創作話。
これは俺がまだ中学生の時に体験した話なんだけど。
学校から帰ると、玄関に見知らぬ革靴が踵をそろえて並べてあったんだ。
お客さんが来てるのかな~と思いつつも、リビングには行かず、直接自分の部屋に入ったと思う。
暫く自分の時間を過ごしていると、携帯にかぁちゃんから電話が掛かってきて
『おかぁさん今日仕事で遅くなるから、夕飯はUFO(俺の名前)君一人で食べてね』と
背筋がゾクッとした。
うちは、俺が物心つくまえから親父は家を出て行き、母子一人の母子家庭で育てられてきた。
かぁちゃんが仕事でいない今、客が来てるのはおかしい。
俺は部屋にあったバット(野球部だったので)を持って廊下に出た。
その日は土曜日で部活もさぼった。その為、まだ昼過ぎで、電気を付けなくても十分明るい筈だった。
リビングだけが、異様に暗い。
霊感が人一倍強い訳じゃないが、その時は明らかにヤバいと思ったんだ。何かは分からないが、絶対リビングには入ってはいけない気がした。
すると、パチッと音をたてて、リビングの電気がついた。
中からどうやら話が聞こえてくる。
ビビりだった俺は、高鳴る鼓動を抑えながらも、恐る恐るリビングの中を覗いてみたんだ。
息を呑んだ。
其処には極普通の『家庭』が存在していた。
更に、目を疑った。
その家の母親は、俺のかぁちゃんの若い時の姿に良く似ていたからだ。
野球中継を見てる男にも見覚えがあった。写真でしか見たことは無かったが、俺の親父に間違い無い。
とすると、横のベビーベッドで寝かされているのは、恐らくこの俺。
今、俺は14年前の光景を目の当たりにしている。
話してる内容はよく聞こえないが、どうやら夫婦喧嘩をしているようだ。
その喧嘩は段々エスカレートしていき
とうとう母親が親父の胸を包丁で突き刺した。
親父はもがきながら、崩れ落ち、息を引き取る寸前に、この俺と目があった。
俺は余りの恐怖で目を逸らすことも出来なかった。
そして、親父が俺を見て言った。
『これが、真実だぞ。その目に焼き付けろ!』
そうゆうと、その『家庭』は消えて、いつも通りのリビングに戻った。
恐らく親父は俺に真実を伝えたくて、あの光景を見せたのだろう。
でも、かぁさんを恨んだりはしない。
これからも二人で生きてゆくよ。と静かに誓った。
怖い話投稿:ホラーテラー くじらUFOさん
作者怖話