の近くの窓ガラスにヒビがはいったり…
周りの皆からみればさぞ不気味だったろう。
家族との関係も冷えきっていた私は下校時間まで図書室で本を読むのが毎日の日課でした。
「あら…この本?」
私は読み終わった本を棚に戻し新しい本を探していると珍しい本を見つけた。
「タイトルは…交換日記…?」
興味をひかれた私はページを開く。
私の名前は、F・H…この日記を手に取った方、
私とお友達になってくれませんか?
事情があって学校にもいけない事が多くお友達もいません…
こんな私ですがお友達になってください。
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学校に居場所がなかった私は、この日記のみのお友達に…他人との繋がりに…名も知らないお友達を得る事を望んだ瞬間でした。
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交換日記一日目
始めまして。
私はN・Kです。
簡単に自己紹介します。
年齢は16歳、学園の一年生です。
趣味は読書で、本なら何でも読みます。
特にノルウェイの森とか好きです。
F・Hさんはどんな方なんですか?
お返事お待ちしています。
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N・Kさん。
まずはお友達になっていただいてありがとうございます。
私は17歳、学園の二年生です。
私も本が大好きです。
好きな本は、風たちぬとか好きです。
貴女の好きな本、まだ読んだ事が無いので次に読んでみようと思います。
今日は天気も良くて図書室の窓から見える夕焼けが物凄く綺麗です。
私の一番好きな風景…N・Kさんも共感してもらえたら嬉しいです。
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交換日記二日目
F・Hさんこんにちは。
夕焼け…たしかに綺麗でした。
図書室はいつも夕方からカーテン閉まっていたので気がつきませんでした。
貴女だけが知っていた光景かもしれませんね。
素敵な秘密…教えてくれてありがとうございます。
…
…
…
今さらですが、私の下の名前は棗(なつめ)といいます。
今度から名前で呼んでもらえると嬉しいです。
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棗ちゃん(年下だからちゃんでよいかな?)
名前教えてくれてありがとう。
凄く嬉しいです。
私は史華(ふみか)です。
夕焼け…この光景は二人の秘密だね(笑)
学園は今まで好きじゃなかったけど楽しみができました。
ちょうど、商店街から蛍の光が聞こえてきました。
今日の夕食でも考えながら帰ります。
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私と史華さんはこうして交換日記を続けていきました。
家でも学園でも孤独な私は交換日記で悩みやちょっとした話題…毎日の返事が楽しみでしかたありませんでした。
ただ、疑問もでてきます。
微妙に話が合わないんです…
最初のカーテンの話や商店街の蛍の光など、図書室に通い続けている私の知らない事ばかり…
他にも細かい事は色々と…
ですが嫌われる事が怖かった私は、その事には触れずに交換日記を続けていきました。
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交換日記24日目
史華さん…
会いたいです。
今日…ショックな事があって一人が辛いです。
お願いします。
史華さんが図書室に来る時間を教えてください!
返事待ってます。
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棗ちゃん…私も会いたいです。
だけど、ごめんなさい。
秘密してたけど体調が悪くて入院してるんです。
日記も妹に取りにいってもらってます。
本当にごめんなさい。
代わりになるか解りませんが、私の大事なお人形を置いておきます。
もしも、耐えられなくなったらお人形に願ってください!
これからは、交換日記も前みたいに続けていけないかもしれません…
元気になったら、また交換日記置かせもらいます。
一方的にごめんなさい。
本当にごめんなさい。
人形…大事にしてあげてください。
大事な親友…棗ちゃんへ
史華より
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これが、最後の交換日記になりました。
どうやって置いたのか?
他の人はなんで気がつかないのか?
ですが、約束の通りに交換日記の代わり可愛い日本人形が置いてありました。
日記の代わりに手紙が一通だけ…
今まで、ありがとう…
私が元気になるまでお人形が棗ちゃんを守ってくれます…
私の宝物…大事にしてあげてください。
…
…
…
私は史華さんと会いたかっただけなのに…
人形なんていらないのに…
人形を抱きしめ、泣いている私…
もう、声をかけてくれる人は誰一人いませんでした…
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それから、3ヶ月がたちました。
学園での孤立も変わらないなか、私の日常に一つ変化が起きました。
悪い方へと…
両親の離婚です。
私は父親について行く形になりました。
酒に溺れていく父親…
お金も無くなっていくなか、父親は私に一つの事を強要しようとしたのです。
それは…私には耐えられない事…
私は大事な人形を持って父親の元を逃げ出しました。
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行く宛も無いまま…たどり着いたのは学園の裏手にある朽ち果てたお堂でした。
「史華さん…会いたいよ。」
私は人形に祈ります。
「もう、こんな世の中やだよ!」
流れる涙は人形の顔に落ち、まるで人形が泣いているように…悲しげに泣いているように見えます。
「もう、やだよ。会いたいよ史華さん…」
私は、身体と心の疲れで気絶するように眠ってしまいました…
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「棗ちゃん…起きて…」
肩を揺らされる感触…
「ほら…早く起きて…」
ゆっくりと覚醒していく私の前には黒髪の女性が微笑みながら座っています。
「せっかく会えたのに…お寝坊さんなんだね」
棗ちゃんと頭を撫でながら優しく語りかけてくれる女性…
私は、女性を抱きしめ泣きじゃくりました。
「史華さん…会いたかった!会いたかったです」
あった事も無い女性…初めて会った女性…
ですが、史華さんと確信できたのです。
作者まー-3
棗の過去のお話です。
冒頭のセリフは棗の物語での心情をセリフにしてます。
ちょっと、暖めてた物語を某ゲームテイストに加工してお送りしております。
思ったより長くなりそうなので前後編に分けさせていただきました(他の方なら恐らく1話分です。)
どう頑張っても怖くはないと思います。
ほのぼのと楽しんでもらえたら嬉しいです。
後、後編にはゲストも登場します。
お楽しみに!(笑)