陶酔~花に愛された男~秋

短編2
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陶酔~花に愛された男~秋

ご無沙汰しております。仕事やイベントが忙しく中々来る事ができませんでした。

怖くないシリーズとなってしまいますがまた花に愛された男シリーズ秋を書きに懲りずにやってきてしまいました。

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残暑が厳しい時期ではあるが彼は庭の手入れのため帽子を被り花や樹の状態を管理していた。

今年は金木犀が特に強く香り、可愛らしい花をつけていた。

「今年はジャムにでもチャレンジするかな...」

金木犀といえば酒にも甘味にも使われる花としても有名ではある。

そろそろ秋雨が降ってきてしまうであろうから今年は早めに摘み取ろうと思っていた矢先、突然の眠気に襲われフラフラと金木犀にもたれ寝入ってしまった。

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「.........おや?」

例の如く彼は花の世界へと誘われてしまった。

しかし甘い香りと木々の間から差し込む木漏れ日でなんとも心地好い。

そっと後ろから顔を覗き込んできた女性。漢服に身を包んだ気位の高そうな女性だ...

「いつまでお座りに為っていて?」

「あっ...すいません...。」

プライドが少し...いや、高い花に呼ばれてしまったとガッカリしたそうだ。

彼は立ち上がると女性に着いて行った。

そこには後宮を思わせるお茶会のセットが並べられたテーブルがあり、強すぎるでもなく、ふんわりとした金木犀の香りに包まれた空間となっていた。

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「わぁ...ぜ、全部金木犀で作られた物じゃないか...」

女性は少し微笑むと、私が全て作ったのだ。と答え誇らしげであった。

桂花陳酒、砂糖漬け、ジャムの乗ったゼリーや花びらの入ったシフォンケーキ、どれも美しく目移りしてしまう。

「それだけではないのよ。」

中華鍋で魚や野菜が蒸され、花びらが散りばめられている。

(なんなんだ...?もてなしてくれようとしてくれて居るだけなのか?ただのグルメさんなのか??)

手料理をこれでもか、と見せられ彼の腹の虫も反応してしまった。

「いやですこと...花より団子ですのね。」

そう言うと彼女は初めて優しい笑顔を見せ、座るようにと促してくれた。

「いつものお礼です。今日もお手入れをしてくださってありがとう...お好きなだけ召し上がって?」

「では、ありがたくいただきます!」

どれも美味であり、くどさもない。

花を大切に育てて本当に良かった...と息が零れたそうだ。

そうしてメインディッシュの清香蒸しを食べようとした時だった。

「もうすぐ私達は散ってしまいます。どうか来年も...」

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「あっ!!!!」

彼はメインを食べる前に目を覚ましてしまった。

しかし悔いはなかった。今年は雨に降られる前に金木犀で友人をもてなそう!そう思えたからである。

「ご馳走様でした。」

金木犀に向かって一礼すると彼はまた庭の手入れに戻って行った。

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