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短編2
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ゲシュタルト崩壊

ゲシュタルト崩壊って知っていますか?

例えば、「全」という漢字がありますね。

その「全」をずっとずっと眺めてみてください。

全全全…なんだか、「全」はわかるけれど、なんとなくコレであってるのかな?って思い始めてきませんか?知らない文字みたいに思えてきませんか?

それがゲシュタルト崩壊です。

私には、人間がゲシュタルト崩壊する性質があるようで、「〇〇さん」をずっとみていると、なんだか本当に知っている「〇〇さん」なのかわからなくなってくるんです。

別段、普通のゲシュタルト崩壊と同じで、しばらくしたら元に戻るので、視点を少し外せばいい話であって、日常生活では困らないんですが、ふと、不安になったりもします。

このことを知人に言うと不思議がられ、小学校のときは、いじめられてしまいました。中学生になって、引っ越ししてからはずっと誰にも言っていません。親にもそれとなく言ったことがありますが、小さい子特有の妄言と捉えられたようでした。

でも、自分だけこんな思いしてるのかと思うと辛くて、私は親友に思わず私の病状(かどうかわからないけれど)を告げてしまいました。親友は慈愛に満ちた表情で慰めてくれました。

しばらくして、私は異変に気付きました。

クラスメイトが、私をずっとみているんです。こっちばっかり見てるんです。目を逸らそうとしても無理で、ずっと見てくるんです。

私はまた例の崩壊が起きるのを感じました。知らない人?貴方も知らない人?本当に〇〇くん?〇〇ちゃん?

そうして訳が分からなくなってしまいました。きっと、親友が誰かに言ってしまったのでしょう。遊びで、からかいで、やってみたのでしょう。でも、一日中ひどく混乱をきたしました。

下校していたら道端で「ねぇ、君」と呼ぶ人がいました。

その人は「私は△だよ。覚えてる?」と言いました。

優しそうなおじさんでしたが、誰かわかりません。

「覚えてないかな?小学校のときから君を知ってるんだけど。君のお母さんと仲がいいから君の家にいってきた帰りなんだよ」と笑いました。私は、まだゲシュタルト崩壊が起きてるものだと思いました。小学校のときなら覚えているはずだからです。

あぁ、ついに思い出すのも困難になったのか…と軽い絶望感に満ちていました。

おじさんは「どうかな、喫茶店でもいかない、久しぶりに」と言いました。

私はなにかしら思い出せるかもしれないと、おじさんの目を見ないまま、ついていきました。

(あれ…)

暗い路地に差し掛かったところで、私は(私がわからなくなるのはずっと人を見続けたとき…)と思いました。

おじさんの目を見てなかったんです。

顔も例の症状がでるほどにはしっかりとは見てなかった。

本当に「知らない人だ」

Concrete
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