私の祖父が小さい頃の話。
祖父は四国の山奥で高校まで過ごした。祖父がまだ小学生の頃、近隣の友人と一緒によく川で遊んでいた。その川はとても綺麗で深さもちょうど良く、子供たちがよく魚を釣ったり度胸試しに飛び込みをしたりしていた。
しかし、実はその川は大人達から遊ぶことをキツく禁止されている危険な川だったらしい。しかしまだ遊びたい盛りの子供達は近くに手頃な川があるのにも関わらず近づかないなんで事出来るわけもなく、毎日学校帰りにその川へ寄りしばらく遊んでから家に帰るようにしていた。
ある日祖父達がいつものように例の川へ遊びに行った時、川上から人の頭ほどの大きさの箱が流れてきた。漆塗りの綺麗な箱だった。面白がった友人達はその箱を開けようとしたが、鍵がかかっているように箱は固く閉ざされびくともしなかった。
開かない事が分かると彼らは今度はその箱を浮き輪がわりに乗っかったり投げたりして遊び始めた。
しばらくして各々家に帰る支度をしようかと言い始めた頃、遠くから知り合いの男が物凄い剣幕で祖父達に怒鳴りこんで来た。驚いた彼らは咄嗟に川で遊んでいた事を怒られると思い例の箱を手放して一目散に逃げていった。
家に帰った後、例の男が家に訪ねてきた。祖父は両親に言いつけられて怒られると思いビクビクしていたが、その男は祖父を見るなり「大丈夫だったか?」と聞いてきた。なんの話か分からない祖父が黙っていると、その男は話し始めた。
「驚いたよ。俺が通りかかった時、例の川からガキどもの騒ぎ声が聞こえたもんだから叱ってやろうと思って近づいたんだ。そしたらお前さん達ここらで見たこともねぇ男の頭に乗っかって遊んでるんだ。俺は長い間ここに住んでいるが、あんな顔の男初めてみた。しかもその男ずっとお前の方を見ていたんだ。何かされなかった?」
その後祖父は高校を出て上京したが、特に何か起こったことはないという。
作者なゆ