バイトも無事終わり時刻は0時を過ぎようとしていた。
ミカはコンビニで買ってきた夕食を食べながら録画しておいたバラエティ番組を見ている。
これで彼氏でもいれば……なんて思ってみたりもするが現実はそんな甘くはない。
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そろそろ寝ようかなんて考えていたら充電してたスマホから電話がかかってきた。
「ねえミカいまヒマ?」
開口一番に友人のアミがそんなことを言ってくる。
「うん。明日バイトも休みだし、もう寝ようかなって。どうしたの?」
「今から出掛けない?ドライブ行こうよ!トシ君が新しく車買ったからみんなで行こうって!家の前にいるから早く!」
カーテンを開けると確かに見慣れない車の中からこっちに手を振ってるアミの姿が確認できました。
「ちょ、ちょっと待って!着替えるから!!」
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あまりにも唐突な誘いではあったけどヒマ潰しには丁度いいと思い誘いに乗ることにした。
車には大学のサークルがアミと一緒の運転席にトシとトシの友人のタカが助手席、アミは後部座席に座っていた。
「君がミカちゃん?アミから話は聞いてるよ、よろしくねー」
「ミカちゃんカワイイね!仲良くしよーぜ」
ミカの二人に対する第一印象は【チャラい】だった。よくアミはこんなのと一緒にいられるなーとか早くも若干の後悔がミカを襲う。
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どれくらい走ったのだろう?
サークルの話や趣味の話で盛り上がっている3人に話を振られればテキトーに返事をするなんて事をしていて今車はどこに向かっているのか聞くのを忘れていた。
「ねぇアミ、そういえば聞いてなかったけど、どこ向かって走ってるの?暗くてわかりにくいけど、今山の中だよね?」
その答えにはアミではなく助手席のタカが答える。
「○○トンネルだよ、アミ言ってなかったの?」
「あ、ごっめ~ん」
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絶対にわざとだ……
アミはミカが怖いのが苦手なのを知っててわざと行き先は言わなかったのだろう。
聞かないで乗り込んだミカにも責任はあるが……
「ちょっと!私怖いのダメだって知ってるでしょ!」
「大丈夫、大丈夫、そこはほら頼もしい男性二人がか弱い私らを守ってくれるから」
前からは調子よく「まかせろ♪」なんて聞こえたがため息しか出ないミカだった。
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そうこうしていると目的の○○トンネルに到着した。
「ちょっと!降りるの!?」
まさか車から降りるとは思ってもいなかったミカ。
しかも男二人の手にはしっかり懐中電灯が握られていて準備も万端だった。
「嫌だったらミカは車に残っててもいいよ、私ら3人で行ってくるから」
行きたくない。すっごく行きたくないが、車に一人残されるのも嫌なので渋々車を降りる。
タカが腕を絡めようとしてきたが不自然に思われないようにそれを避けた。
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トンネルの中はやけに静かで聞こえるのは4人の歩く足音とどこからか水が洩れているのかピチョンと水が落ちる音だけだった。
「心霊スポットとかはじめて来たけどなんか楽しいな!」
無駄にテンションの高いトシは懐中電灯を振り回しながらそんな事を言っている。タカもそれに同意しているのか一緒になって懐中電灯を振り回していた。
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「ねぇ、ミカあんたいつまで私にへばりついてるつもり?」
アミの腕に自身の両腕を絡ませ、及び腰でトンネルを進むミカ。アミからすれば歩き辛くて仕方ないだろう。
「だってさ、きゃああ!」
「な!?なに!??」
前を進んでいたタカ、トシは悲鳴をあげるミカ、アミを懐中電灯で照らす。
「なんなのミカ!」
「だって、今なんか足に当たった……」
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足元を照らしてみると塗装が剥げてしまっているガラケーが落ちていた。
「ガラケー?オレらみたくここに来た奴が落としたんじゃね?」
ガラケーを拾ってミカに渡しながらトシはミカに言う。
「なんで私に渡すの!?」
「もしかしたら持ち主がコレに電話してくるかもしれないだろ?」
確かにそうかも知れないが、正直こんな場所に落ちてるものを拾うのはスゴく抵抗があった。
「いや、でも…………」
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sound:32
ガラケーから着信が鳴る。
ミカはびっくりして思わずガラケーを落としてしまった。
「ほら、ミカ電話出なって!」
「なんで私が」
「ケータイ見つけたのアンタでしょ」
アミにそう言われ渋々ガラケーを耳に当てる。
「もしもし?」
通話ボタンを押して電話に出たが沈黙が流れる。
「持ち主?」
アミは興味津々なのか興奮しながら聞いてきた。
そんなにテンションあがるなら自分が出ればいいのに……
「無言。なんも音しない」
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すぐに通話は切れてしまった。一体なんだったのだろう
「つかよ、これ充電切れしてんじゃね?」
トシはミカからガラケーを受け取りイジってみたが確かに立ち上がる気配がなかった。
「なら充電すれば持ち主、また電話かけてくるでしょ」
タカはトシからガラケーを奪い、ミカに渡した。
「だからなんで私なの!?」
最初に見つけたから。
3人は口を揃えてミカに言うのであった。
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その後、なにもなく帰る事になりミカは家の近くのコンビニで降ろされた。
「ちゃんと、そのガラケーに合う充電器買って充電しなさいよ」
「後で報告よろしくー」
「またねー、ミカちゃーん」
3人は口々にそういうと走り去ってしまった。
「はぁ、こんなんならドライブ行くんじゃなかったなぁ」
憂鬱な気持ちのままミカはコンビニへと入っていく。
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「なんかごめんねー、ミカ誘ったの失敗だったわー」
後部座席でタバコを吹かしながらアミは言った。
ミカを降ろしてからすぐに3人はテンションの低いミカに対して愚痴をこぼしていたのだ。
「ビビってるのは面白かったけどちょっとなー」
「かわいかったけどなー……」
タバコが切れたのか箱を潰してごみ箱へと捨てる。
外を見ながらアミは運転手のトシに聞いた。
「次は私ら3人で行くの?つかさすがにもう遅いから帰りたいんだけど」
ミラー越しにアミを見ながらトシは答える。
「心霊スポットはもう行かないわ。別な楽しいことしようぜ」
「へへへ」
身の危険を感じ逃げ出したくなったが生憎走行中の車から飛び降りる勇気をアミは持っていない。
「ちょっと、冗談はやめてよ!私らそんなんじゃないじゃん!家、帰ろうよ!ねぇ!」
ニヤニヤとイヤらしい笑顔の二人がミラー越しにアミは見てしまったのだった。
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ガラケーを充電器に繋ぎミカはすぐに寝た。
心霊スポットに行き疲れたのかもしれない、明日が休みでよかったと思いながらベットに横になるとすぐに寝付けた。
sound:32
どれくらい寝ただろうかケータイの着信音で目が覚める。
普段使っているスマホの着信音は好きなアーティストの曲で、古いベルの音ではない。
ガラケーの充電が終わったのだろうか、寝ぼけた頭でガラケーの着信を押し、電話に出る。
「はい、もしもし?」
だが声は聞こえない。
少し目が覚めてガラケーを見た。
ガラケーのモニターは黒いまま立ち上がった様子はなかった。
不思議には思ったがなによりも眠たかったのでミカはそのまま眠ってしまった。
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結局ガラケーは壊れていた事がわかり捨てた。
次の日起きてガラケーを見てみたが充電はされていなかった。携帯ショップに持っていったが中がダメになっていてもう起動出来ないと言われた。店員の勧めでそのまま処分してもらう事にした。
それからだろうか、最初は気のせいに思っていたがどうにもあのガラケーの着信音が聞こえてくる。
自分のスマホは変わらず好きな曲のままだし、家に居ても聞こえてくる。
アミに相談しようと大学に行ってもアミは来ていなかった。
アミが所属しているサークルにも顔を出したがトシとタカも大学には来ていないようで探しようがない。
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それから数日が経ったが今だに頭のなかではずっとベルが鳴っている。しかもだんだん音が大きくなって来ていた。
「いつ鳴り止むの……」
最近はバイトも大学も行っていない。なにをしゃべっているのかすら聞こえないのだ。
「どうしたら止まるのよぉ」
頭にクッションを被せても無意味。ヘッドホンをして他の音を流してみても電話のベルしか聞こえない。
「どうやったら電話の音止まるの……!」
ミカは閃いた。
「そうよ、電話だもの、出れば音止まるわよね」
今だ頭のなかで鳴りやまない電話の音。
「もしもし?」
スマホを持ち、とくになにかを押した訳じゃないが形だけでもやってみる。
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音が、止んだ。
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「やった!」
思わずバンザイしてしまう程うれしかった。これでようやく開放される。そう思った。
「……やっと、出てくれたぁあ……」
知らない声が耳に届く。思わずスマホを投げ捨てた。
「……いまから行くね……」
しん、と部屋が静まり返る。
ミカは動けずにいた。すると……
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sound:16
チャイムの音がする。
sound:16
先程のショックが大きくミカはまだ動けない。
sound:16
「もう、いやぁぁぁぁああ」
sound:16
頭のなかでずっとチャイムは鳴り続けた。
作者緑の野菜
初の創作もの書いてみました。