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田中くんがいきなり席を立った。
先生の隣にひょこひょこと歩いて行き、小さい声で『トイレに行ってもいいですか?』と言った。
先生は急いで行って来いと言った。
田中くんはひょこひょこと歩きながらも急いでトイレに向かった。
田中くんが教室から出るときクラスの男子から、
『うんこか?うんこか?』と言われていたが田中くんは顔を赤くしながら、無視して教室を出て行った。
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そんなに恥ずかしがるなら、授業はあと10分程度で終わるのだから我慢すればいいじゃないか。
僕はそう思った。
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授業が終わるチャイムが鳴った。
先生は授業の終わりの挨拶をしたあと、すぐに帰りの会をして解散となった。
田中くんはまだ戻ってきていなかったが、
下痢かな?とみんな思っていたので、特に気にしていなかった。
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僕は佐藤くんと田中くんが教室に戻ってくるのを待った。
いつもこの3人で帰り道を帰っていたからだ。
僕と佐藤くんは田中くんが戻ってくるまでたわいの無い会話をしていたのだが、
1時間たっても戻ってこなかったので僕と佐藤くんはトイレに向かった。
トイレに向かう途中、『田中何やってんだよ、いくらなんでも遅すぎだろ!』と佐藤くんは言った。
僕は、『下痢だからしょうがないんじゃない?』と言って佐藤くんを宥めた。
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この小学校は4階建てで、僕たちは三階の廊下にいた。
まだ三年生になったばかりなので三階のどこにトイレがあるかわからなかったが、
佐藤くんが、トイレの場所なんて階段の近くだろ。
と言った。本当に階段の近くにトイレはあった。
中に入るなり佐藤くんは『田中遅いぞ!』と言ったがトイレは静まり返っていて、トイレには誰もいなかった。
『はぁ?田中いねーのかよ』と佐藤くんは言った。
僕も中を確認したが誰もいなかった。
他の階のトイレも確認したが田中くんはいなかった。
『田中の奴先に帰ったのか?まさかうんこ漏らしてそのままかえったんじゃねーかw』と佐藤くんが言った。
僕も『そうかもねw』と言った。
教室には田中くんのランドセルがロッカーに入っていたが、どこを探してもいなかったので、その日はそのまま佐藤くんと2人で帰ることにした。
明日学校に行った時に、佐藤くんになんで先に帰ったのか聞けばいいと思った。
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次の日、何故か朝から全校朝会があるとのことで体育館に生徒と先生達が集まっていた。
僕は佐藤くんと遅刻ギリギリに学校に着いたため、校門にいた先生に『体育館に行きなさい』と言われランドセルを背負ったまま体育館に向かった。
体育館につき自分のクラスの列に並ぼうと思ったが
体育館はギュウギュウで自分のクラスの列に並べなかった。
仕方なく僕と佐藤くんは体育館の後ろの入り口の横に座って先生達の話が始まるのを待った。
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少しすると、校長が出て来て話し始めた。
話の内容は田中弘樹(たなかひろき)くんが行方不明になっているとのことだった。
田中弘樹とは田中くんのことである。
昨日学校が終わったあと、家に帰っていないらしかった。
『今日は集団下校で帰るように』と校長が言って朝会は終わった。
教室に戻るとクラスのみんなは、田中くんの話題で持ちきりになった。
不審者が出たんだって〜と、みんな言っていた。
そういえば以前も不審者がこの街にいるので今月は集団下校で帰りましょうと校長が言っていたのを思い出した。
しかし1時間目が始まるとみんな気にせず授業に集中していた。
僕と佐藤くんは授業に全然集中できなかった。
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その日は集団下校だったため、次の日に田中くん探しをすることになった。
次の日、授業が終わると佐藤くんと2人ですぐに田中くんを探した。
どこにいるかは大体検討がついていたからだ。
何故ならランドセルがロッカーに入っていたからだ
普通ならランドセルを持って帰らない生徒なんていない。なら『学校にいる』と思ったからだ。
僕と佐藤くんは1階から4階まで全ての部屋に行き田中くんを探したが見つからなかった。
全ての部屋に行っている間にすっかり夕方になっていた。
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5時のチャイムが鳴り校舎から生徒は出るように、とスピーカーから聞こえて来た。
僕達は一度家に帰った後にまた夜に学校に来ることを約束した。
うちに帰るとご飯を食べてすぐに自分の部屋に行き、親が寝静まるのを待った。
12時近くになった時、親が完全に寝たことを確認して、家を出た
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佐藤くんとは先に電話をしていたので、通学路で合流した。
学校に1時に着くとすっかり辺りは暗くなっていた。
校門から入るとSECOMや監視カメラにバレるので、校門から真反対の柵から入ることにした。
学校には案外簡単に入ることができた。何故か窓の鍵が1つだけ掛かってなかったからだ。
僕は不思議に思ったが、佐藤くんは『職員が鍵を掛け忘れたんだろう』と言った。
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学校の中は静かで足音がすごく響いて聞こえた。
僕達は、持ってきた懐中電灯で足元を照らしながら、田中くんを探し始めた。
できるだけ音を立てないように一階の端から部屋に入ろうとしたが、どの部屋も鍵が掛かっていて、入り口から中を確認することしかできなかった。
『入れるのは扉の無いところだけかなぁ?』と佐藤くんは言った。
『扉の無いところ?』と僕が聞くと、佐藤くんは『トイレしかないだろ...』と言った。
そもそも田中くんはトイレに向かってからいなくなったのだから、トイレにいる確率が高いのは確かだった。
けれど夜の学校は普段の何倍も怖く見え、トイレは夜の学校の中でも1番異質な空気を漂わせていた。
僕達は悩んだ挙句...
一階のトイレから僕達はしらべてみることにした。
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トイレに入ると空気はすごく冷たく寒さか怖さかわからない鳥肌がたった。
1つ1つ佐藤くんが個室の扉を開けていき、1番端の
個室を開けた時、
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『うわぁ』と叫んだ。
僕は『どうした!』と言いながら佐藤くんに近づき、トイレの個室を覗くと...
そこには何もなく横にいる佐藤くんは、腹を抱えて笑っていた。
『お前ビビりすぎ』と佐藤くんは言った。
僕はムッとしたが、無視してトイレから出た。
佐藤くんは『ごめんごめん』と笑いながら後ろからついてきた。
二階、三階、四階も同様に調べたが、見た所何もなかった。
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もう諦めようと思ったが、
最後に自分達の教室に何か手がかりがあるのかもしれないと思い、教室に向かった。
しかし先程と変わらず教室にはちゃんと鍵が他の部屋と同様に掛かっていた。
『クソ、どこの場所にも鍵が掛かってやがる』
と佐藤くんは言った。僕はあることを思い出した。
こんなに厳重に鍵を掛けているのにどうして一階の窓だけ鍵を掛き忘れていたのだろうと。
僕は最近、推理物のドラマを見たことを酷く後悔したが、僕はどんどんマイナスな方向に考えを進めていった。
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一階はハシゴや道具を持っていない人でも鍵が開いているだけで誰でも入れる。
そんな場所の鍵を掛け忘れるだろうか?しかも今は田中くんがいなくなっているのだから、鍵は厳重に掛けるはずだ。
僕は急いでこの考えを佐藤くんに伝えた、すると佐藤くんは血の気が引いたような顔をして、
『誰かにここに来ることがバレてたんじゃないか…』と言った。
その途端、僕達は得体のしれないものに見られているような気がした。
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僕達は急いでこの学校から出ようと一階の窓に向かおうとした。
階段にたどり着いた時、どこからともなく、音が聞こえてきた。
僕と佐藤くんは2人とも動きを止め、なんの音なのか、どこから聞こえてくるのかを確かめようと耳をすませた。
音はすごく遠くの方で聞こえていたが、ものすごい速さで、こちらに迫ってきているのはわかった。
このままでは捕まる、
僕達は急いで階段の近くにあるトイレの中に入った。
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2人でトイレの個室に入り、音を出さないようにしゃがみ込んだ。
音がどんどん近づいてくる。
近づいてきてわかったがどうやらその音は足跡のようだった。
カツカツと静かな廊下に音が響いていた。
すると足音は僕達を見失ったのか、トイレの前を通り過ぎて行った。
『今のうちに早く逃げるぞ』と佐藤くんがいい、
僕達は深呼吸してその場から早く立ち去ろうとした。
すると上から何かが落ちてきて頬に付いた。
手で拭い確認すると、赤く粘ついた液体だった。
『ん?なんだこれ』と僕は言いながら佐藤くんに見せた。佐藤くんも『何これ?』と言って上を見た。
上を見ると天井には赤く粘ついた液体が糸を引きながら垂れていた。
さっき見た時こんなものはなかった気がしたのだが?
僕はその時これは『血』なのではないかと思った。
僕達は力を合わせ天井近くまで、トイレの扉に足をかけて登った。
よく見てみると天井には四角い枠のようなものがはめ込まれていた。
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四角い枠は簡単に外れた。
枠の中に顔を入れ辺りを見渡すと、配線がいっぱい詰まっていた。
電気のコードかな?と思い頭を引っ込めようとすると、奥の方にビニール袋があった。
ギリギリ届く場所にビニール袋があったため、引っ張って取ろうとするとビニール袋から何かがゴロゴロと出てきた。
最初はわからなかったが、よく見るとそれが何かわかった。
田中くんがそこにいた。
正確には田中くんだったものだが…
田中くんはバラバラになっていて一部一部が異様に重かった。
僕は急いで頭を引っ込め下に降りて佐藤くんに田中くんがいたことを伝えた。
僕と佐藤くんはほぼ泣いていたが、早くこの場所から逃げなくてはと再び思った。
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僕達は急いで廊下に出て一階に走った。
音なんてもう気にしてられなかった。
すると遠くの方からまたあの時と同じように音が聞こえてきた。
速さはぼくたちの3倍くらい速かった。普通なら追いつかれてしまうが、僕達は階段を飛び降りながら逃げたので、先に一階の窓に着くことができた。
鍵が掛かっていたが、内鍵なので自力で開けて外に転げながら飛び出た。
急いで柵から外の道路に出て、振り返り佐藤くんに手を伸ばした時、音の正体がすぐ近くまで来ていることに気がついた。
10メートルくらい離れていて暗かったがすぐになんなのかわかった。
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それは担任の先生だった。
先生は見たこともないような顔つきで、追って来て僕達を捕まえようとしていたのだ。
そういえば先生は田中くんが戻って来てないのに帰りの会をして、すぐ何処か向かっていった。
あの時と先生は田中くんに何かをしていたのではないのだろうか。
そんなことを考えていると佐藤くんが僕の腕を掴んで『逃げるぞ』と言った。
我に帰った僕は急いで走った。走りながら僕の家に行こうと佐藤くんに言い、佐藤くんも了承した。
家の前に着くと電気が付いていた。
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怒られるなんてもうどうでも良かった。早く家族に会いたかった。
家の扉を開けようとするとお母さんが玄関の前で待っていた。
お母さんは僕と佐藤くんを見るなり近寄って来て抱きしめてくれた。
僕と佐藤くんは一緒に泣いた。
お母さんは優しい口調で『どこに行ってたの?』と聞いた。
僕は学校に行って田中くんを探していたと伝えた。
お母さんは『もうこんな時間に外に出るんじゃないよ、人様に迷惑もかけて』と言った。
僕と佐藤くんは泣きながらうんうんと言った。
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『お父さんが中で待ってるから行くわよ』とお母さんが言った。
お母さんに連れられて玄関に入ろうとした時、
お母さんが振り向き『先生、家まで送っていただきありがとうございました。』と言った。
作者砂吹
初めて考えて投稿しました。変なところがあると思いますが、よろしくお願いいたします。