男は朝もやがかかる生暖かい空気をお腹一杯に吸い込んだ後、
鼻から空気を抜いてその匂いを確かめた。
どことなく懐かしい匂いに昔を感じた。
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「それにしてもいい朝だな」
何気なく独り言をつぶやいたあと、男は仕事に向かう準備をした。
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男の名前は大北進(おおきたすすむ)。
身長は高くはないが、ガタイがよく、明るい性格である。
会社でも仕事はできる方で、人からも好かれていた。
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そんな彼にはたった一つ、
どうしても他人に知られてはならないことがあった。
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それは彼が極度の破壊的衝動の持ち主であり、
それを抑えるために猫を殺していることだ。
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「今日も仕事を終えたら、一発やるか。。。」
彼の脳内は既に仕事を終えた後のことで渦巻いていた。
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彼は仕事の最中に話しかけられることを嫌ったが、
唯一心を許していた女性にはいつでも親切に応対した。
当然と言えば当然だ、彼の恋人なのだから。
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彼女の名前はさやかという。
さやかは大北のためなら何でもするほど、
大北に心酔していた。
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「ねぇ、いつになったら同棲できるの?」
さやかは大北に不満そうな顔で問う。
「今期、俺が昇進したら考えよう、今はまだ止めておこう」
大北は戸惑いながらもなだめる様にさやかに言った。
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(猫殺しの趣味がばれるのはまずい!)
しかし、すぐに大北の中に大きな欲望が押し寄せた。。。
ー亡者①-
作者ジンジン