私より可愛くなくて芋っぽくて
そんな子がいいの?
私の方が、可愛いし、スタイルもいいし、お洒落でみんなから羨ましがられてるのに。
仕事もちゃんと成果をあげてるわ。
どうして?
separator
雑踏の中、ガラスに映った。
私は憧れの人の隣で笑う女を見た。インスタには、女とあの人。
浴衣姿で、はしゃいでいる様子だ。
憧れの人とは、好きな人ではない。
私に釣り合う人だ。
なのに、あの人は私よりあんな女を本命に選ぶ。
私に優しく触れて、服も脱がせた。
でも、ことには至らなかったのは貴方の優しさなのか、臆病さなのか。
separator
でも、貴方って卑怯ね。彼女とは上手くいってるみたいなのにまだ保険をかけておくつもりなの?
貴方の同情心で繋ぎとめられている彼女が可哀想ね。
もしかして、私の方が可哀想なの?
separator
そんなことない。
貴方が、私をなくすを惜しがるのはわかってる…。
でも、なにが足りないって考えたの。
私、家庭的な女じゃなかったわ。
separator
家庭的な女になるわ。
勝ちたいから。
あの子に負けてるなんて許せないから頑張ったの。
貴方が好きなんじゃあないわ。
貴方がもし、とびきりの美人が好きだったなら、私、全然気にしてなかったわ。
separator
ねえ、重い女だと思った?
お願い捨てないで。お願い。お願い。
どうして?
私、やっと気付いたの。
貴方が大切で、かけがえのない人だって。
私に釣り合うから、なんて嘘よ。
貴方が好きなのよ。
料理も洗濯も掃除も頑張ろうとして、
手足が不自由なの知ってるでしょう、それなのに頑張って、ねぇ、どうしろっていうの?
separator
separator
「えー!その噂本当なんですかぁ!」
甲高い女の声が響く。
「ただの都市伝説に決まってるじゃない!気持ち悪すぎでしょ!」
「でも、本当にあったら、遭遇したらめっちゃくちゃ怖いですよね〜」
「そりゃあね(笑)」
「でも、何をしたかったんでしょうね?」
「え?」
「マネキンって、関節動かすの大変じゃないですかぁ?痛くないですかぁ?
それでもしたかったことってなんだろうって思って。もしかして、大切な人のためとか…って考えたらロマンティックじゃないですかぁ?」
ショーウィンドウには美しい女店員が映っている。
作者奈加