どこかで聞いた話のアレンジです。
私が看護師になって二年目の冬に体験した話です。
その日は夜勤だったので、夜遅く家を出ました。自転車で深夜の住宅街を走っていると、
『おーい!今行くぞー』
と、横峯さんちのおじいちゃんが二階の窓から手を振ってきます。
『横峯さん、今夜は冷えるから、お布団に入ってなさい。』
横峯さんは以前私の通っている病院に入居してたこともあり、今では私がそこを通る度に、こうやって手を振ってくるのです。
その時はまだ、元気でなりよりと微笑ましくおもっていたんですが、その挨拶は徐々ににエスカレートしていきました。
『おーい今行くぞー!行くぞー!行くぞー!』
ある時、ふと、思ったんです。横峯さんはアルツハイマー(痴呆症)ではないかと。
以前胃癌で入院してた時も、時々痴呆の気が見えたのですが、その時は御家族の希望により退院していったんです。
しかし此処まで痴呆が進んでいると、流石に放っておく訳にはいきません。
私は横峯さんの旦那さん(息子さん)に事情を話し、入院を促したのですが、『お構いなく』の一点張りで聞く耳を持ってくれなかったのです。
それからも、夜勤でそこを通る度に、
『おーい!今行くぞ!』 と、相変わらず手を振ってくるのです。
ここまでくると、流石に私も怖くなり、次の日からは違う道を使うようになりました。
それから1ヶ月余りが過ぎた時。
ふと、横峯さんの事が心配になり、その日はあの道を通る事にしたんです。
横峯さんはやはり、私をずっと待っていたらしく、私を見つけるなり、窓から身を乗り出しました。
『ははは!今行くぞー!わはははははは!!!!』
と言った後、二階の窓からダイブしたのです。
その後、直ぐに救急車で運ばれましたが、首の骨が折れていて、病院に着いた頃には亡くなっていました。
今になって時々思うときがあります。横峯さんは、昔亡くなった奥さんと、私を重ね合わせていたのでしょうか?
『おーい!今から天国に行くぞー!!!』 と。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話