この話は昭和50年の初頭に伝え聞いた話である。
当事者(以下A氏)と言う人物から聞いた話ではあるが…
酒の席での話というのと、余りにも滑稽な内容なので笑い話程度に聞いていた実話(自称)…
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昭和20年6月…
戦局が悪化にむかうなかで一つの極秘任務が総理大臣の勅命で開始された。
任務内容は[鉄鋼永劫兵]の開発である…
この作戦の為に、戦艦大和の開発総額の5倍にもあたる予算が計上され財政的に困難である事からア号資金と呼ばれる現在価格で数十兆にも昇る闇資金も使用された。
首都である東京の近くに全長5キロの地下施設を急ピッチで作成…
中野大佐以下30名の少数精鋭で開発はスタートした。
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開発当初は良質の鋼の開発と古代呪術の解明…
碑民と呼ばれる者や非国民と断定された者などを使っての人体実験を繰り返したらしい…
開発中期…
人体実験が身体に対するものから精神に影響する物に変化した。
A氏いわく、この作戦に従事した者は作戦が中期になる頃には皆…狂っていた…
と、こぼしていたのが印象的だった。
呪術もヒトガタや傀儡、僵戸(キョンシーの正式名?)の研究に重点をおくようになっていった。
開発後期…
ここで、異変が起ったらしい…
外部から空気穴以外の主要な出入口の封鎖が指示され悪化していた戦局を打開する為に研究は続けるようにと矛盾するような指令があった…
これが、1945年7月末の出来事だった。
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ここまでも面白い作り話ではあった。
が、この先は面白い以上に不可解であった…
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1946年3月…
あれから何度となく激しい衝撃があった…
統合本部からの指令も途絶え、食料も含めた物資の補給も途絶えた。
研究は続けるも物資の不足が深刻である為、遅れをみせはじめている…
この辺りから私の記憶も曖昧になっていく。
194○年…
物資不足は深刻となっているが、実験は起動を待つ段階までにこぎつけた…
暦で次の満月に起動をさせる。
これで、神国日本の民は鬼畜米兵を打倒する事も可能であろう!
天皇陛下を始め首相閣下にもお喜びいただける。
19○○…
実験が失敗に終わってから幾日が経過したのか…
大佐を含めた研究員たちとも会っていない。
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先日、封鎖されたはずの研究施設に三人の婦女子が迷い混んできた…
洋装をしている者であったが私の独自の判断で貴賓室に匿う事にする。
3日後…
その者達は、大戦は日本の敗北で終わっているなどと騒いでいる。
恐らく恐怖の余りに錯乱してしまったのであろう。
4日後…
娘達は逃げ出した…
研究の秘密を調査しにきたスパイだったのだ!
気がついた時には遅く、姿形も見えなかった。
腹を切って陛下に詫びようとも考えたが、せめて統合本部に出向き報告をしてから腹を召そうと考えた。
A氏は娘達が潜入したであろう出入口を目指して歩きだした。
…
…
…
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地上にでたA氏に待っていたのは妄想と現実のギャップ…
余りの衝撃に気絶してしまったらしい…
浮浪者として救急搬送され回復後に施設で生活しながら現在を迎えているらしい。
変人扱いされ施設に放り込まれたA氏…
以後は他人に自身の記憶を話す事は無かったらしい…
今日までは…
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私はA氏に疑問をぶつけた。
①地下施設が存在すればA氏の発言も信憑性を増して変人扱いされなかったのでは無いか?
②研究開始当時…34歳だったA氏…
本来なら70歳を以上の年齢はずだが…
見た目は50歳位にしかみえない。
③迷い混んできた女性三人組…
A氏の話を総合するとセーラー服だと思われる。
この三人は何者なのか?
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この疑問に答えぬままA氏は酔いつぶれて寝てしまった。
よた話にしても面白い話…
1人飲みで退屈していた私は満足していた。
女将に私とA氏の代金に色をつけた金額を支払い店を後にした。
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これが、一年前の話…
もちろん、忘れていた話なのだが…
A氏が語ったと思われる場所から旧帝国陸軍の巨大防空壕が発見されたとのニュースが世間を騒がせた。
所々、陥没し原型は保っていないらしいが…
ニュース映像の片隅に映る[鉄鋼○○兵開発○]と書いてある看板が埋もれていたのを見た時…
私はA氏を思い出した…
栄養事情の観点や生活環境の問題…
A氏の語った内容…
ニュースで学者が話ている推論…
全てを統合して考えた時…
どうしても辻褄が合わないのだ…
防空壕の中は1945年以降、時間の流れがおかしくないと説明がつかない…
封鎖された空間…呪術の実験…
想像してもしょうがないのは解っているが…
私はA氏の証言が真実ではないかと思いはじめていた…
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防空壕が発見された2日後…
私の家の近所で70歳以上であろう腐乱死体が発見されたらしい…
作者まー-3
元ネタがトワイでライトなシンドロームの三作目です。
時代背景や他諸々おかしい箇所があっても笑って許してください。
余り調べずに書いて作品なんで…(言い訳です…すいません)